都市計画施設の区域内の建築制限 ── 計画決定だけで、制限はかかる

この記事の要点
  • 計画決定されただけで、建築の制限はかかる。事業が始まっていなくても
  • 許可されるのは容易に移転・除却できる建築物。階数と構造に基準がある
  • 制限が数十年続く土地がある。これが法的な論点になってきた
  • 現地に道路がなくても、都市計画図には線が引かれていることがある

都市計画道路や都市計画公園として決定された区域には、建築の制限がかかります。

問題は、決定されてから事業が始まるまでに、長い時間がかかることがある点です。数十年にわたって制限が続いている土地が、各地にあります。

この記事では、制限の内容と、調査での確認の仕方を整理します。

計画決定と事業決定は違う

二つの段階がある
計画決定 事業決定(事業認可等)
内容 都市計画として区域を定める 具体的な事業として実施する
時期 先 後。何十年も後になることがある
建築の制限 かかる(比較的緩やか) かかる(厳しい)
用地の取得 まだ行われない 買収が進む

計画決定の段階では、まだ用地の買収は行われません。

しかし、その区域内では建築が制限されます。将来の事業を円滑に進めるためです。

大きな建物を建てられてしまうと、後で買収するときの費用と交渉の負担が大きくなる。それを防ぐ趣旨です。

現地には、何もないことがある

道路がなくても、線は引かれている

都市計画道路として決定されていても、現地には既存の道路も、工事の形跡も何もないことがあります。

住宅が建ち並び、生活が続いている場所に、都市計画図の上だけで線が引かれている。

この状態は珍しくありません。次のような事情によります。

  • 高度成長期に、広く計画決定された
  • 財政上の制約で、事業に着手できていない
  • 人口の見通しが変わり、必要性が薄れた
  • 優先順位が低く、後回しになっている

現地を見ただけでは分かりません。必ず都市計画図で確認してください。

何が制限されるか

都市計画施設の区域内、および市街地開発事業の施行区域内で建築物を建築しようとする場合、許可が必要です。

対象となる区域 例
都市計画施設の区域 都市計画道路、都市計画公園、都市計画下水道など
市街地開発事業の施行区域 土地区画整理事業、市街地再開発事業など

「建てられない」のではなく、「許可を受ければ建てられる」という構造です。

許可の基準

容易に移転・除却できるもの

許可の基準は、将来、事業が始まったときに支障が少ないことという観点で定められています。

基準 内容
階数 2階以下で、地階を有しないこと
構造 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造など
移転・除却 容易に移転し、または除却することができること

地階を掘る、鉄筋コンクリート造にする、3階建てにする。いずれも認められないのが原則です。

基準に適合していれば、許可権者は許可をしなければならないとされています。裁量で拒否できるものではありません。

ただし、事業の円滑な施行を妨げない範囲で、条件を付すことができるとされています。

緩和される場合

一定の要件を満たす場合、階数や構造の基準が緩和される運用があります。

  • 当分の間、事業の施行が見込まれない区間であること
  • 建築物が移転・除却しやすい構造であること
  • 敷地のうち、区域にかかる部分の割合が小さいこと
  • 区域外に十分な敷地があり、そちらに建てられること
緩和の運用は、自治体ごとに異なる

