不動産会社を開業するまでの大まかな流れ
不動産会社の設立
- 事務所設置
- 会社設立
- 宅地建物取引士の設置
- 宅地建物取引業免許の申請
- (宅建協会への加入・全宅保証への加入)
事務所の設置
不動産会社を始めるとき、まずは本拠地となる場所をどこに構えるのか、決めなければいけませんね。
これから成功するかどうか。
とても大切な決定事項です。
不動産会社を大きく分ければ、
- 従来通りの売買・賃貸の仲介業務と相続・事業承継対策
- 不動産流動化などのコンサルティング業務
に分けることができます。
「従来通りの売買・賃貸の仲介業務と相続・事業承継対策」のような業務エンドユーザーを顧客とするなら、人通りが多いところで店舗を構えるのがよいでしょう。
「不動産流動化などのコンサルティング業務」のような業務で特定の人しか来客の予定がなく、事務作業だけこなせればよい、ということであれば、あまりロケーションにこだわる必要はありません。
ただ、宅地建物取引業免許を取得する関係で注意しなくてはならないことがあります。
自宅の一部を利用して事務所にすることも可能ですが、事務所専用の出入口を設けなければなりません。
自宅と事務所の出入口を兼ねることはできないのです。
私は、当初、マンションでの開業を考えていて、どうしても出入口はひとしかなく、それでも申請しましたが、やはり県の指導係り(?)に怒られました・・・汗
自宅に限らず、法人の事務所の一角を事務所とする場合においても、出入口は別々に設ける必要があります。
会社設立
会社の基本事項の決定
- 商号
- 事業目的
- 発起人の決定
- 代表取締役等役職の決定
- 決本店所在地
- 役員の任期の決定記
- 資本金の総額と設立時発行株式総数の決定
- 発行可能株式総数の決定
- 譲渡制限会社 or 公開会社のどちらにするのか決定
- 取締役会を設置するのか、しないのか決定
- 事業年度の決定
- 公告の方法の選択
同一商号調査と事業目的の確認 同一商号の調査が終わったら、会社印を作成します。
- 定款を作成する
- 公証役場で定款の認証を受ける
- 資本金の払い込み
- 登記申請書作成・法務局へ申請
ビジネスを行う際に個人としてやっていくのか、会社としてやっていくのか、の選択があります。
不動産を扱うのであれば、迷うことなく会社にすべきです。
なんといっても社会的信用が違います。
ましてや不動産という高額な商品を取り扱うのであればなおさら、です。
新会社法によって、株式会社設立手続きは簡素化されました。
不動産会社の名前で注意しなければならないこと
○○住宅センター、○○流通センター、○○協会といった名称は避けること
定款の事業目的に必ず入れなければならないこと
「不動産の売買」「不動産の売買の仲介」「不動産の賃貸の仲介」など宅地建物取引業を営むことの記載が必要。
これは宅建免許を申請するときの関係で必要になります。
宅建業免許申請
宅地建物取引士の設置
宅地建物取引士とは、、宅地建物取引士資格試験に合格後、宅地建物取引士資格登録を行い、宅地建物取引士証の交付を受けている者のことです。有効期間は5年間です。
不動産を業として行うには、営業を行う事務所ごとに一定数の宅地建物取引士の設置を義務づけています。
業務に従事する者の5名に1名以上の専任の宅地建物取引士が義務付けられています。
6名ならば2名の専任の宅地建物取引士が必要です。
5名の会社が、人を増やして6名体制にしようとしたとき、専任の取引主任者は2名必要となるので、取引主任者を採用するか、今いる取引主任者でないものが頑張って試験に合格するか、しなければならず、あわてて試験勉強をしたりすることもしばしば・・・
また、専任の宅地建物取引士が退職などで不足してしまった場合、2週間以内に補充しなければならないなどの措置をしなければならず、いずれにしても不動産業を営むのであれば、宅地建物取引士はできるだけいたほうがよい、ということになります。
宅建業者とは
宅建業法では宅建業者とは、次のように定義しています。
- 宅地又は建物について自ら売買又は交換することを業として行う
- 宅地又は建物について他人が売買、交換又は賃借するにつき、その代理若しくは媒介することを業として行う
「業として行う」というのがポイントです。
誰が見ても不動産業をしているとみることができれば宅建免許が必要、ということになります。
免許申請の流れ
- 書類の作成
- 免許申請
- 審査(欠格事由の審査及び事務所審査等)
- 免許(ハガキによる通知)
- 営業保証金の供託
- 届出
- 免許証交付
- 営業開始
免許申請(法人の場合)の必要書類
- 免許申請書
- 相談役及び顧問、5%以上の株主・出資者等の名簿
- 身分証明書(代表取締役・取締役・監査役・代表執行者・執行者・選任の主任者・政令使用人・相談役・顧問)
- 登記されていないことの証明書(代表取締役・取締役・監査役・代表執行者・執行者・選任の主任者・政令使用人・相談役・顧問)
- 略歴書(代表取締役・取締役・監査役・代表執行者・執行者・選任の主任者・政令使用人・相談役・顧問)
- 専任の取引主任者設置証明書
- 宅建取引業に従事する者の名簿
- 専任の取引主任者の顔写真添付用紙
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
- 宅地建物取引業経歴書
- 決算書(新規法人は開始貸借対照表)
- 納税証明書(新設法人は不要)
- 誓約書(代表者)
- 事務所を使用する権限に関する書類(通常は契約書)
- 事務所付近の地図(案内図)
- 事務所の写真(さまざまな方向から)
必要書類は正本1部・副本1部を作成します。
営業保証金について
営業保証金を供託するか、保証協会へ加入するか、しなければ業務をスタートすることはできません。
営業保証金の供託を行う場合 | 本店で1,000万円 / 支店で500万円 |
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保証協会に加入する場合 | 本店で60万円 / 支店で30万円 |
この金額の差から見てもお分かりのように、保証協会に加入するのが一般的です。
ただ、保証協会への加入手続きには時間がかかります。計画的に準備しましょう。
保証協会は2つあります。
(社)全国宅地建物取引業保証協会(ハトのマ―ク)と(社)不動産保証協会(ウサギのマーク)です。
情報開示促進法的な性質を併せ持つ宅建業法
アスベスト、耐震問題、土壌汚染対策法・・・。
最近、よく耳にする言葉です。
これらの問題、だれがこの「ツケ」を払うのか、が問題になりますね。
不動産取引は、その「ツケ」を誰が払うのかを決める絶好の契機となるのです。
だれが、「ババ」をひくのか、それが不動産取引というゲームであるともいえます。
だからこそ、取引に際しては十分で徹底したリスク管理が求められるのです。
リスクの本質を認識すること
単にリスクが、財産的なものだけであるならば、価格面を低くすることでリスクを吸収し、解決することができるでしょう。
しかし、それが人の命に係ることであったら、それは単純にお金では解決できません。
リスクの本質とは?
