国土の刷新 ── 人口が半分になる国で、土地をどう使い、誰が管理するか
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新・国土形成計画
次世代へ希望を繋ぐ国土の刷新
国土の刷新 ── 人口が半分になる国で、土地をどう使い、誰が管理するか
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この記事の要点
- 2050年の総人口は1970年頃と同じ約1億470万人。しかし高齢化率は7.1%から37.1%へと五倍以上になる
- 減少は全国一様ではない。人口1万人未満の市町村は、2050年に2000年の三分の一近くまで縮む
- そこで出てきたのが「国土の管理構想」。どこを守り、どこを最小限の手入れにとどめるかを、地域が自分で地図に描く仕組みである
国の計画書を読むとき、いちばん実務に効くのは理念の部分ではありません。「その計画は、どの数字を前提に書かれているのか」のほうです。
新・国土形成計画の前提は、はっきりしています。人口が半分になる。しかもその減り方は地域によってまったく違う。すべての土地を、これまでと同じ水準で維持することはできない。
この記事は、その前提の数字を確かめたうえで、「では土地をどう使い、誰が管理するのか」という問いに、国の計画がどう答えているかを追ったものです。
- 八百年の人口曲線の、右端にいる
- 2050年は1970年に戻る。ただし、中身は別物
- 減少は全国一様ではない ── 小さい自治体から先に来る
- 三方向からの圧力を、一つの計画で受け止める
- シームレスな拠点連結型国土 ── 二層でつなぐ
- 4つの重点テーマ ── 並列ではなく、支える関係
- DXとGXを両輪に ── 壊れる前に手を入れる
- グリーン国土の創造 ── 自然資本を使う側に回る
- デジタル田園都市の先行事例 ── デジタルは目的ではない
- 関係人口 ── 線を引くのではなく、段を用意する
- 国土の管理構想 ── どこを守り、どこを手放すか
- 2033年の国土利用の目標 ── 三分の二は森林である
- 計画を実現するための、四つの戦略的視点
- 結び ── 次世代に引き継ぐ国土へ
- 参考文献・出典
八百年の人口曲線の、右端にいる
鎌倉幕府が成立した1185年ごろ、日本の人口はおよそ700万人でした。そこから緩やかに増え、明治維新の1868年で3,330万人。ここから傾きが急になります。
2008年、1億2,808万人でピーク。そして2120年には中位推計で4,973万人。ピークから百年余りで、明治維新期を少し上回る程度の水準まで戻る見通しです。
この曲線の形が大事です。増えるときは百五十年かけて登り、減るときは百年で降りる。登った速度とほぼ同じ速さで降りるということは、登る過程でつくったものを、同じ速さで畳んでいく必要があるということでもあります。
人口推計は数年ごとに改定されます。計画書や議会資料で数値を引く場合は、社会保障・人口問題研究所の最新版をご確認ください。
2050年は1970年に戻る。ただし、中身は別物
年少 2,515万人(24.0%)
年少 1,041万人(9.9%)
ここが、この計画の出発点だと思います。
1970年の総人口は1億467万人。2050年の推計は1億469万人。数字としてはほぼ同じです。しかし内訳を見ると、まったく違うものが現れます。
1970年。高齢人口(65歳以上)739万人で7.1%。生産年齢人口7,212万人で68.9%。年少人口2,515万人で24.0%。きれいなピラミッド型です。
2050年。高齢人口3,887万人で37.1%。生産年齢人口5,540万人で52.9%。年少人口1,041万人で9.9%。上が重く、下が細い逆三角形です。
総人口が同じでも、支える人と支えられる人の比率がまるで違う。1970年の社会資本を、2050年の人口構成で維持することはできない。この一点が、以降のすべての施策の理由になっています。
減少は全国一様ではない ── 小さい自治体から先に来る
この帯の中に収まる
約半数で人口が50%以上減少する
全国平均で語ると見落とすものがあります。市区町村を人口規模別に分けて、2000年を100として推移を追うと、線がはっきり分かれます。
人口10万人以上の市は、2050年でもほぼ100を保ちます。一方人口1万人未満の市町村は、2050年に35前後。三分の一近くまで縮むという推計です。