緩和の基準は、都道府県または市町村が定める運用基準によります。

「他の市では3階建てが認められた」という話は、参考になりません。

また、同じ自治体内でも、路線ごとに扱いが違うことがあります。事業の見込みが近い区間と、当面ない区間では判断が変わります。

計画の初期段階で、その路線・その区間について、窓口で直接確認してください。

長期にわたる制限という問題

受忍すべき範囲を超えないか

建築の制限は、財産権に対する公権力による制限です。

憲法は、私有財産を公共のために用いる場合には正当な補償を要するとしています。

では、都市計画による建築の制限に補償は必要か。この点について、争われてきました。

考え方 内容
原則 公共の利益のための一般的な制限は、受忍すべき範囲内とされる
例外 特別の犠牲にあたる場合には、補償の問題が生じうる

最高裁は、都市計画法に基づく建築制限について、受忍すべき範囲を超えるものではないとして、補償を認めない判断を示しています。

ただし、制限が数十年という長期に及ぶ場合について、なお検討を要するという趣旨の指摘が、補足意見の形でなされたことが知られています。

個別の裁判例の内容や射程については、弁護士にご確認ください。

長期未着手への対応

計画決定から長期間、事業に着手されていない路線について、見直しを行う自治体が増えています。

見直しの結果 内容
存続 必要性が確認され、計画を維持する
変更 幅員の縮小、線形の変更
廃止 計画を廃止し、制限がなくなる

見直しの検討状況は、その土地の将来に直接影響します。

都市計画マスタープランや、道路網の見直しに関する資料で確認できる場合があります。

調査でどう確認するか

すること
一 都市計画図で、区域にかかっているか確認する
二 かかっている場合、敷地のどの範囲かを確認する
三 計画決定の時期を確認する
四 事業決定(事業認可)の有無を確認する
五 事業の予定時期を確認する
六 許可の基準と、緩和の運用を確認する
七 見直しの検討対象になっていないか確認する

かかり方で、影響が変わる

敷地の一部か、全部か
状況 影響
敷地の全部がかかる 制限に従った建築しかできない
敷地の一部がかかる 区域外の部分に、通常の建築ができる場合がある
わずかにかかる 建築の計画次第で、影響を小さくできることがある

「都市計画道路にかかっている」というだけでは、判断できません。

どこに、どれだけかかっているか。残りの部分で何が建てられるか。ここまで確認して、初めて評価できます。

都市計画図の縮尺では、境界線の位置が正確に読み取れないことがあります。窓口で、より詳細な図面を確認してください。

取引でどう扱うか

重要事項説明

都市計画施設の区域内であることは、法令に基づく制限として説明すべき事項です。

説明すべき内容です。

  • 都市計画施設の種類と名称
  • 敷地のかかり方
  • 建築の制限の内容
  • 事業の進捗状況
  • 将来、買収の対象となりうること

価格への影響

評価が下がる要因になる

建築の自由度が制限されるため、同じ条件の土地に比べて評価が低くなるのが通常です。

  • 建てられる規模が限られる
  • 買い手が限られる
  • 金融機関の担保評価に影響することがある
  • 将来の買収の時期と価格が読めない

一方、事業が実施されれば、その部分は買収され、補償を受けることになります。

補償の内容と時期は、事業の進捗によります。「いつ、いくらで買収されるか」を確約することはできません。

買主に対しては、この不確実性を含めて説明してください。

都市計画施設の種類

制限がかかるのは道路だけではありません。

種類 例
交通施設 道路、駐車場、鉄道、駅前広場
公共空地 公園、緑地、広場、墓園
供給・処理施設 上下水道、汚物処理場、ごみ焼却場
水路 河川、運河
教育文化施設 学校、図書館
医療・社会福祉施設 病院、保育所

公園や下水道の計画決定がされたまま、未整備で残っている区域もあります。

道路だけを確認して終わりにしないでください。

路線の表記

都市計画道路には、種別・規模・一連番号を組み合わせた名称が付けられています。

「◯・◯・◯号 ◯◯線」といった形で、中黒で区切って表記されるのが一般的です。

要素 示すもの
一つ目 種別(自動車専用道路、幹線街路、区画街路など)
二つ目 規模(代表的な幅員による区分)
三つ目 一連番号

窓口で照会する際は、この名称で特定すると話が早く進みます。

都市計画施設に関する確認
  • 都市計画図で区域にかかっているか確認した
  • 道路以外の施設も確認した公園・下水道・広場など
  • 敷地のどの範囲にかかるか、詳細な図面で確認した
  • 計画決定の時期を確認した
  • 事業決定の有無と、予定時期を確認した
  • 許可の基準を確認した階数・構造・移転除却の容易性
  • 緩和の運用を、その路線について確認した
  • 見直しの検討対象になっていないか確認した
  • 区域外の部分で何が建てられるか確認した
  • 重要事項説明の内容を整理した
  • 買収の時期・価格を確約していない

まとめ

  • 計画決定されただけで建築の制限はかかる。事業決定は、その後の段階。
  • 現地に何もなくても、都市計画図には線が引かれていることがある。
  • 許可されるのは、容易に移転・除却できる建築物。階数と構造に基準がある。
  • 緩和の運用は自治体ごと、路線ごとに異なる。窓口で確認する。
  • 敷地のどこに、どれだけかかるかで影響が変わる。詳細な図面で確認する。
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