立地適正化計画 ── 誘導区域の外で、何が起きるか

この記事の要点
  • 実務に直接効くのは立地適正化計画。二つの誘導区域と誘導施設で構成される
  • 誘導区域の外では、届出が必要になる。着手の30日前までに市町村長へ
  • 届出を受けた市町村長は勧告できる。従わない場合に公表する仕組みを設けている自治体もある
  • 居住誘導区域には災害レッドゾーンを含めないのが原則。区域の内外は防災情報でもある

「コンパクトシティ」という言葉は理念として語られがちですが、実務者にとっては具体的な手続きの問題です。

市町村が立地適正化計画を定めている区域では、誘導区域の外で一定規模以上の住宅開発を行う際に、市町村長への届出が必要になります。知らずに進めると、着手の直前で止まります。

この記事では、立地適正化計画の仕組みと、実務でどこを確認するかを扱います。

なぜこの制度があるのか

人口が減っても、市街地の面積は自然には縮みません。人口密度が下がった市街地に、同じだけの道路・上下水道・除雪・ごみ収集を維持し続けることになります。

一人当たりの行政コストは上がり続け、やがて維持できなくなる。そのため、居住と都市機能を一定のエリアに緩やかに誘導し、時間をかけて密度を保つという考え方が採られました。

「集約」ではなく「誘導」

制度の建て付けは誘導です。区域外に住むことを禁じるものではなく、立ち退きを求めるものでもありません。

区域外での一定の開発・建築に届出を求め、勧告できるようにする。これが法的な効果のほぼすべてです。強制力は限定的で、20年程度の長い時間をかけて緩やかに誘導する制度設計になっています。

二つの誘導区域

立地適正化計画は、都市再生特別措置法に基づき市町村が作成します。

区域 目的 誘導するもの
居住誘導区域 人口密度を維持し、生活サービスやコミュニティを持続的に確保する 居住
都市機能誘導区域 医療・福祉・商業等の都市機能を中心拠点や生活拠点に集約する 誘導施設

都市機能誘導区域は、居住誘導区域の内側に設定されます。中心部に都市機能を、その周りに居住を、という入れ子の構造です。

誘導施設

都市機能誘導区域ごとに、誘導すべき施設が具体的に定められます。病院、診療所、社会福祉施設、子育て支援施設、商業施設、行政窓口など。

何が誘導施設に指定されているかは、市町村の計画によって違います。スーパーマーケットが指定されている市もあれば、指定されていない市もあります。必ず計画書で確認してください。

届出義務 ── ここが実務の中心

誘導区域の外では、着手の30日前までに届出

居住誘導区域外で、次のような行為を行う場合、着手の30日前までに市町村長へ届け出なければなりません。

  • 3戸以上の住宅の建築を目的とする開発行為
  • 1戸または2戸の住宅の建築を目的とする一定規模以上の開発行為
  • 3戸以上の住宅の新築
  • 建築物を3戸以上の住宅に改築、または用途を変更する行為

都市機能誘導区域外で誘導施設を建てる場合も、同様に届出が必要です。

さらに、都市機能誘導区域「内」で誘導施設を休止・廃止する場合も、30日前までの届出が求められます。誘導した施設が抜けていくのを把握するためです。

勧告

届出を受けた市町村長は、必要があると認めるときは、誘導区域内への立地を勧告することができます。

勧告に従わなくても、直接の罰則はありません。ただし従わない場合にその旨を公表する仕組みを設けている自治体があります。事業者にとっては、実質的な影響が生じます。

30日前という期間

「届け出れば着手できる」ではなく、「届け出てから30日待つ」です。この期間を工程に入れていないと、そこで止まります。

開発許可や建築確認とは別の手続きです。両方が必要な場合、それぞれの期間を積み上げて考える必要があります。

防災との関係

居住誘導区域には、災害レッドゾーンを含めない

災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域など、災害の危険性が特に高い区域(いわゆる災害レッドゾーン)は、居住誘導区域に含まないことが原則とされています。

