林地開発許可 ── 森林を開発するときの、もうひとつの許可
- 森林を開発するときは、森林法の林地開発許可が別に要る
- 対象は地域森林計画の対象となる民有林。1ヘクタールを超える開発が原則の基準
- 太陽光発電設備については、0.5ヘクタール超に引き下げられた
- 保安林は別の制度。解除の手続きが要り、時間がまったく違う
山林を造成して何かを建てる。この相談で最初に確かめるのは、開発許可の要否ではありません。その森林が、どういう森林かです。
森林法には、都市計画法とは別の許可制度があります。しかも、保安林かどうかで話がまったく変わります。
三つに分けて考える
- 地域森林計画の対象となる民有林 ── 一定規模を超える開発に林地開発許可が要る
- 保安林 ── 解除の手続きが要る。所要期間も難易度も別格
- それ以外の森林 ── 森林法の許可はかからない
まず、対象地がどれに当たるかを確かめます。森林簿・森林計画図で調べられます。窓口は都道府県の林務担当です。
林地開発許可の基準
地域森林計画の対象民有林で、一定規模を超える開発行為をしようとするときは、都道府県知事の許可が要ります(森林法10条の2)。
| 用途 | 許可が要る規模 |
|---|---|
| 原則 | 1ヘクタールを超えるもの |
| 太陽光発電設備の設置 | 0.5ヘクタールを超えるもの |
太陽光発電については、森林の開発が各地で問題になったことを受けて基準が引き下げられました。以前の記憶で「1ヘクタール以下だから要らない」と判断しないことです。
また、許可が要らない規模であっても、伐採の届出が必要な場合があります。無届けで伐採すると、それ自体が問題になります。
審査で見られること
林地開発許可は、森林の持つ働きを損なわないかを審査します。おおむね次の四つの観点です。
- 災害の防止 ── 土砂の流出、崩壊。切土・盛土の計画とのり面の処理
- 水害の防止 ── 下流への流出量。調整池の容量
- 水の確保 ── 周辺の水源への影響
- 環境の保全 ── 周辺の環境との調和、残置森林の割合
開発区域のすべてを裸にしてよいわけではありません。一定の割合の森林を残すことが求められます。
この割合は用途によって違い、都道府県の基準で定められています。計画できる面積が、思っていたより小さくなることがあるので、事業の採算を見る段階で確かめておく項目です。
保安林は、別の話
保安林は、水源の涵養、土砂の流出防止、なだれや落石の防止といった目的で指定された森林です。指定されている限り、開発はできません。
開発するには、保安林の指定の解除を受ける必要があります。これは林地開発許可とはまったく別の手続きで、次の点が違います。
- 解除には、公益上の理由か、指定の目的が失われたことなどが要る
- 手続きに要する期間が長い。年単位を見込むことになる
- 代替の森林を確保するなど、追加の条件が付くことがある
「安い山林が出ている」という話には、保安林が含まれていることがあります。登記記録の地目だけでは分かりません。必ず森林の種類を確かめてください。
開発許可との関係
林地開発許可と都市計画法の開発許可は、目的が違うので両方要ることがあります。
| 状況 | 都市計画法 | 森林法 |
|---|---|---|
| 都市計画区域内の森林で建てる(1ha超) | 要る | 要る |
| 都市計画区域外の森林で1ha超の造成 | 要る(1ha以上) | 要る |
| 森林で0.6haの太陽光発電 | 建築物でなければ不要 | 要る |
| 森林で0.3haの造成 | 規模により | 原則不要(伐採届は要ることがある) |
三行目が分かりやすい例です。建築物を建てないので開発許可は要らないが、森林法の許可は要る。「開発許可が不要」だけで判断すると、ここで落ちます。
進め方
- ① 森林簿・森林計画図で、森林の種類を確かめる(保安林かどうか)
- ② 面積と用途から、林地開発許可の要否を判断する
- ③ 都道府県の林務担当に事前相談する
- ④ 残置森林の割合、調整池の容量など、計画の骨格に関わる条件を確かめる
- ⑤ 都市計画法の開発許可と並行して進める
④が早いほど、事業の見込みが正確になります。残置森林と調整池は、使える面積を直接減らします。採算の計算は、その後です。
- 森林簿・森林計画図で、対象地の森林の種類を確かめた
- 保安林が含まれていないか確かめた
- 地域森林計画の対象民有林かどうか確かめた
- 開発面積を確定し、許可が要る規模を超えるか確かめた
- 太陽光発電なら、0.5ヘクタールの基準で判断した
- 許可が不要な規模でも、伐採の届出の要否を確かめた
- 残置森林の割合を確かめ、有効面積を計算し直した
- 調整池の容量の考え方を確かめた
- 都市計画法の開発許可の要否も、別に確かめた
- 林務担当と都市計画担当の両方に、事前相談した
山林を買う前に、確かめる順序
山林の取引では、登記記録の地目が「山林」であること以外、書面から分かることが多くありません。現地と、行政の帳簿を組み合わせて初めて素性が見えます。
- ① 森林の種類 ── 保安林か、地域森林計画の対象民有林か(都道府県の林務担当)
- ② 区域区分と用途地域 ── 都市計画法の側の扱い
- ③ 面積 ── 実測と登記面積の差。山林は差が大きいことがある
- ④ 境界 ── 山林の境界は現地で分からないことが多い
- ⑤ 接道 ── 作業道しかない場合、工事車両が入れるか
- ⑥ 傾斜と地質 ── がけの処理、のり面の面積
山林は、登記面積と実測面積が大きく食い違うことがあります。公図も精度が低く、境界が現地で確認できないことも珍しくありません。
開発の計画は面積で組み立てますから、ここが不確かなまま進めると、後で全部が動きます。残置森林の割合も面積で決まります。
確定測量に、平地よりも時間と費用がかかることを見込んでおいてください。
調整池が、計画を決めることがある
森林を開発すると、雨水が地中に浸み込む量が減り、下流へ流れる量が増えます。そのため、流出を抑える調整池を設けることが求められます。
容量は、開発面積と降雨の条件から計算されます。この池が、意外なほど大きくなることがあります。
- 調整池の分だけ、使える面積が減る
- 池を置ける地形かどうかで、区域の取り方が変わる
- 完成後の維持管理を誰が担うかという問題が残る
残置森林と調整池を差し引いて、実際に使える面積がどれだけ残るか。山林の開発では、これが事業の成否を決めます。採算の計算は、その数字が出てからです。
まとめ
- 森林の開発には、森林法の林地開発許可が別に要ることがある
- 対象は地域森林計画の対象民有林で、原則1ヘクタール超が基準
- 太陽光発電設備については0.5ヘクタール超に引き下げられた
- 保安林は別の制度で、解除には年単位の時間がかかる
- 残置森林と調整池が、使える面積を直接減らす。採算の計算はその後
