開発許可の用語集 ── 語と、どこで効くか
この記事の使い方
- 開発許可の実務で出てくる語を、六つの領域に分けて並べた
- 語釈のあとに「どこで効くか」を一行付けている。定義よりも、そちらが実務では大事
- 数値は法定のものだけを載せた。自治体の運用で決まるものは、確認先を示すにとどめている
- 各語から、詳しく扱っている記事に飛べる
制度の話が通じないとき、たいてい原因は語です。同じ言葉を、違う意味で使っている。
「開発」という語ひとつでも、都市計画法の開発行為と、日常語の開発では範囲が違います。窓口と事業者、設計と施工、売主と買主——どこかで食い違ったまま進むと、後で戻ることになります。
ここでは、開発許可の実務で出てくる語を並べます。定義だけでなく、その語が実際にどこで効いてくるかを添えました。
一 区域と、線引き
| 語 | 意味と、どこで効くか |
|---|---|
| 都市計画区域 | 一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要がある区域。都道府県が指定する。 ── この内か外かで、開発許可が要る面積が変わる |
| 区域区分(線引き) | 都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分けること。 ── 線引きされた区域かどうかで、規制の重さがまったく違う |
| 市街化区域 | すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域。 ── 1,000平方メートル以上の開発に許可が要る。条例で300平方メートルまで引下げ可 |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域。 ── 規模を問わず開発許可が要る。建てること自体にも許可が要る(43条) |
| 非線引き都市計画区域 | 都市計画区域のうち、区域区分が定められていないもの。 ── 3,000平方メートル以上で開発許可 |
| 用途地域 | 建てられる建築物の用途を定める地域地区。13種類。 ── これが定められていると、42条の制限はかからない |
| 地区計画 | 道路や広場の配置まで、地区の単位で定める計画。 ── 34条10号で、調整区域でも建てられる道になる |
| 立地適正化計画 | 居住や都市機能を誘導する区域を定め、コンパクトな都市を目指す計画。 ── 誘導区域の外での一定の開発は、届出の対象になる |
詳しくは都市計画法はなぜあるのかと市街化調整区域で扱っています。
二 開発許可の骨格
| 語 | 意味と、どこで効くか |
|---|---|
| 開発行為 | 主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う、土地の区画形質の変更。 ── 目的と変更の両方がそろって初めて成立する |
| 区画形質の変更 | 区画(公共施設の新設・廃止)、形(切土・盛土)、質(宅地以外を宅地に)のいずれかを変えること。 ── 分筆しただけでは区画の変更にあたらない |
| 特定工作物 | 第一種=コンクリートプラント等。第二種=ゴルフコース、1ヘクタール以上の運動・レジャー施設や墓園。 ── ゴルフコースだけは規模を問わない |
| 開発区域 | 開発行為を行う土地の区域。 ── ここをどこで囲むかで、面積要件も費用も決まる |
| 予定建築物 | その開発区域に建てる予定の建築物として申請したもの。開発登録簿に記載される。 ── これ以外を建てるには42条の許可が要る。造成地を買うときは必ず見る |
| 一体開発 | 形式的に区域を分けても、実質的にひとつの計画とみなされること。 ── 面積要件を逃れる目的の分割は認められない |
| 許可権者 | 開発許可を出す者。都道府県知事が原則。指定都市・中核市・事務処理市町村は市町村。 ── 熊本市内は市、県内のその他は県または事務処理市町村 |
三 立地の基準(市街化調整区域)
| 語 | 意味と、どこで効くか |
|---|---|
| 34条 | 市街化調整区域で例外的に認められるものを、号ごとに並べた条文。 ── 調整区域の案件は、ほぼここで決まる |
| 11号・12号 | 条例で区域や開発行為の内容を定め、その中での開発を認める号。 ── 条文だけでは中身が分からない。市町村の条例を見る |
| 14号 | 1号から13号に当てはまらないが、開発審査会の議を経て支障がないと認められるもの。 ── 審査会の日程が工程を縛る |
| 提案基準 | 14号の運用のために、許可権者があらかじめ示した類型(分家住宅、建替えなど)。 ── 自治体ごとに違い、改定される。最新版を現物で確かめる |
| 開発審査会 | 都道府県・指定都市等に置かれる合議制の機関。 ── 14号の議と、審査請求の裁決という二つの役割を持つ |
| 分家住宅 | 農家等の世帯から分かれる者が、本家の近くに建てる住宅。多くの自治体が類型として置いている。 ── 人に着目する類型。第三者に売るときに制限が出る |
| 集落内開発制度 | 熊本市が条例で定めた、集落内での開発を認める仕組み。 ── 区域の内か外かで結論が変わる。境の土地は要注意 |
| 43条の建築許可 | 開発行為を伴わずに、調整区域で建築物を建てる場合の許可。 ── 造成しないから何も要らない、は誤り |
| 42条 | 開発許可を受けた区域で、予定建築物以外を建てることの制限。 ── 用途地域が定められていれば、この制限はかからない |
| 41条の制限 | 用途地域の定めがない土地について、建蔽率・高さ・壁面の位置などを許可権者が定めるもの。 ── 建築基準法上は建てられても、こちらで止まることがある |
詳しくは都市計画法34条、開発審査会と34条14号、予定建築物以外を建てるで扱っています。
四 技術の基準
| 語 | 意味と、どこで効くか |
|---|---|
