不動産物件調査
不動産を調査することのメリット。それはトラブル防止と不動産の欠陥を見つけ出すことにあります。
欠陥には、
• 物件自体の欠陥
• 法律上の欠陥
• 心理的な欠陥
が、あげられます。
01. 物件調査とは
• 現地調査
• 法務局調査
• 役所調査
• 設備調査
• 照合調査
• 報告書作成
物件調査は、まず現地調査から始まります。
調査の最終目的は、「なんの問題もない不動産なのか(なんの問題もなく建物を建て替えられるのか)」を知ることです。
現地で、目で見て、肌で感じることが大切。
現地調査では、現地で疑問を持つ感覚が大事になってきます。
例えば、ブロックが傾いていないかどうか、傾いていたら地盤が悪いのではないだろうか、と疑問を持つ、と言ったような具合です。
きちんとデータ化されていて、どこかで閲覧できるわけではないので、周辺でのヒアリング、役所調査で問題を洗い出すしかありません。
現地調査のあとに行うのが書類と現地の比較照合です。
物件の様々な資料と現地の現況が一致していればなんの問題はないのですが、これが一致していなければ、どこが一致していないのか告知しなければなりません。
あるがままに正確に告知すること。
それが取引の基本です。
きちんと告知することで、あらかじめ買主が知っている事実は、単なる不動産の欠点でしかありません。
なのでトラブルに発展することはないのです。
02. 調査持参用具(主な12個)
1. 現地調査表
2. 方位磁石
3. 認印
4. シャープペン(0.3ミリ・0.5ミリ)
5. 三角定規
6. 消しゴム
7. トレーシングペーパー
8. メモ用紙
9. 5~6mメジャー
10. 50mメジャー
11. 携帯水平器
12. スコップ(小)
03. 各項目調査
道路
現地に着いたらまず道路を調査します。
道路は基本的に「私道」と「公道」に分けられます。(登記簿謄本の地目が「公衆用道路」となっているからといって「公道」とは限りませんよ)
「私道」か「公道」かは、市役所に行って調べることになりますが、道路境界石(鋲、プレート)が行政のものであるかどうかを確認します。
それから、道路境界石(鋲、プレート)の幅員を測ります。 (道路境界石等がない場合は、現況での幅員を測ります)
境界から後退してブロック塀等がある場合、その幅員も図ります。 (建築基準法上、建物は4mの道路に接道していなければ、いけないため、4m未満の道路の場合は、中心後退することが義務付けられています)
道路に接する敷地部分の距離を測ります。
建築規定で2mなければいけません。2mぎりぎりの時は注意が必要です。
(行政によっては、道路に接する敷地部分の距離で建築物の床面積の制限がある場合がありますから注意が必要です)
接道義務(建築基準法43条)
建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない。ただし、敷地の周囲に広い空き地があるなど特定行政庁が安全上支障がないと許可したもの(建築審査会の同意も必要)については、2m以上接しなくても良い。
排水
道路の調査が済んだら、排水を調べます。
• 道路側溝(水路など)
• 浄化槽
• マンホール
排水の流れの目安をつけ、下水道なのか浄化槽なのかの目安をつけます。
ブロック塀や外壁などに、泥やシミが付着していれば、水害にあったことが予想されます。
その場合は近くの河川の改修工事の状況などを調べます。
敷地の利用状況
隣接地の建物自体やひさしが隣の敷地にかかっていることがありますので注意が必要です。
この場合、境界立会いの際に話し合いを行うことになります。
また、樹木やブロック、配水管、地中で水道管が通っていたり、と越境問題は意外とあります。
境界の問題は非常にデリケートなので、注意を要します。
以上が現地で見ておくべき重要な項目です。
それというまでもなく、マーケティング的なことの調査も現地で見ておくできでしょう。
• 適正価格はいくらなのか。
• いくらなら売れるのか。
• あるいは買ってもいいか。
現地でその空気を吸って感じましょう。
また、現地でしかわからないことも重要です。
嫌な臭いはしないか、騒音はしないか、全体的な雰囲気、住環境、立地条件などなど。
04. 周辺の観察項目
観察項目 | 懸念すべき問題点 |
---|---|
傾斜地 | がけの問題 |
谷間 | 排水や地盤の問題 |
平坦地 | 地盤の問題 |
畑 | 農薬被害 | 駐車場 | 除草剤による土壌汚染 | 工場 | 化学汚染 | ビル | 電波障害 | 川 | 氾濫・洪水 | 高圧線 | 建築制限 | がけ隣接 | 建築制限 | 空港近接 | 建築制限 | 高速道路 | 電波障害 | 地下鉄 | 建築制限 | 嫌悪施設 | 心理的な障害 |
現地調査とは、問題点を洗い出すことです。
次に浮かび上がってきた疑問を、役所で解決します。
