フェーズⅠとフェーズⅡ ── 掘る場所を決めているのは、資料調査です
- 法に「フェーズ」という言葉はない。あるのは土壌汚染状況調査という一つの手続
- 資料調査が引き渡すのは二つ。調べる物質の種類と、おそれの区分
- 区分が掘る地点の数を決める。同じ範囲で9区画か、1検体か
- おそれがないと分類できた区画は、試料採取の対象から外れる
「まずフェーズⅠをお願いします。結果を見て、掘るかどうか決めます」。この頼まれ方をします。
順序としては正しい。ただし言葉が一つずれています。法律に「フェーズ」という区分はありません。そして、資料調査は掘るかどうかを決めるだけのものでもありません。
この記事では、資料調査と試料採取の段階がどうつながっているかを整理します。
法にフェーズという言葉はない
土壌汚染対策法が定めているのは、「土壌汚染状況調査」という一つの手続です。フェーズⅠ・フェーズⅡという呼び分けは、実務で使われている言い方にすぎません。
だから「フェーズⅠをやりました」ということ自体には、法律上の意味がありません。法定の契機があるなら、はじめから指定調査機関による土壌汚染状況調査が必要になります。
その線引きは指定調査機関でなければできない調査、そうでない調査に整理があります。
実務でフェーズⅠ・Ⅱと呼ぶのは、資料で調べる段階と、土を採って調べる段階を区別するためです。話が早くなるので、この記事でもその呼び方を使います。
ただし依頼書や報告書の表題に使うときは、それが法定の調査かどうかを別に明記します。「フェーズⅠ報告書」とだけ書かれた書面は、読む側にどちらか分かりません。
資料調査が引き渡すもの
資料調査は、次の段階への入力を作る作業です。作るものは二つあります。
| 作るもの | それが決めるもの |
|---|---|
| 試料採取等対象物質の種類 | 何を分析するか |
| 土壌汚染のおそれの区分 | どこを、いくつ採るか |
土壌汚染対策法施行規則3条は、調査を行う者に、対象地と周辺の利用状況や有害物質の使用・貯蔵の状況を把握させたうえで、この二つを出すことを求めています。
つまり資料調査の成果物は「汚染がありそうかどうか」という感想ではありません。次に何をどこで採るかを決めるための、区画ごとの分類です。
区分は三つ
規則3条6項は、土地を三つに分けます。
| 区分 | あてはまる土地 |
|---|---|
| おそれがないと認められる土地 | 特定有害物質の使用等がなく、用途が独立していた |
| おそれが少ないと認められる土地 | 使用施設そのものではない。事務所や作業場など |
| それ以外の土地 | 使用施設の敷地、埋設地、配管の接続箇所など |
三つ目は、条文では「前二号に掲げる土地以外の土地」と書かれています。実務では「おそれが多いと認められる土地」と呼びます。
大事なのは、この分類が敷地全体に一つ付くのではなく、区画ごとに付くことです。同じ敷地の中で、工場棟のあった一角は三つ目、駐車場だった一角は一つ目、ということが起こります。
区分が、地点の数を決める
ここが、この記事のいちばん重いところです。
調査は東西南北10メートル四方の格子に区切って行います(規則4条)。この一つひとつを単位区画と呼びます。
おそれが多いと認められる区画は、10メートル格子ごとに1地点。30メートル四方なら9区画すべてです。
一方おそれが少ないと認められる区画は、30メートル格子に1地点(第一種)、または30メートル格子の中から5地点を選んで均等に混合し、1検体にします(第二種・第三種)。
そしておそれがないと認められる区画は、試料採取の対象から外れます。
同じ広さの土地でも、資料調査の分類しだいで、採る地点の数が一桁変わります。掘る量を決めているのは、掘る前に読んだ書面です。
物質によって、調べ方が変わる
もう一つの成果物、物質の種類も、そのまま調べ方に効きます。
| 区分 | 調べ方 |
|---|---|
| 第一種 | 土壌ガス調査(深さ0.8〜1.0メートル)。検出されればボーリング |
| 第二種 | 表層5センチと5〜50センチの混合試料。溶出量と含有量 |
| 第三種 | 同じ試料で、溶出量 |
規則6条1項の定めです。採る深さも、分析する項目も、物質の区分で決まっています。
そしてどの物質を対象にするかを絞るのが、資料調査です。過去に何を使っていたかが分からなければ、絞れません。絞れなければ、広く採ることになります。
履歴を追いきれないと、区分は安全側の「それ以外の土地」に倒れます。倒すこと自体は正しい判断です。分からないものを「おそれがない」とは分類できません。
ただしそれは、敷地の全面を10メートル格子で打つということです。資料で削れたはずの区画まで、土を採る対象に含まれます。
資料調査で減らせるのは、報告書の枚数ではありません。掘る手間そのものです。
掘る前に、紙の上で決まっている
どこを掘るか。どの深さで採るか。何を分析するか。この三つは、掘る前にすべて決まっています。
現場に着いてから決めるものではありません。決めているのは、登記記録と旧土地台帳、閉鎖登記簿、航空写真、旧住宅地図、そして行政庁への照会の結果です。旧土地台帳の読み方から、この連載で辿ってきた資料がそれにあたります。
だから順序を飛ばすことができません。先に掘っても、どこを掘ればよかったのかは後から分かります。
資料調査の結果をどう書き残すかは、調査で分からなかったことを、どう書くかにまとめてあります。区画ごとの分類と、その根拠になった資料。次の段階に渡すのは、この対応関係です。
どこまでを、誰が担うか
段階が分かれているので、担い手も分かれます。
| 段階 | 担うもの |
|---|---|
| 資料の収集と読み取り | 登記・台帳・地図・写真・行政照会 |
| 区画の分類と物質の特定 | 資料から組み立てる |
| 試料の採取と分析 | 指定調査機関・分析機関 |
当方がお引き受けするのは、上の二つです。採取と分析は行いません。
法定の契機がある場合は、はじめから指定調査機関に依頼することになります。形質変更の面積要件と届出については土地の形質変更の届出に、取引の場面で求められる範囲はエンジニアリングレポートにあります。
- 法定の調査か、自主的な調査かを確かめた
- 対象にする物質の種類を絞った
- 区画ごとに、おそれの区分を分類した
- 分類の根拠になった資料を、区画ごとに残した
- おそれがないと分類できる区画があるか検討した
- 絞りきれなかった区画を、絞れなかったものとして区別した
- 採取と分析を誰が行うかを決めた
- 報告書の表題に、法定の調査かどうかを明記した
まとめ
- 法が定めるのは土壌汚染状況調査という一つの手続。フェーズⅠ・Ⅱは実務の呼び分けにすぎない
- 資料調査の成果物は、対象にする物質の種類と、区画ごとのおそれの区分(規則3条)
- 区分は三つ。おそれがない/少ない/それ以外(規則3条6項)。区画ごとに付く
- 単位区画は10メートル四方。多いなら格子ごとに1地点、少ないなら30メートル格子に1地点または5地点の混合、ないなら採取の対象外(規則4条)
- 物質の区分で採る深さも分析項目も変わる(規則6条1項)。絞るのは資料調査
熊本県内の土地の地歴調査(土壌汚染フェーズⅠ)。法務局と市町村の窓口でしか確認できない資料を、現地で集めます。株式会社地央(熊本市)が承っています。
