地域未来投資促進法と農地転用 ── 使える条件を先に確かめる

この記事の要点
  • 正しくは地域未来投資促進法。「未来投資促進法」という法律はない
  • 農地転用が不要になるわけではない。許可制度は残る
  • 効くのは市町村が区域を定めている場合に限られる
  • 計画の策定から承認まで、相応の時間がかかる

工場や物流施設を建てたいが、候補地が農地しかない。

とくに第1種農地は、原則として転用が認められません。そこで、例外の道を探すことになります。

その一つが、地域未来投資促進法による仕組みです。

まず、名称を正す

「未来投資促進法」という法律はない
正式名称 地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律
通称 地域未来投資促進法
施行 平成29年(2017年)
前身 企業立地促進法を改正したもの

行政に照会する際は、正確な名称を使ってください。

似た名称の政策文書が複数あるため、伝わらないことがあります。

仕組みの順序

三つの段階を経る
誰が 何を
市町村・都道府県 基本計画を策定し、国の同意を得る
市町村 土地利用調整計画を作成し、知事の同意を得る
事業者 地域経済牽引事業計画を作成し、知事の承認を受ける

事業者が動けるのは、三段階目からです。

一段階目と二段階目は、行政の側で整っている必要があります。

その市町村が基本計画を持っていなければ、この仕組みは使えません。

最初に確認すること

  • その市町村に、同意を得た基本計画があるか
  • 基本計画に土地利用調整区域が定められているか
  • 候補地が、その区域に含まれるか
  • 重点的に支援する分野に、自社の事業が当てはまるか

ここで外れれば、他の道を探すことになります。

市町村の産業振興を担当する部署に、早い段階で照会してください。

農地転用は不要にならない

最も誤解されやすい点

「この法律を使えば農地転用ができる」という説明を見かけます。

正確ではありません。

実際
農地法の許可 必要。なくなるわけではない
この法律の効果 許可の判断にあたり、配慮される
農振除外 農用地区域内なら、別途の手続きが要る

原則として転用が認められない農地について、認められうる道が開かれる。そういう性質のものです。

「申請すれば通る」ではありません。

土地利用調整計画の作成過程で、農林水産部局との調整が行われます。そこで折り合わなければ、区域に含められません。

農地の区分

区分 転用の扱い
農用地区域内農地 原則不許可。除外の手続きが要る
甲種農地 原則不許可
第1種農地 原則不許可。例外あり
第2種農地 他に代替地がなければ許可されうる
第3種農地 原則許可

この仕組みが意味を持つのは、主に第1種農地や農用地区域内農地の場合です。

第3種農地であれば、通常の手続きで転用できます。わざわざこの制度に乗せる必要はありません。

候補地がどの区分かを、先に確かめてください。

事業計画に求められるもの

承認を受けるには、その事業が地域の経済を牽引すると認められる必要があります。

示すこと 内容
地域への波及 域内の他の事業者への効果
付加価値 創出される付加価値額の見込み
地域の特性の活用 その地域の資源・人材・技術を使うこと
実現の見通し 資金、体制、工程
「雇用が生まれる」だけでは弱い

審査されるのは、その地域の経済にどう効くかです。

具体的に示せると強くなります。

  • 地元企業からの調達 原材料、部品、サービス
  • 地域の農産物・資源を使う
  • 地元の雇用と、その職種・人数
  • 地域の事業者との連携の具体的な内容
  • 技術やノウハウの移転

抽象的な将来像ではなく、取引先や数量まで書けるかどうかで差が出ます。

支援の内容

分野 内容
税制 設備投資に関する特別償却または税額控除
金融 融資、債務保証などの支援
規制の特例 農地転用、市街化調整区域の開発などへの配慮
予算 関連する補助事業
情報・人材 専門家の派遣など

要件と内容は改正されます。

最新の内容は、経済産業省および都道府県の資料で確認してください。税制の適用については、税理士にご相談ください。

時間の見積り

思ったより長くかかる

関わる主体が多く、それぞれに手続きがあります。

段階 関わる先
事前相談 市町村の産業振興部局
土地利用の調整 農政部局、都市計画部局
計画の作成 事業者、市町村
承認 都道府県知事
農地転用の許可 農業委員会、都道府県
開発許可等 都市計画部局

土地利用調整計画がまだない場合、その作成から始まります。

市町村の予定と、議会や審議会の日程に左右されます。

事業の開始時期から逆算して、余裕をもって着手してください。

用地の売買契約を先に結んでしまうと、手続きが整わないうちに決済期限が来ます。

契約の設計

  • 許可・承認を停止条件とする
  • 期限を、手続きの見込みに合わせて設定する
  • 不成立の場合の手付の扱いを定める
  • 延長の可否と手続きを決めておく

他の道と比べる

方法 向いている場面
地域未来投資促進法 地域経済への波及を示せる事業
通常の農地転用 第2種・第3種農地
農振除外+転用 農用地区域内。時間はかかる
工業団地等 既に転用済みの用地
他の候補地を探す 手続きの負担が見合わない場合

制度を使うこと自体が目的にならないよう、注意してください。

転用済みの用地を取得したほうが、総額でも期間でも有利な場合があります。

相談の順序

  1. 市町村の産業振興部局 基本計画と区域の有無
  2. 市町村の農政部局 候補地の農地区分
  3. 農業委員会 転用の見通し
  4. 都市計画部局 開発許可の要否
  5. 都道府県 事業計画の承認の要件

一か所で聞いて終わりにしないでください。

それぞれ所管が違い、他の部局の判断までは答えられません。

地域未来投資促進法に関する確認
  • 正確な法令名で照会した
  • その市町村に同意を得た基本計画があるか確認した
  • 土地利用調整区域が定められているか確認した
  • 候補地がその区域に含まれるか確認した
  • 重点支援分野に自社の事業が当たるか確認した
  • 候補地の農地区分を確認した
  • 農用地区域内なら、除外の手続きを確認した
  • 農地転用の許可が別途必要であることを理解した
  • 地域への波及効果を、具体的に示せるか整理した
  • 関わる部局をすべて回った
  • 手続きの期間を工程に織り込んだ
  • 用地の契約に、許可・承認を停止条件として付した
  • 他の候補地・他の方法と比較した

まとめ

  • 正しくは地域未来投資促進法。正確な名称で照会する。
  • 農地転用が不要になるわけではない。許可の判断に配慮されるという性質。
  • 市町村に基本計画と土地利用調整区域がなければ使えない。
  • 第3種農地なら通常の手続きで足りる。この制度に乗せる意味は薄い。
  • 手続きに時間がかかる。用地の契約は停止条件を付ける。
農地の手続きについて、ご相談ください。

行政書士村上事務所では、農地法の許可申請と農振除外の申出、関係機関との協議をお引き受けしています。土地家屋調査士として測量・登記まで一貫して対応できます。
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