土地の形質変更の届出 ── 面積の要件と、例外
- 届出は区域の外か中かで、根拠条文が違う
- 区域外は3,000平方メートル、工場跡なら900平方メートル。着手30日前まで
- 盛土だけなら要らない。掘るかどうかで変わる
- 届け出るのは施工業者ではなく、計画を決める側
- 面積の判断より前に、工場跡かどうかを確かめる
「3,000平方メートル未満だから届出は要らない」。この判断が、しばしば外れます。
基準がもう一つあるからです。過去に有害物質を使う施設があった土地では、900平方メートルで届出が要ります。そして過去にあったかどうかは、土地を見ても分かりません。
この記事では、面積の要件と、その手前で確かめるべきことを整理します。
届出は、一つではない
まず整理します。土壌汚染対策法の形質変更に関する規律は、その土地が区域に指定されているかどうかで分かれます。
| 土地の状態 | 扱い |
|---|---|
| 区域の指定なし | 一定規模以上なら届出(法4条) |
| 形質変更時要届出区域 | 規模にかかわらず届出(法12条) |
| 要措置区域 | 原則として形質の変更ができない(法9条) |
ふだん出会うのは一つ目です。二つ目と三つ目は、すでに調査が行われて区域が指定されている土地なので、台帳を見れば分かります。区域の種類と制限の違いは土壌汚染対策法に整理があります。
区域外の届出は、面積で決まる
指定のない土地で、一定規模以上の形質変更をするときは、着手する日の30日前までに届け出ます。
ふつうの土地は3,000平方メートル以上。ここまでは知られています。
しかし水質汚濁防止法上の有害物質使用特定施設がある(あった)工場・事業場の土地は、900平方メートル以上です。三分の一以下の面積で届出が要ります。
過去に工場だった土地を宅地に造成する。よくある場面ですが、「3,000平方メートル未満だから」という判断は、ここで外れます。
有害物質使用特定施設が何を指すかは水質汚濁防止法にまとめてあります。
面積の数え方
数えるのは、形質を変更する部分の面積です。敷地全体ではありません。
ただし工区を分けても、一連の工事とみられれば全体で判断されることがあります。「基準を下回るように分ければよい」という発想は通りません。
境目に当たりそうなときは、図面を持って窓口で確かめるのが確実です。判断が分かれる余地があるものを、自分の側だけで決めないことです。
届出が要らない場合
一定規模を超えていても、外れるものがあります。
| 外れるもの | 条件 |
|---|---|
| 盛土だけ | 掘削を伴わないもの |
| 農業 | 通常行われる行為で、土壌を搬出しないもの |
| 林業 | 作業路網の整備で、土壌を搬出しないもの |
| 鉱山関係の土地 | 鉱山保安法の規律が及ぶもの |
| 非常災害の応急措置 | 事後の届出になる |
このほか、掘削の深さが浅くとどまる「軽易な行為」を対象から外す扱いもあります。ただし条件が細かく、深さだけで決まるものではありません。該当しそうなときは窓口で確かめます。
造成の計画を立てるとき、盛土だけで済ませるか、掘るかで手続が変わります。
ただし盛土そのものには別の規律があります。土壌汚染の届出が要らないことと、盛土をしてよいことは別です。
誰が届け出るのか
ここも取り違えが起きます。届け出るのは「形質の変更をしようとする者」です。工事を請け負った業者ではありません。
行政の運用では、これを「その施行に関する計画の内容を決定する者」と説明しています。土地の所有者と開発業者なら開発業者。発注者と受注者なら、一般には発注者です。
着工の直前になって、誰も届け出ていなかったことが分かる。この形の事故が起きます。
請負業者は施工の内容を決めているだけで、何を、どこに、どれだけ造るかを決めているのは発注者側です。届出の名義もそちらになります。
契約の段階で、届出を誰の名義で、いつまでに出すのかを決めておくことです。
届出書に添えるもの
届出は一枚では済みません。図面と一緒に、いくつもの書類を添えます。
| 添えるもの | 中身 |
|---|---|
| 位置図・平面図・断面図 | どこを、どの深さまで変更するか |
| 公図・土地一覧表 | 対象の筆を特定する |
| 土地所有者の所在を明らかにする書面 | 命令の宛先になるため |
| 土地利用の履歴に関する書面 | 過去に何に使われていたか |
| 工程表 | 着手日と期間 |
様式も呼び方も自治体で違うので、出す先の窓口で最新のものを確かめてください。
注目すべきは「土地利用の履歴」を書かせる欄があることです。届出をする側が、過去の用途を自分で調べて書きます。
そして調査命令が出る場合、宛先は届出をした者ではなく土地の所有者等です。所有者の所在を明らかにする書面を添えさせるのは、そのためです。
買主が届け出て、命令は売主に届く。あるいは決済が済んでいれば、自分に届く。取引の順序によって、誰が負うかが変わります。
面積の前に、確かめること
ここまでの判断は、すべて「その土地が工場跡かどうか」に依存しています。
900平方メートルの基準が効くかどうか。それを決めるのは、過去に有害物質使用特定施設があったかどうかです。現況が更地でも、駐車場でも、田んぼでも、過去は分かりません。
調べる方法は、この連載で書いてきたとおりです。旧土地台帳で所有者が法人に変わった年を拾い、旧住宅地図で屋号を読み、航空写真で建物の形を見て、行政庁に届出の記録を照会する。旧土地台帳の読み方から順に辿れます。
いつ調べ始めるか
30日前では遅すぎます。
届出の期限は着手の30日前ですが、そこから調べ始めると間に合いません。法務局の簿冊、図書館の旧版、行政庁への照会。どれも日数がかかります。
そして調べた結果、900平方メートルの基準に当たると分かれば、届出だけでなく調査そのものが必要になります。土を採って分析する段階に進むなら、工程はさらに延びます。
用地を取得する検討の段階、遅くとも設計に入る前に地歴を押さえておく。それが工程を守る唯一の方法です。法定の調査と自主的な調査の違いは指定調査機関でなければできない調査、そうでない調査にあります。
- 区域の指定があるかを台帳で確かめた
- 形質を変更する部分の面積を出した
- 過去に有害物質使用特定施設がなかったかを調べた
- 900平方メートルの基準に当たらないか検討した
- 盛土だけか、掘削を伴うかを整理した
- 工区を分けている場合、一連の工事とみられないか確かめた
- 誰の名義で届け出るかを、契約の段階で決めた
- 土地利用の履歴を書ける材料を用意した
- 着手の30日前に間に合う工程を組んだ
- 判断が微妙なものは窓口で確かめた
まとめ
- 形質変更の規律は、区域外(法4条)・形質変更時要届出区域(法12条)・要措置区域(法9条・原則禁止)で分かれる
- 区域外の届出は着手の30日前まで。面積は3,000平方メートル、工場跡は900平方メートル
- 盛土だけなら届出は要らない。農業・林業・鉱山・非常災害にも例外がある
- 届け出るのは施工業者ではなく、施行の計画の内容を決定する者。一般には発注者側
- 届出書には土地利用の履歴を書く欄があり、調査命令の宛先は土地の所有者等になる
- 900平方メートルの基準が効くかどうかは、過去に有害物質使用特定施設があったかで決まる
- 30日前から調べ始めても間に合わない。用地の検討段階で地歴を押さえる
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