指定調査機関でなければできない調査、そうでない調査

この記事の要点
  • 調査には法に基づくものと、自主的なものがある
  • 法が求める調査は指定調査機関でなければできない
  • 自主的な調査に指定は要らない。ただし用途が変わる
  • 資料調査(フェーズⅠ)は、その手前にある

「土壌の調査を頼みたい」という相談は、二つに分かれます。

法律が求めていて、やらないと違反になるもの。もう一つは、誰にも求められていないが、自分の判断のために調べておきたいもの。頼む先も、費用も、出てくる書面も違います。

この記事では、その線引きを整理します。

二つの調査がある

法に基づく調査 自主的な調査
きっかけ 法定の契機が生じた 当事者が必要と判断した
やらないと 違反になる 何も起きない
実施する者 指定調査機関 制限はない
結果の扱い 知事へ報告。区域指定につながる 当事者の判断材料

相談の入口で、まずどちらなのかを確かめます。ここを取り違えると、頼む先ごと間違えます。

混同が起きるのは、どちらも「土壌汚染の調査」と呼ばれるからです。法の手続として避けられないものと、当事者が自分の判断のために行うもの。同じ言葉のまま話が進むと、費用の見込みも工程も噛み合わなくなります。

法が指定を求める場面

土壌汚染対策法が調査を求めるのは、限られた場面です。

条文 契機
法3条 有害物質使用特定施設の使用を廃止したとき
法4条 一定規模以上の土地の形質を変更するとき
法5条 健康被害のおそれがあるとして、知事が調査を命じたとき

これらに当たる調査は、指定調査機関に委託することとされています。自分で掘って分析しても、法の求める調査を行ったことにはなりません。

どういうときに義務が生じるかは土壌汚染対策法に、有害物質使用特定施設については水質汚濁防止法に整理があります。

形質変更の面積には、二つの基準がある

法4条の届出は、着工の30日前までに必要です。対象になる面積は一律ではありません。

有害物質使用特定施設のある工場・事業場の土地は900平方メートル以上、それ以外の土地は3,000平方メートル以上。

過去に工場があった土地では、小さい基準のほうが効いてきます。そして「過去に有害物質使用特定施設があったか」を確かめる作業が、地歴調査です。

面積の数え方、届出が要らない場合、そして誰の名義で出すのかは土地の形質変更の届出に整理があります。

自主的な調査に、指定は要らない

法定の契機がないのに調べる。これが自主的な調査です。

買う前に確かめたい。金融機関に出す資料が要る。解体の前に把握しておきたい。どれも法律が求めているものではありません。

法が実施者を限っているのは、法が求める調査についてです。誰にも求められていない調査を誰が行うかについて、法は何も言っていません。

指定は「できること」を広げる資格ではない

指定調査機関の指定は、法の求める調査を担える者を定める仕組みです。土を掘って分析する行為そのものを独占する資格ではありません。

資料を集めて土地の履歴を組み立てる作業に、指定は関係しません。登記の読み方や資料の所在の知識が要る、という別の話になります。

なぜ、それでも指定調査機関に頼むのか

自主的な調査でも、あえて指定調査機関に頼むことがあります。理由は二つです。

一つは、結果を制度に載せたい場合。自主的な調査の結果を用いて区域の指定を申請できる制度がありますが、それには法に定められた方法で調査が行われている必要があります。

もう一つは、相手方に示す資料としての通りやすさ。取引の相手や金融機関に出すとき、指定を受けた機関の名前が付いていることが求められる場面があります。

逆に言えば、それらが要らない場面では、指定の有無は結果の中身を左右しません。

資料調査は、その手前にある

ここまでの話は、土を掘って分析する段階のものです。地歴調査(フェーズⅠ)は、その手前にあります。

登記記録、旧土地台帳、閉鎖登記簿、航空写真、旧住宅地図、行政庁への照会。集めるのは書面と写真だけで、土には触れません。

だから資料調査そのものに、法が実施者を限る規定はありません。かわりに問われるのは、どの資料に、どこまで当たれるかです。管轄の法務局でしか見られない簿冊、図書館の書庫にある旧版、市町村の窓口。旧土地台帳をはじめ、この連載で扱ってきた資料がそれです。

段階を分けて頼む

資料調査と、土を採って分析する調査では、費用の桁が違います。いきなり掘る必要はありません。

まず資料で履歴を組み立て、疑うべき箇所が出てきたら、どこを、なぜ掘るのかを決めてから次の段階へ進みます。

資料調査で何も出てこなければ、そこで止める判断もあります。止める判断ができるだけの材料を残すことが、資料調査の目的です。

資料調査の結果が、次の段階の何を決めるのか。それはフェーズⅠとフェーズⅡにまとめてあります。

依頼するとき、どう聞き分けるか

頼む側が確かめるのは、次の三つです。

確かめること なぜ
法定の調査か、自主的な調査か 頼む先が変わる
結果を誰に見せるか 相手によって求められる形式が違う
資料調査までか、分析まで行うか 費用と期間の桁が変わる

三つ目が曖昧なまま話が進むと、あとで食い違います。「調査」という一語が、資料を読むことも土を掘ることも指すからです。

取引の場面で求められる調査の範囲はエンジニアリングレポートに整理があります。

法定の調査が必要になったとき

相談の途中で「これは法3条の契機に当たる」と分かることがあります。その場合、資料調査だけを行う者では扱えません。

指定調査機関に依頼することになります。そこを曖昧にしたまま引き受けるのは、依頼者にとって危険です。法の求める調査を行ったことにならず、あとでやり直しになります。

熊本県内の届出や相談の窓口は、県の環境保全課です。政令市の区域については市が窓口になります。年度によって組織や連絡先が変わることがあるので、そのつど確かめてください。

依頼の前に確かめること
  • 法定の契機(法3条・4条・5条)に当たるかを確かめた
  • 形質変更の面積が基準を超えないか見た
  • 過去に有害物質使用特定施設があったかを調べた
  • 結果を誰に、何のために見せるかを決めた
  • 資料調査までか、分析まで行うかを合意した
  • 法定の調査なら、指定調査機関に依頼した
  • 費用と期間の見込みを、段階ごとに聞いた
  • 報告書に何が書かれ、何が書かれないかを確認した

まとめ

  • 調査には法に基づくものと自主的なものがあり、頼む先も結果の扱いも違う
  • 法3条・4条・5条の調査は、指定調査機関に委託することとされている
  • 法4条の面積要件は二つ。有害物質使用特定施設のある土地は900平方メートル、それ以外は3,000平方メートル
  • 自主的な調査に指定は要らない。ただし結果を制度に載せるなら法の方法によることが必要
  • 資料調査は土に触れない段階で、問われるのはどの資料にどこまで当たれるか
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