旧土地台帳の読み方 ── 明治期からの所有者と地目を追う

この記事の要点
  • 登記記録は昭和三十年代で途切れる。その手前を見るのが旧土地台帳
  • オンラインでは取れない。管轄の法務局の窓口だけ
  • 読むのは所有者の遍歴と、地目が変わった年
  • 分かるのは所有者であって、使用者ではない

「登記を全部取ったので、この土地の履歴は押さえました」──そうとは限りません。

登記記録が今の形になったのは、多くの土地で昭和三十年代です。それより前の所有者と地目は、別の帳簿に残っています。旧土地台帳です。

この記事では、その一枚をどう読み、地歴調査で何を取り出すかを整理します。

旧土地台帳とは何か

出自が登記簿とは違います。旧土地台帳は課税のための帳簿でした。

明治6年の地租改正条例に始まり、明治22年に地券の制度が廃されたあと、土地台帳の制度が置かれました。誰がどれだけの土地を持ち、いくらの地租を負うか。それを土地ごとに記録するのが目的です。所管は税務署でした。

それが登記所(法務局)に移ったのは昭和25年、「土地台帳法等の一部を改正する法律」(昭和25年法律第227号)によります。固定資産税が市町村の税になり、国の税務署が土地の帳簿を持つ理由がなくなったためです。

さらに昭和35年、「不動産登記法の一部を改正する等の法律」(昭和35年法律第14号)で土地台帳と家屋台帳は廃止され、記載は登記簿に統合されました。役目を終えた台帳は閉鎖され、いまも法務局に残っています。

一元化は、全国いっせいではない

昭和35年に法律が変わった日をもって、全国の台帳が一斉に閉じたわけではありません。

統合の作業は、登記所ごとに期日を定めて、順に行われました。早い庁は昭和30年代の半ば、遅い庁は昭和50年代までかかっています。

熊本県内でも、本局と各支局で期日が違います。「その土地の台帳が、いつまで使われていたか」は管轄ごとに確かめる必要があります。調査対象の年代が一元化の前後にまたがるときは、ここを外すと年表がずれます。正確な期日は管轄の法務局に確認してください。

どこで見られるか

その土地を管轄する法務局の窓口です。それ以外の方法がありません。

登記事項証明書は、オンラインで全国どこからでも取れます。しかし旧土地台帳は、閉鎖された簿冊そのものが管轄の庁に置かれている資料です。

資料 取得の方法
登記事項証明書 オンライン・郵送・全国どの庁の窓口でも
旧土地台帳 管轄の法務局の窓口
ブック式の閉鎖登記簿 管轄の法務局。窓口または郵送
旧住宅地図 その地域の図書館

閲覧の手数料や、写し・撮影の扱いは庁によって運用が違います。行く前に管轄局に確認してください。

紙の閉鎖登記簿のほうは、地番と年代が特定できていれば郵送でも謄本を請求できます。ただしどの地番のどの年代を見るかが、行く前には決まらないのが地歴調査です。結局は簿冊を繰りに窓口へ行くことになります。詳しくは閉鎖登記簿で分かることに整理があります。

地番から、管轄を先に確かめる

市町村の境と法務局の管轄は一致しません。合併で市の名前が変わっていても、管轄が動いていないことがあります。

違う庁へ行くと、そもそも簿冊がありません。一日が空振りになります。地番が分かった時点で、管轄を先に押さえておくことです。

一枚に何が書いてあるか

様式は時期によって差がありますが、読む順序は変わりません。上に土地そのもの、下に人と異動が並びます。

そこから読めること
地番 対象の同一性。分筆・合筆で枝番が動く
地目 その時期の土地の使われ方
反別 面積。ただし改測前の数字
地価・地租
(のち賃貸価格・等級)
課税上の評価。土地の格が読める
登記年月日 出来事が起きた年
事故 異動の原因(売買、相続、分筆、地目変換など)
住所・氏名 所有者。法人名が入ることがある
質権・地上権 他人の権利。事業用地の手がかりになる

