工場や作業場だった土地 ── 業種が分かれば、調べる物質が決まる
- 跡地であることを示すのは屋号と業種。地目や登記の商号からは分からない
- 住宅地図と登記記録が同じ年に別のことを言っていることがある
- 業種が分かれば調べる物質が決まる。業種が分からないまま項目を広げない
- 建物が消えても、盛土や埋設物として残ることがある
工場の跡地と聞くと、まず有害物質の種類を思い浮かべる方が多いと思います。
ただ、実務でつまずくのはその手前です。そこが工場だったこと自体が、資料からすぐには分からない。登記記録に載るのは所有者であって、使っていた者ではありません。屋号と業種が載るのは旧住宅地図だけで、その住宅地図も、登記と食い違うことがあります。
この記事では、工場や作業場だった土地について、跡地であることをどう突き止めるか、業種が分かった先で何を絞るかを整理します。
跡地であることは、資料のどこに残るか
地目は役に立ちません。工場が建っていても地目は宅地または雑種地で、住宅と区別がつきません。
登記記録も、そのままでは足りません。ここに残るのは所有者であって、その土地で何を営んでいたかではないからです。土地を貸し、借りた者が工場を建てて操業していた場合、登記記録には所有者の名前しか出てきません。
建物の登記記録には種類の欄があり、「工場」「倉庫」と記載されていることがあります。これは手がかりになりますが、建物が解体されて滅失の登記が入っていれば、閉鎖された記録まで遡らなければ見えません。
結局、業種にたどり着けるのは旧住宅地図です。屋号が載り、業種がそこから読めるからです。
登記と住宅地図が食い違うとき
東区の託麻の一帯に、昭和五十年前後の住宅地図と航空写真では解体を業とする工場が写っているのに、同じ年の登記記録には商業施設の名が記されている区画があります。
どちらかが誤りとは限りません。所有者と使用者が別だった、看板が変わっても登記が動いていない、建物と土地で名義が違う。理由はいくつも考えられます。
こうした場合、業種の特定まで行き着かないことがあります。解体業といっても、金属を扱うのか木材を扱うのかで、調べるべき物質は変わります。
周辺の資料から絞る方法はあります。道路の向かいに材木を扱う店が並んでいれば、木材の解体だった可能性が高い、というように。ただしそれは推定であって、確認ではありません。報告書には、住宅地図にこう載っていた、聞き取りではここまでしか分からなかった、という順に事実を並べ、推定は推定と分かる形で書くことになります。
業種から、調べる物質を絞る
業種が分かれば、調べる範囲は一気に狭まります。
| 業種 | 想定される設備 | 主に想定する物質 |
|---|---|---|
| 印刷 | 洗浄槽・溶剤保管 | 有機塩素系溶剤 |
| 金属加工・めっき | めっき槽・排水処理 | 重金属類・六価クロム |
| クリーニング | ドライ機・貯留槽 | テトラクロロエチレン等 |
| 給油・整備 | 地下タンク・洗車設備 | 油分・鉛 |
| 食品製造 | 排水設備・焼却炉 | 特定有害物質に当たりにくい |
逆から言えば、業種が分からないまま、全項目を並べて分析するのは筋がよくありません。費用が膨らむだけでなく、報告書を読む側にも、何を根拠に選んだのかが伝わらないからです。
敷地の中でも、設備があった場所は限られます。焼却炉があった一角だけ別の検体として採る、給油設備の周辺だけ深さを変える。資料調査は、採取の位置と深さを決めるためにあると考えると、どこまで調べるかの線が引きやすくなります。
「工場」に見えて、該当しない業種
住宅地図に工場と載っていても、有害物質を扱う施設とは限りません。
中央区の水前寺には、昭和三十年代から食品を扱う会社があり、昭和五十年代に住宅と駐車場へ変わった区画があります。この場合、水質汚濁防止法の特定施設に当たる設備の有無を確かめたうえで、該当しなければ、そのことを理由とともに書く。それで足ります。
跡地であることと、有害物質を扱っていたことは別です。業種を確かめずに調査へ進むと、何のための分析かが説明できなくなります。
報告書に書くべきなのは、どの資料に何と載っていたか、その業種でどの設備が想定されるか、そこから何を選んだか、という筋道です。
建物が消えたあとに、何が残るか
解体されて更地になっていても、土の中に残るものがあります。
県外の大きな工場跡地で、造成の際に、工場が使っていた鋳砂が盛土の材料として敷地内で流用されていた例がありました。地表から一定の深さまでは再生材、その下に鋳砂の層があり、油分を含んだ黒い土が挟まっていた、という状態です。
この場合、汚染源は操業そのものではなく、造成のときに持ち込まれた材料です。地表を採取しただけでは出てきません。試掘で層を確かめ、地下水位との関係を見て、はじめて分かります。
盛土は、資料調査だけでは見えないものの代表です。造成の年代を航空写真で押さえたうえで、当時の地盤面が今とどれだけ違うかを、周辺の擁壁や隣地との段差、聞き取りから推し量ることになります。
前の調査があるとき
過去に別の会社が調査していて、報告書が残っていることがあります。
先ほどの工場跡地でも、数年前の調査では汚染の可能性なしと整理されていました。それでも試掘で基準を超える結果が出ています。前の調査が誤っていたとは限らず、調べた範囲と深さが違えば、結論は変わります。
ですから前の報告書を見るときは、結論より先に、どこを、どの深さまで、何を対象に調べたのかを読みます。範囲が重なっていない部分は、調べられていないのと同じです。
- 旧住宅地図で、屋号と業種を年代ごとに拾った
- 登記記録の所有者と、住宅地図の使用者が一致するか照らした
- 建物の閉鎖された登記記録まで遡り、種類の欄を見た
- 業種から想定される設備を挙げ、その位置を敷地図の上に落とした
- 特定施設の届出の有無を、市町村の窓口へ照会した
- 造成の年代と、当時の地盤面の高さを確かめた
- 前の調査があるときは、結論より先に範囲と深さを読んだ
- 業種が分からなかった場合、そのことを報告書に書いた
まとめ
- 跡地であることは地目や登記の所有者からは分からない。屋号と業種は旧住宅地図に残る
- 同じ年の住宅地図と登記記録が食い違うことがある。所有者と使用者が別だった場合など
- 業種が分かれば調べる物質と採取の位置が決まる。分からないまま項目を広げない
- 工場と載っていても、有害物質を扱う施設とは限らない
- 造成で持ち込まれた盛土材そのものが汚染源になることがある
- 前の調査は、結論ではなく調べた範囲と深さを読む
