不動産ファンド売却(ディスポジション)のプロセス
不動産ファンドは、最終的に保有不動産を処分することで投資家に出資金を償還し、さらに残余があれば運用益として投資家に分配して、その運用を終えるものです。
一連の手続きのことを「ディスポジション」(処分)と呼びます。
売却プランの検討
大きく分類すると、
一括売却 (バルク売り) |
複数の物件をまとめて単独の買主に売却する |
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個別売却 | 個別に売却していく |
に分けられます。
さらに、
入札(ビッド)取引 | 複数の買主候補から一斉に条件を募って売却先を決定する |
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相対取引 | 個別に買主と交渉していく |
を選択します。
そして、
- 仲介業者を介して売却するのか
- 仲介業者に複数依頼するのではなく、セラーズエージェントとして選任するのか
- 直接交渉するのか
を決めなければなりません。
セラーズエージェントとは、契約形態に関わらず、実質的に売却活動を一手に取り仕切る仲介業者のことです。
ディスポジション(処分・売却)地の資金の流れ
01.売却収入
保有する不動産信託受益権を売却した場合、合同会社は買主から信託配当受取口座で「売却代金」を受領します。
02.売却関連支出
仲介が介在した場合は第二種金融商品取引業者への「媒介手数料(仲介手数料)」が必要です。信託受託者には「処分信託報酬」が必要です。
03.借入元本返済
売却代金(1)から売却関連支出(2)を控除した残額から合同会社はまずレンダーに「借入元本の返済」を行います。
04.AM報酬支払い
借入元本を返済したあとの残額が「信託配当受取口座」から「リリース口座」に移されます。その額からAM(アセットマネージャー)に「AMフィー(処分報酬)」が支払われます。
05.分配金支払い
AM報酬が支払われたあとの残額が投資家に支払われます。
不動産信託受益権の処分パターン
01.受益権売買
売主である「器」から買主に信託受益権がそのまま売却されます。事前に「信託受託者の譲渡承諾」が必要です。
02.現物売買
受託者が保有不動産を買主に売却する方法です。信託受託者が瑕疵担保を負うことを回避するため、買主は通常、宅建業者・不動産業者に限定されます。
03.受益権売買+即信託解除
信託受益権のまま買主にいったん売却し、即日、新受益者となる買主と受託者との間で信託契約を解除し、買主が現物不動産の交付を受けます。
買主がプロ(宅建業者、不動産会社)でない場合、受託者が瑕疵担保責任を追うことを回避する策として用いられています。
ディスポジション時の資金計画
売却時における会計上の損益は、
売却時における会計上の損益 =「売却額」-「簿価」-「売却コスト」
で算定できます。
「簿価」=前期末時点の簿価-当期の減価償却費+当期の資本的支出
これらの式からわかるように、期中の減価償却費が多い場合には、その分、売却時点の簿価が下がりますし、期中の減価償却費が少ない場合にはそれほど売却時点の簿価は下がりません。
CFと会計では不一致項目があるため、売却に伴い、決算末時点で合同会社のリリース口座に残るCF(配当可能CF)と会計上の利益は一致しません。