| 33条 | 開発許可の技術基準。道路、排水、給水、公園、防災など。 ── 市街化区域の案件では、審査の中心がここになる |
| 32条の同意・協議 | 公共施設の管理者の同意と、新設される公共施設の管理予定者との協議。 ── 開発許可の最大の関門。相手の都合で動くので、最初に着手する |
| 公共施設 | 道路、公園、下水道、水路など。 ── 新設したものは、工事完了公告の日の翌日に市町村の管理に移る |
| がけ | 地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地。 ── 高さが基準を超えると擁壁が要る。数値は自治体の基準による |
| 二段擁壁 | 既存の擁壁の上に、さらに擁壁を積むこと。 ── 原則として認められない。既存擁壁の扱いは初期に決める |
| のり面 | 切土・盛土でできる傾斜面。緩い勾配で土を寝かせる処理。 ── 擁壁より安いが、面積を食い、草刈りが続く |
| 調整池 | 開発によって増える雨水の流出を、一時的にためて調整する施設。 ── 使える面積を直接減らす。採算の計算はこれを引いた後 |
| 残置森林 | 林地開発許可で、開発区域内に残すことを求められる森林。 ── 割合は都道府県の基準による。計画面積が思ったより小さくなる |
五 手続きと、記録
| 語 | 意味と、どこで効くか |
|---|---|
| 事前協議 | 申請の前に、関係各課や公共施設の管理者と条件を詰める段階。 ── 標準処理期間には含まれない。実際にはここがいちばん長い |
| 標準処理期間 | 申請を受理してから処分するまでの、自治体が定めた期間の目安。 ── 協議の期間は入っていない。依頼者にそのまま伝えない |
| 変更許可 | 許可の内容を変えるときに要る許可(35条の2)。軽微な変更は届出で足りる。 ── 変更後の計画全体が審査される。32条の同意も取り直しになり得る |
| 完了検査 | 工事が許可の内容どおりに施工されたかを、現地で確認するもの。 ── 埋め戻す前に許可図書と突き合わせておく |
| 検査済証 | 技術基準に適合していることの証明。 ── これが出なければ、工事完了公告も出ない |
| 工事完了公告 | 造成工事が完了したことの公告。 ── ここで37条の建築制限が解ける。建築の着工はこの後 |
| 37条の建築制限 | 工事完了公告があるまで、開発区域内に建築物を建ててはならないという制限。 ── 「許可が下りた」を着工の合図と取り違えない |
| 開発登録簿 | 許可権者が調製し、誰でも閲覧できる帳簿(47条)。 ── 許可の有無、予定建築物、公告の年月日が分かる。登記には現れない |
| 地位の承継 | 許可を受けた者が替わること。一般承継(44条)は届出、特定承継(45条)は承認。 ── 造成中の土地を売買するなら、承認の段取りを契約前に確かめる |
| 監督処分 | 違反に対して、工事の停止や建築物の除却などを命ずるもの(81条)。 ── 違反状態の土地を取得した者にも及び得る |
詳しくは完了検査と工事完了公告、開発登録簿、違反と監督処分で扱っています。
六 隣り合う制度
| 語 | 意味と、どこで効くか |
|---|---|
| 農地転用 | 農地を農地以外にすること。自ら転用するのが4条、権利移動を伴うのが5条。 ── 農業委員会の総会日程に乗る。月に一度が通例 |
| 農振除外 | 農業振興地域の農用地区域から外す手続き。 ── 受付が年に数回の自治体がある。ここが工程を支配する |
| 農用地区域 | 農業振興地域のうち、農業上の利用を確保すべき区域。 ── ここにある限り転用できない。除外が先 |
| 盛土規制法 | 宅地造成及び特定盛土等規制法。崩落の防止を目的とする。 ── 建築の目的がなくてもかかる。資材置場や農地の嵩上げも対象になり得る |
| 規制区域 | 盛土規制法で指定される、宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域。 ── 指定は順次進む。区域図は必ず最新のものを見る |
| 林地開発許可 | 地域森林計画の対象民有林で、一定規模を超える開発に要る許可(森林法)。 ── 原則1ヘクタール超。太陽光発電は0.5ヘクタール超 |
| 保安林 | 水源涵養や土砂流出防止などのために指定された森林。 ── 開発には指定の解除が要る。年単位を見込む |
| 埋蔵文化財包蔵地 | 埋蔵文化財が存在すると知られている土地。 ── 着工前の届出と、試掘・発掘調査が要ることがある。早く照会する |
詳しくは農地転用、盛土規制法と開発許可、林地開発許可で扱っています。
数値の扱いについて
ここに載せていないもの
この用語集には、法令に定めのある数値だけを載せています。次のものは、あえて書いていません。
- 擁壁が必要になるがけの高さ
- 道路の幅員や勾配の細目
- 調整池の容量の計算方法
- 残置森林の割合
- 標準処理期間の日数
- 手数料
いずれも自治体の基準や運用で決まり、改定されるものだからです。案件ごとに、管轄する許可権者の手引きで確かめてください。
語が食い違っていないか
- 「開発」を、都市計画法の開発行為の意味で使っているか
- 「造成」と「開発行為」を混ぜていないか
- 「許可が下りた」が、造成の着工か建築の着工かを区別しているか
- 「調整区域だから建てられない」と決めつけていないか
- 「農地転用」と「農振除外」を、別の手続きとして扱っているか
- 「盛土規制法」と「開発許可」を、別の許可として扱っているか
- 「予定建築物」が何と記載されているか、登録簿で確かめたか
- 関係者のあいだで、同じ語を同じ意味で使えているか
まとめ
- 開発許可の実務でつまずく原因の多くは、語の食い違いにある
- 定義よりも、その語がどこで効いてくるかを押さえるほうが役に立つ
- 法定の数値と、自治体の運用で決まる数値を分けて理解する
- 自治体の運用で決まるものは、案件ごとに手引きで確かめる
- 関係者のあいだで語を揃えることが、手戻りを減らすいちばん安い方法である
