レバレッジと信用力 ── 借りられる額は、何で決まるか
- 借入が効くのは物件の利回りが借入金利を上回っている間だけ
- 金利が利回りと同じになれば効果はゼロ。超えれば逆に働く
- 元金の返済は利回りの計算に入っていない。実際の手残りはもっと小さい
- 借入は損失も同じだけ拡大する。売っても残債が残ることがある
自己資金1,000万円で4,000万円の物件を買う。借入を使えば、自己資金の何倍もの資産を持てます。
これは、うまくいけば自己資金に対する利回りを高めます。ただし、条件があります。その条件が崩れると、借りていること自体が損失を生みます。
この記事では、どういう条件で効き、どこから逆に働くのかを数字で確かめます。
効く仕組み
次の条件で考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 4,000万円 |
| 年間の純収益(NOI) | 200万円(利回り5%) |
| 自己資金 | 1,000万円 |
| 借入 | 3,000万円(金利2%) |
| 借りない場合 (1,000万円の物件) |
借りる場合 (4,000万円の物件) |
|
|---|---|---|
| 純収益 | 50万円 | 200万円 |
| 支払利息 | 0円 | △60万円 |
| 残る額 | 50万円 | 140万円 |
| 自己資金1,000万円に対して | 5% | 14% |
同じ1,000万円で、5%が14%になりました。
なぜこうなるか
物件が生む利回り(5%)が、借入の金利(2%)を上回っているからです。
3,000万円を2%で借りて、5%で運用している。その差の3%分が、自己資金の取り分に上乗せされます。
この差をイールドギャップと呼びます。
どこから逆に働くか
金利だけを動かしてみます。
| 金利 | 支払利息 | 残る額 | 自己資金に対して |
|---|---|---|---|
| 2% | 60万円 | 140万円 | 14% |
| 5% | 150万円 | 50万円 | 5% |
| 6% | 180万円 | 20万円 | 2% |
金利5%のとき、自己資金に対する利回りも5%です。これは、借りずに1,000万円の物件を買った場合と同じです。
3,000万円の借入というリスクを取りながら、得られる利回りは借りない場合と変わりません。
そして金利6%では2%まで下がります。借りたことで、かえって利回りが下がっています。これが逆レバレッジです。
金利以外でも起こる
金利が変わらなくても、物件の利回りが下がれば同じことが起こります。
- 空室が増える
- 賃料を下げる
- 修繕費がかさむ
- 管理費や税負担が上がる
イールドギャップは、金利が上がっても、利回りが下がっても縮みます。両方が同時に起これば、より速く縮みます。
元金の返済が、計算に入っていない
ここまでの計算では、支払利息だけを引いていました。しかし実際には、元金も返済します。
3,000万円を30年、金利2%で借りた場合、年間の返済額は約134万円です。うち初年度の利息が約60万円、元金が約74万円。
| 計算 | 自己資金に対して | |
|---|---|---|
| 利息だけ引く | 200万 − 60万 = 140万円 | 14% |
| 返済全額を引く | 200万 − 134万 = 66万円 | 6.6% |
14%と6.6%では、まったく印象が違います。
元金の返済は借入残高を減らすので、消えてなくなるわけではありません。ただし、手元の現金としては出ていきます。生活や次の投資に使えるお金は、6.6%のほうです。
さらに、税金が引かれる
ここから所得税・住民税が引かれます。そして、元金の返済は経費になりません。
手元のお金は減っているのに、帳簿上は利益が出ているという状態が起こります。返済が進み、利息の割合が減るほど、この差は広がります。
下がる局面では、同じだけ拡大する
借入は利回りを高める仕組みではなく、結果を拡大する仕組みです。上がるときも、下がるときも同じように働きます。
| 物件価格が2割下がったとき | 借りない場合 | 借りる場合 |
|---|---|---|
| 物件価格 | 1,000万 → 800万 | 4,000万 → 3,200万 |