地歴調査で使うのは、このうち地目・登記年月日・事故・氏名の四つです。残りは背景として読みます。

反別 ── 尺貫法の書き方

面積は尺貫法で書かれています。しかも地目によって単位が違います。

田・畑・山林・原野は町・反・畝・歩。30歩が1畝、10畝が1反、10反が1町です。宅地は坪・合・勺。1歩と1坪は同じ広さで、約3.3平方メートルです。

表記が独特で、横棒の上下に分けて書かれます。田畑なら横棒の上が反、下が畝と歩。宅地なら上が坪、下が合と勺です。分数と読み違えないことです。

元号 ── 年表に直す

年は元号で入っています。地歴調査は「何年に何が起きたか」を一本の年表にする仕事なので、読み取った時点で西暦に直しておきます。

航空写真は撮影年、住宅地図は発行年、行政の届出は受理年。出所の違う資料を同じ物差しに乗せないと、前後関係が判断できません。

所有者の移り変わり

ここが、この資料でいちばん値打ちのある部分です。

個人から法人に変わる年

個人名が代々続いたあとに、法人名が現れる。その年がその土地が事業の用に転じた可能性のある時点です。

そこから先は、航空写真と旧住宅地図で同じ年代を当たります。台帳が「いつ」を教え、写真と地図が「何が建っていたか」を教えます。

写真の集め方と見るべきものは、航空写真で土地の履歴を読むに整理があります。

屋号に業種が出ている場合

古い法人名は、業種がそのまま名前に入っていることが珍しくありません。鉄工、染工、化学、燃料、運輸。社名そのものが、次に何を調べるべきかを示します。

社名から、汚染の有無を決めない

「この社名だから汚染がある」とは書けません。台帳から分かるのは所有者の名称であって、そこで何が使われていたかではありません。

書けるのは「その年代に事業用に転じた可能性があるので、次にこの資料を当たった」という道筋までです。フェーズⅠは資料調査であり、汚染の有無を証明するものではありません。

分筆と合筆

敷地が組み替えられた履歴も残ります。まとめられた年は用地が広げられた年であり、分けられた年は処分か区画整理の年です。

枝番を追わないと、いま調べている地番が過去のどの範囲にあたるのか分からなくなります。親番までさかのぼって、範囲を確定してから読むことです。

地目の変換が示すもの

地目が田・畑から宅地や雑種地に変わった年は、造成が行われた年に近いことが多いものです。

地歴調査で気にするのは、その前後です。造成のときにどこから土が入ったか。埋め立てなら、何で埋めたか。地目の変換年は、その問いを立てる場所を教えてくれます。

雑種地は特に含みが広く、資材置場から駐車場、工場の付属地まで入ります。雑種地への変換が出てきたら、住宅地図でその年代の使われ方を確かめます。

変換の年をどう解釈するかは、地目の変更時期が示すもので詳しく扱っています。

農地からの転用であれば、農地転用の手続が伴っているはずで、市町村に記録が残っている場合があります。開発行為を伴うなら開発登録簿にも当たります。

台帳で分からないこと

限界を先に知っておくほうが、報告書は正確になります。

第一に、分かるのは所有者であって、使用者ではありません。土地を借りて工場を営んでいた場合、台帳には貸主の名前しか出ません。これは旧土地台帳に限った話ではなく、登記記録そのものの限界です。

第二に、反別は改測前の数字で、現況の地積とは合いません。面積の議論には使えません。

「記載がない」は「なかった」ではない

台帳に何も書かれていないことと、そこで何も起きていないことは違います。

簿冊が滅失している、該当の丁が失われている、そもそも記載の対象でなかった。理由はいくつもあります。

報告書には、「記載がなかった」と、確認した範囲を添えて書きます。「なかった」と書いてはいけません。この区別は行政庁への照会でも同じで、「記録なし」と「保存年限経過」は意味が違います。

調べた結果を、どう残すか

読み取ったものは、その場で年表にします。年(西暦)・所有者・地目・事故の四列で十分です。

そして一行ごとに出所を添えます。どの局の、どの地番の、何年の記載か。後から誰かが同じ資料に当たれるようにしておくのが、資料調査の書面としての要件です。

報告書の考察は三つの層で組みます。航空写真と住宅地図で新しい年代を、旧土地台帳と閉鎖登記簿で古い年代を、行政庁への照会で裏を取る。旧土地台帳が受け持つのは二層目です。

建物側の履歴を追うときは、滅失した建物の記録も同じ窓口にあります。現況と登記の関係については表示登記を、有害物質を使う施設の届出については水質汚濁防止法を併せて確かめます。取引の場面で必要になる調査の範囲は、エンジニアリングレポートに整理があります。

旧土地台帳を読むときの確認
  • 地番から管轄の法務局を確かめた
  • 親番までさかのぼって、対象の範囲を確定した
  • 閉鎖登記簿と旧土地台帳の両方を見た
  • 異動の年をすべて書き出し、西暦に直した
  • 地目の変換年を拾った
  • 個人名から法人名に変わった年を特定した
  • 反別を面積の根拠に使っていない
  • 読めなかった箇所を「読めなかった」と記録した

まとめ

  • 旧土地台帳は課税の帳簿として始まり、昭和25年に登記所へ移され、昭和35年の改正で登記簿に統合されて閉鎖された
  • 統合の期日は登記所ごとに違うので、管轄ごとに確かめる
  • オンラインでは取れない。管轄の法務局の窓口でしか見られない
  • 読むのは地目・登記年月日・事故・氏名の四つ。所有者が法人に変わった年と、地目が変わった年が手がかりになる
  • 分かるのは所有者であって使用者ではなく、記載がないことは「なかった」ことを意味しない
土地の地歴調査、お引き受けしています。

熊本県内の土地の地歴調査(土壌汚染フェーズⅠ)。法務局と市町村の窓口でしか確認できない資料を、現地で集めます。株式会社地央(熊本市)が承っています。

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