人それぞれが異なった捉え方をします。
不動産取引では取引の相手方がリスクの本質がわかるように情報提供を行うことが重要です。
具体的には、相手方の視点を取り込むということです。
取引リスク管理とは?
- 裁判で負けないこと
- 裁判を起こされないこと
- トラブルを引き起こさないこと
取引リスクを最小限に食い止めるためにはトラブルには発展しない丁寧で細心の注意を払った契約管理が必要です。
そういった視点から、宅建業法をこれから見ていきましょう。
宅建業法とはどんな法律なのか?
1964年の通達です。
「業者への指導監督を求めるとともに、法改正によって規制強化が図られたので積極的に取締りを行うこと」
土地の投機的取引が目立つようになってきて、悪質な宅建業者が暗躍してきた背景のなか、宅建業法を活用して検挙して処罰しよう、ということですね。
そのため、取締りを容易に行うことができるように宅建業法は改正を繰り返してきています。
宅建業者の責任義務を明確な証拠とするため、記録しておくべきものとして、『重要事項説明』(法35条)と『事実不告知・不実告知の禁止』(法47条)があります(『事実不告知・不実告知の禁止』は法35条より広く捉える必要があります)。
重要事項説明書に記載されていない事実は、宅建業者が説明していないとみなされてしまうこともあります。
これは、重要事項説明書に記載していないというだけで行政処分できるということを意味しています。
リスクを回避するために何より大事なこと、それは、必ず書面で説明した事実について記録しておくことです。
このことから、宅建業法は、取締りを目的とする性質を持つと同時に、情報開示を目的とする性質を持っていることがわかりますね。
表示規約等の主な変更点(平成24年5月31日施行)
- 土地や中古住宅も二重価格表示が可能になりました。
- 事実と相違する完成予想図などの表示も不当表示になりました。
- 物件の環境条件に影響を及ぼすおそれのある他社の建物の建築計画等を知り得た場合もパンフレットに記載することが必要となりました。
- 中古住宅でも畳1枚当たりの広さが1.62㎡以上ないと1畳として表示することができなくなりました。
- 賃貸住宅の必要な表示事項が追加されました。
土地・中古住宅の二重価格表示をするための要件
- 過去の販売価格の公表時期及び値下げの時期を明示すること(二重価格表示は、販売価格の比較表示のみであり、賃貸物件の賃料の比較表示はできません)
- 「過去の販売価格」は、値下げの3ヶ月前に公表された価格であって、かつ、値下げ前3ヶ月以上にわたり実際に販売するために公表していた価格であって、その資料を有すること
- 値下げ時期から6ヶ月以内に表示するものであること(ただし、6ヶ月以内であっても災害その他の事情により物件の価値に同一性が認められなくなった場合には、同一性が認められる時点までに限られます)
- 土地(現況有姿分譲地を除く)又は建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く)について行う表示であること
01.過去の販売価格を比較対象価格とした二重価格表示について
今までは、二重価格表示ができるのは、「建築後2年以内の未入居の建物」のみでしたが、変更後は、次の要件を満たすと土地と中古住宅(中古マンション)も可能となりました。
02.写真、CG、完成予想図などの表示について
モデルルーム又は写真、CG、見取図、完成図もしくは完成予想図を表示するにあたり、物件の規模、形状、構造などについて、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれがある表示のみを不当表示としていましたが、変更後は、優良であると誤認されるおそれがある表示に加えて、事実に相違する表示も不当表示となります。
03.物件の環境条件に影響を及ぼすおそれのある建築計画等の表示について
分譲地、新築分譲住宅及び新築分譲マンションのパンフレット等には、日照その他物件の環境条件に影響を及ぼすおそれのある建物の建築計画又は宅地の造成計画について、自社が行うものについては、その旨及びその規模を記載しなければならないことになっていましたが、変更後は、自社が行うもの以外で、他社が行うものであってもの知り得たものがある場合は、この記載が必要になりました。
04.住宅の居室等の広さの畳数表示について
中古住宅で1畳当たりの面積が1.62㎡満たないものは、その旨と1畳当たりの面積を表示して表示することができましたが、変更後は、住宅等の居室等の広さ(壁心)を畳数で表示する場合、中古住宅でも畳1枚当たりの広さが、1・62㎡以上内と1畳として表示することができなくなりました。
05.賃貸条件として家賃保証会社との契約を要するときの表示について
賃貸マンション及び賃貸アパートの必要な表示事項に、家賃保証会社等と契約することを賃貸条件としているときは、その旨及び契約にかかる金額を追加することになりました。