| 借入残高 | 0円 | 約3,000万円 |
| 売った場合の手残り | 800万円 | 約200万円 |
| 自己資金1,000万円に対して | △200万円 | △800万円 |
同じ2割の下落でも、自己資金の減り方が4倍違います。
売却価格が借入残高を下回れば、差額を用意しなければ売れません。
物件は手放したのに、借入だけが残る状態もありえます。借入の割合が高いほど、この状態になる可能性が上がります。
返済が進めば残高は減りますが、建物の価値も同時に下がります。どちらが速いかは、物件と地域によります。
どれくらい借りるか
物件価格に対する借入の割合をLTVと呼びます。
| 借入の割合 | 効果 | 耐えられる幅 |
|---|---|---|
| 低い | 利回りの上乗せは小さい | 広い |
| 高い | 上乗せは大きい | 狭い |
正解の比率はありません。決めるのは、どこまでの悪化に耐えられるかです。
自己資金は「クッション」でもある
自己資金を全額投じてしまうと、修繕や空室が重なったときに対応できません。
物件に入れる分と、手元に残す分を分けてください。手元に残す額は、収支計画の表から逆算できます。
確かめる順序
| すること | |
|---|---|
| 一 | 物件の純収益から、利回りを出す満室想定にしない |
| 二 | 借入金利との差(イールドギャップ)を出す |
| 三 | 金利が何%になると差がゼロになるかを計算する |
| 四 | 稼働率が何%に下がると差がゼロになるかを計算する |
| 五 | 元金返済まで引いた手残りを出す |
| 六 | 価格が下落した場合の残債との関係を見る |
三番目と四番目が、この投資の限界点です。その水準が現実に起こりうるかを考えてください。
地面の条件は、ここにも効く
| 条件 | 効いてくること |
|---|---|
| 再建築できない | 担保評価が付きにくい。借入の条件が悪くなる |
| 市街化調整区域 | 同上。売却時の価格も下がる |
| 境界が未確定 | 担保評価や融資の手続きに影響することがある |
| 擁壁に問題がある | 担保評価に反映されることがある |
| 建物が違法・既存不適格 | 融資が難しくなる |
借入の条件は、物件の条件によって変わります。そして条件の悪い物件は、売却価格も低くなります。借入の割合が高い場合、この組み合わせが効いてきます。
金利タイプについて
固定と変動があります。どちらが有利かは、その時点の金利水準と今後の動きによります。
| 固定 | 変動 | |
|---|---|---|
| 当初の金利 | 高めが一般的 | 低めが一般的 |
| 金利が上がったとき | 影響を受けない | 返済額が増える |
| 計画の立てやすさ | 立てやすい | 変動する |
変動を選ぶ場合、上がった場合でも成り立つかを必ず計算してください。「上がらないだろう」は前提にできません。
金利タイプの選択と融資の条件については、金融機関に直接相談してください。
- 物件の純収益から利回りを出した満室想定にしない
- イールドギャップを計算した利回り − 借入金利
- 金利が何%でギャップがゼロになるか計算した
- 稼働率が何%でギャップがゼロになるか計算した
- その水準が現実に起こりうるか考えた
- 元金返済まで引いた手残りを出した
- 税金を考慮した元金返済は経費にならない
- 価格が下落した場合の残債との関係を見た
- 売却価格が残債を下回る可能性を確認した
- 自己資金を全額投じていない手元に残す分を確保
- 手元に残す額を収支計画から逆算した
- (変動金利)上がった場合で再計算した
- 物件の条件が借入条件に影響しないか確認した
まとめ
- 借入が効くのは、物件の利回りが借入金利を上回っている間だけ。
- 金利が利回りと同じになれば効果はゼロ。超えれば逆に働く。
- 元金の返済は利回り計算に入っていない。実際の手残りは半分以下になることもある。
- 借入は結果を拡大する仕組み。下落局面では損失も同じだけ拡大する。
- 正解の比率はない。決めるのは、どこまでの悪化に耐えられるか。
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