住宅地盤の調査
地盤調査は敷地の地盤状態を調べ、適切な基礎仕様・地盤補強工法の選定を行う目的で実施するものです。
戸建て住宅における不同沈下事故の発生は、地盤を見極める技術者の技量と認識不足にあるといえます。
スウェーデン式サウディング試験方法における許容応力度の算出方法が、平成13年に国土交通省より提案されるようになりました。
この計算式を適用するための、事前調査(資料調査 / ペーパーロケーション)、現地調査(現地ロケーション)及び現地計測から総合的に沈下量、変形の可能性などを検討することが重要です。
適用建築物
地盤調査及び地盤補強工事の対象とする建築物の規模は、
1. 建物高さ:13.0m以下
2. 軒下:9.0m以下
3. 設計基礎接地圧は布基礎の場合、50kN/㎡以下、ベタ基礎の場合は30kN/㎡以下とする
荷重
設計で想定する荷重は、基礎を含む建物荷重のほか、盛土など新たに加わる荷重を考慮します。
地盤調査の進め方
01.事前調査(予備調査)
• 現地資料収集
※当該地盤の概略把握
• 既存資料の収集
• 近隣データの収集
現地調査の前に調査地付近の地形図、地質図及び土地条件図などの既存資料を照査します。また、土地の履歴などを調べるために旧版地形図や空中写真などを利用するとよいでしょう。
02.現地調査(本調査)
• 現地計測
地盤調査は、原則としてスウェーデン式サウンディング試験を採用します。
ただ、地盤状況に応じて適切な地盤調査方法を選定しなければいけません。
地盤計測において、原地盤とは明らかに異なり、人為的に乱されたり、盛土であることが判明した場合は、盛土の厚さ、締まりの程度、均質性などのほかに、盛土してからの経過年数を調べる必要があります。
盛土の材料が基礎選定上支障となる場合は、その根拠を示して報告書に記載していきます。
予定建築物に近接して擁壁がある場合は、その構造や形式などのほか、異常の有無を確認する必要があります。
既設の擁壁がある場合は、擁壁の安全が確認できるような調査が必要です。
擁壁に近接して建物が計画される場合、埋め戻し部分について特に注意しなければいけませんよ。
擁壁の種類
練積み造 | • コンクリートブロック造 • 間知石造 |
---|---|
無筋コンクリート造 | • 重力式 • もたれ式 |
鉄筋コンクリート造 | • 半重力式 • もたれ式 • 片持ち梁式 • 控え壁式 |
現地踏査(現地ロケーション)
調査対象地において現地踏査を実施し、各項目(地形・地質、丘陵地・台地、表層地質、傾斜、高低差、敷地履歴・造成経年、造成盛土の状態、周辺異常等の状況)について確認します。
03.地盤解析
現地計測結果の解釈と利用 ・基礎仕様・地盤補強工法の選定
事前調査(資料調査/ペーパーロケーション)、現地調査(現地ロケーション)及び現地計測から総合的に沈下、変形の可能性などを検討し、基礎仕様・地盤補強工法を選定し、提案していきます。
基礎仕様・地盤補強工法の選定提案にあたっては、許容支持力ならびに許容沈下量の両方を満たした設計でなければなりません。
地盤補強工事
01.表層地盤改良
表層地盤改良は、セメント系固化材と対象土を攪拌混合及び転圧し、均質な安定処理地盤の造成を行い、不同沈下を抑止することを目的とします。
適用範囲
1. 施工方法は、現場における攪拌による粉体方式とする。ただし、公的な評価を受けた工法は除く
2. 改良厚さは、0.5m以上、2.0m以下を原則とする
3. 適用地盤は砂質土(礫質土を含む)および粘性土地盤とする
02.柱状地盤改良
柱状地盤改良は、セメント系固化材と水を混合攪拌したセメントスリラー(以後スリラーと呼ぶ)を作成し、このスリラーを攪拌装置先端より吐出しながら回転・掘進することで、対象土とスリラーが固化反応し、柱状の改良体を築造することで地盤の支持力の向上と不同沈下の抑止を目的とします。
適用範囲
1. 改良径は直径600㎜以上とする。ただし、公的な表を受けた工法は除く
2. 改良長は2.0m以上、8.0m以下を原則とする。ただし、2.0m未満の場合は改良径や配置及び本数の検討が別途必要となる
3. 適用地盤は砂質土(礫質土を含む)及び粘性土地盤とする
03.小口径鋼管
小口径鋼管工法は、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3444 STK400以上)を回転圧入によって、所定の深さの支持地盤に根入れします。鋼管先端部の支持力と鋼管局面の摩擦力によって建物荷重を支持させるものです。
適用範囲
1. 鋼管軸径は直径114.3mm以上、鋼管の肉厚は4.5mm以上とする
2. 鋼管長は2.5m以上または鋼管軸径の100倍以内を原則とする
3. 土質はすべての土質を対象とする。ただし、圧入が困難な礫質土は除く
4. 公的な評価を受けた工法を除く