つまり、「居住誘導区域外」であることが、災害リスクの存在を示している場合があります。

区域外である理由が、単に中心部から遠いためなのか、災害リスクによるものなのかは別の話です。ハザードマップと合わせて確認してください。

2020年の法改正により、立地適正化計画に防災指針を定めるよう努めることとされました。災害リスクを踏まえた居住誘導のあり方を示すものです。

その他の関連制度

制度 内容
居住調整地域 市街化区域等のうち、住宅地化を抑制すべき区域。開発許可等の対象になる
特定用途誘導地区 都市機能誘導区域内で、誘導施設を有する建築物について容積率や用途制限を緩和する
跡地等管理区域 空地・空家が増えている区域について、管理の指針を定める

特定用途誘導地区は、誘導区域内で建てる側にとっては有利に働く仕組みです。容積率の緩和が受けられる場合があるため、計画地が該当するか確認する価値があります。

実務での確認

物件を扱うとき

  • 市町村が立地適正化計画を策定しているか 策定していない市町村もある
  • 対象地が誘導区域の内か外か 区域図で確認する
  • 区域外である理由 距離によるものか、災害リスクによるものか
  • 届出が必要な規模・用途か 買主の計画によって変わる

区域外の土地は、将来的に公共サービスの水準が変わる可能性があります。公共交通の減便、施設の統廃合。長期的な資産価値に影響しうる情報として、買主に伝える価値があります。

開発を計画するとき

  • 届出の要否と、30日の期間を工程に入れる
  • 勧告を受ける可能性を織り込む
  • 誘導区域内であれば、特定用途誘導地区による緩和がないか確認する
  • 補助制度がないか確認する。誘導区域内での立地には支援措置が用意されていることがある

相談者への説明

「区域外だから建てられない」ではない

誘導区域外でも、建築そのものは可能です。禁止ではなく、届出と勧告の対象になるだけです。

「区域外なので建てられません」と誤って伝えないでください。正しくは「届出が必要で、市町村から誘導区域内への立地を勧められる可能性があります」です。

そのうえで、長期的な生活環境の変化についても情報提供する。判断は相談者が行います。

この制度が抱える難しさ

  • 強制力が弱い 届出と勧告にとどまるため、誘導の効果が出るまでに時間がかかる
  • 区域設定が広くなりがち 既存の住民への配慮から、誘導区域を広く取ると、集約の効果が薄れる
  • 区域外の住民への説明が難しい 「見捨てられた」と受け取られやすい
  • 市街化区域との整合 市街化区域内に居住誘導区域外が生じる。用途地域の指定は残るため、規制の重なりが分かりにくい

三つ目は、この制度の説明で最も注意を要する点です。区域外は「切り捨てる区域」ではなく、「時間をかけて緩やかに誘導する対象」です。行政の説明会でも、ここが最大の論点になります。

実務チェックリスト
  • 市町村が立地適正化計画を策定しているか確認した
  • 対象地が居住誘導区域の内か外か確認した
  • 対象地が都市機能誘導区域の内か外か確認した
  • 区域外である理由を確認した距離か、災害リスクか
  • ハザードマップと合わせて確認した災害レッドゾーンは居住誘導区域に含まないのが原則
  • 誘導施設として何が指定されているか確認した市町村ごとに違う
  • 計画する行為が届出の対象か確認した3戸以上の住宅など
  • 着手の30日前という期間を工程に入れた
  • 開発許可・建築確認とは別の手続きであることを前提にした
  • 勧告と公表の可能性を確認した
  • (誘導区域内)特定用途誘導地区による緩和がないか確認した
  • (誘導区域内)補助制度がないか確認した
  • 「区域外だから建てられない」と誤って説明していない
  • 長期的な公共サービスの変化について情報提供した

まとめ

  • 実務に効くのは立地適正化計画。居住誘導区域と都市機能誘導区域の二つで構成される。
  • 誘導区域外での一定の開発・建築には、着手の30日前までの届出が必要。
  • 市町村長は勧告できる。従わない場合に公表する仕組みを設けている自治体もある。
  • 居住誘導区域には災害レッドゾーンを含めないのが原則。区域外は防災情報でもある。
  • 区域外でも建築は可能。禁止ではなく届出と勧告の対象。誤って伝えない。
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