墓地の開発 ── まず、誰が経営できるか
- まず誰が経営できるか。営利企業は原則として認められない
- 基準は条例で定められる。市町村ごとに違う
- 距離制限、面積、駐車場。条例の要件が計画を決める
- 近隣の同意を求める運用があり、ここで止まることが多い
「山林を持っているので、霊園にしたい」──この相談に、最初に確かめることがあります。
誰が経営するのか。土地があっても、経営できる主体でなければ許可は下りません。
この記事では、その前提と、条例による違いを整理します。
経営主体の制限
墓地の経営には、都道府県知事等の許可が必要です。
その許可を受けられる主体は、運用上、限られています。
| 主体 | 扱い |
|---|---|
| 地方公共団体 | 原則 |
| 宗教法人 | 認められる場合が多い |
| 公益法人 | 同上 |
| 営利企業 | 原則として認められない |
| 個人 | 原則として認められない |
永続性と非営利性が求められるためです。
墓地は、数十年、数百年にわたって維持されることが前提です。経営が破綻すれば、遺骨の行き場がなくなります。
この考え方は、国の通知と、各自治体の条例・要綱で示されています。
具体的な取扱いは自治体によって異なります。計画の前に、必ず所管の窓口で確認してください。
名義貸しは認められない
営利企業が実質的に運営し、宗教法人の名義だけを借りるという形があります。
- 許可が取り消されうる
- 経営が行き詰まったとき、責任の所在が不明になる
- 購入者が保護されない
- 自治体が実態を審査するようになっている
相談を受けた段階で、この形を勧めないでください。
条例で決まる
墓地の設置に関する基準は、都道府県または市町村の条例で定められます。
| 条例で定められる主なもの | |
|---|---|
| 距離制限 | 住宅、学校、病院、水源からの距離 |
| 面積 | 最低面積、緑地の割合 |
| 構造 | 囲障、擁壁、排水施設 |
| 通路・駐車場 | 幅員、台数 |
| 管理施設 | 管理事務所、休憩所、便所、給水 |
| 近隣への説明 | 説明会、同意書 |
市町村が変われば、要件が変わります。
他の地域の事例をそのまま当てはめないでください。
まず、その土地を所管する自治体の条例を入手することから始まります。
距離制限が、候補地を絞る
住宅等からの距離要件は、実務上いちばん厳しい条件になることがあります。
- 周囲に住宅が点在していれば、要件を満たす区画が残らない
- 将来、周囲に住宅が建つ可能性
- 水源、河川からの距離
- 距離の測り方(敷地境界からか、墳墓からか)
図面上で候補地に円を描いてみると、成り立たないことが分かる場合があります。
他の法令との関係
| 法令 | 関わる点 |
|---|---|
| 都市計画法 | 市街化調整区域なら開発許可 |
| 農地法 | 農地なら転用の許可 |
| 森林法 | 林地開発の許可 |
| 砂防法・地すべり等防止法 | 区域内なら許可 |
| 盛土規制法 | 造成に伴う許可 |
| 建築基準法 | 管理棟等を建てる場合 |
| 道路法 | 接道、乗入れ |
候補地は、山林や農地であることが多くあります。
その場合、転用や開発の許可が別に必要です。
そして、これらの許可にはそれぞれ独立した要件があります。
- 農地なら、第1種農地は原則不許可
- 農用地区域内なら、まず農振除外
- 市街化調整区域では、開発許可の基準に適合するか
- 森林なら、林地開発の要件
墓地の条例上は問題なくても、他の許可で止まることがあります。
関係する部局をすべて洗い出し、早い段階でそれぞれに相談してください。
近隣との関係
多くの自治体が、近隣住民への説明を条例や要綱で求めています。
| 求められること | |
|---|---|
| 事前の周知 | 看板の設置、戸別の説明 |
| 説明会 | 開催と、記録の提出 |
| 同意書 | 一定範囲の住民の同意を求める場合がある |
| 協議の記録 | 意見と、それへの対応 |
同意を要件とする運用については、その適法性が議論されています。
ただし実務上は、近隣の理解が得られなければ手続きが進まないのが現実です。
反対の理由は、次のようなものです。
- 心理的な抵抗
- 交通量の増加 彼岸、盆に集中する
- 路上駐車
- 景観の変化
- 水源への不安
- 土地の価格への影響
「気持ちの問題」として扱わないでください。交通と駐車は実際に起きる負担です。
説明の設計
- 早い段階から始める 計画が固まってからでは遅い
- 決まっていることと未定のことを分けて示す
- 交通処理と駐車場の計画を具体的に
- 排水と水源への影響を、根拠を示して説明する
- 苦情の連絡先を明示する
- 意見をどう扱ったか返す
手続きの流れ
| すること | |
|---|---|
| 一 | 経営主体を確定する |
| 二 | 所管自治体の条例・要綱を入手する |
| 三 | 候補地が距離要件を満たすか確認する |
| 四 | 他の法令の許可の見通しを確認する |
| 五 | 事前協議 |
| 六 | 近隣への説明 |
| 七 | 経営許可の申請 |
| 八 | 工事、完成の届出・検査 |
年単位の時間がかかります。
用地の契約を先に済ませてしまうと、決済期限に間に合いません。
許可の取得を停止条件とし、期限に余裕を持たせてください。
不動産業者の立場
霊園の区画は、土地の売買ではありません。
購入者が得るのは永代使用権で、所有権ではありません。
| 内容 | |
|---|---|
| 性質 | 使用する権利。所有権ではない |
| 登記 | されない |
| 転売 | 原則としてできない |
| 返還 | 使用料は原則として戻らない |
| 管理料 | 毎年かかる |
宅地建物取引業の対象となる取引ではありません。
墓地の区画の販売を、不動産業者が仲介する形は取れません。
関われるのは、用地の取得と、許認可の支援までです。
周辺の土地を扱うとき
墓地に隣接する土地の売買では、その事実を伝えてください。
- 現況で見えなくても、隣が墓地であること
- 計画中の墓地がある場合、その状況
- 彼岸・盆の交通
- 買主が気にする事情を示していれば、より丁寧に
見れば分かることでも、告げなかったことが問題になります。
- 経営主体が許可を受けられる主体か確認した
- 名義貸しの形になっていない
- 所管自治体の条例・要綱を入手した
- 距離制限を、図面上で確認した
- 面積・構造・駐車場の要件を確認した
- (農地)農振除外と転用の見通しを確認した
- (調整区域)開発許可の基準を確認した
- (森林)林地開発の要件を確認した
- 災害関係の区域指定を確認した
- 近隣への説明の要件を確認した
- 交通処理と駐車場の計画を具体化した
- (契約)許可の取得を停止条件とした
- 期限に余裕を持たせた
- (隣接地の売買)墓地の存在を伝えた
まとめ
- 経営主体が最初の関門。営利企業は原則として認められない。
- 基準は条例。市町村ごとに違う。他地域の事例は当てにならない。
- 距離制限で候補地が絞られる。図面に円を描いて確かめる。
- 墓地の許可だけでは足りない。農地・森林・調整区域の許可が別に要る。
- 区画は永代使用権で、土地の売買ではない。宅建業の対象外。
行政書士 村上事務所では、条例の確認から関係機関との協議、許可申請までお引き受けしています。土地家屋調査士として測量・登記まで一貫して対応できます。
成り立つかどうかの見立てから、お伝えします。