面で見ると、2050年には有人メッシュの約2割が無居住化し、約半数で人口が50%以上減少するとされています。
実務の感覚に引き直すと、これは「同じ県の中でも、隣の市と自分の町とでは、二十年後の姿がまったく違う」という話です。県の平均値で自分の町の計画を立てると、必ず見誤ります。
元資料の凡例は同じ人口区分が重複して記載されていたため、本記事では両端の区分のみを明示し、中間の規模層は帯で示しています。原典は国土交通省「国土の長期展望」です。
三方向からの圧力を、一つの計画で受け止める
安全・安心を脅かすリスク・未曾有の人口減少、少子高齢化
・巨大災害リスクの切迫
(水災害、地震ほか)
・気候危機の深刻化
働き方の変化・テレワークの進展
・場所に縛られない働き方
日本の立ち位置・激化する国際競争(DX、GX)
・エネルギー・食料の海外依存リスク
新たな国土形成計画が置かれている状況は、三つに整理されています。
地域の持続性、安全・安心を脅かすリスク。未曾有の人口減少と少子高齢化。巨大災害リスクの切迫。気候危機の深刻化。
暮らし方・働き方の変化。テレワークの進展と、場所に縛られない働き方。これは唯一、追い風として書かれている項目です。
激動する世界の中での日本の立ち位置。DXとGXをめぐる国際競争の激化。エネルギーと食料の海外依存リスク。
三方向から同時に圧力がかかっている。「刷新」という強い言葉が使われているのは、既存の枠組みの延長では受け止めきれないという認識があるからだと読めます。
シームレスな拠点連結型国土 ── 二層でつなぐ
地方と東京の win-win の関係構築へ
「コンパクト+ネットワーク」の深化・発展
時間や場所の制約を克服
どちらか一方ではなく、両方を重ねて「つながり続ける」状態をつくる、という設計である。
その論点は別稿にまとめた。
目指す国土構造は「シームレスな拠点連結型国土」です。三つの層で説明されています。
基本方針。東京一極集中の是正。地方と東京の win-win の関係を構築する。
構造。各地域の圏域で拠点を集約し、ネットワーク化する。これまでの「コンパクト+ネットワーク」の深化・発展という位置づけです。
実現手段。デジタルとリアルの融合により、時間や場所の制約を克服する。
要点は、交通(リアル)とデジタル(通信)を二層に重ねるという発想です。どちらか一方に賭けるのではなく、両方を使って「つながり続ける」状態をつくる。
ただしこの構想には反論もあります。日本学術会議は「かえって東京への集中が進むのではないか」と指摘しました。その論点は第三次国土形成計画を、批判的に読むにまとめています。
4つの重点テーマ ── 並列ではなく、支える関係
国土づくり巨大災害、気候危機、緊迫化する国際情勢に対応する、しなやかで強い国土
活力ある国土づくり地域への誇りと愛着に根差した地域価値の向上
国土づくり世界に誇る美しい自然と多彩な文化を育む。森の国、海の国、文化の国
高質化安全・安心、暮らしや経済を支える
国土の刷新は、四つの重点テーマを柱として推進するとされています。
- 安全・安心の国土づくり。巨大災害、気候危機、緊迫化する国際情勢に対応する、しなやかで強い国土
- デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり。地域への誇りと愛着に根差した地域価値の向上
- 個性豊かな国土づくり。世界に誇る美しい自然と多彩な文化を育む、森の国・海の国・文化の国
- 国土基盤の高質化。安全・安心、暮らしや経済を支える
四つは並列に見えますが、実際には下の二つ(個性と基盤)が、上の二つ(安全とデジタル)を支える関係にあります。インフラが持たなければ安全もデジタルも成り立たない、というのが順序としては正しい。
DXとGXを両輪に ── 壊れる前に手を入れる

費用の平準化にもつながる
国土基盤の高質化は「ストック効果の最大化」という言葉で説明されています。挙げられている柱は四つ。
リダンダンシーの確保。リニア中央新幹線と東海道新幹線による、大動脈の二重化。
戦略的メンテナンス。予防保全型メンテナンスへの本格転換と、ドローン点検などの新技術活用。
官民連携。PPP/PFI、空港コンセッションを軸に、民の力を最大限に活用する。具体的な仕組みは官民連携とソーシャル・キャピタルで扱いました。
デジタル活用。自動運転の実証、ヒトを支援するAIターミナルなど。
二つめが実務的にはいちばん重い。壊れてから直す(事後保全)から、壊れる前に手を入れる(予防保全)への転換は、技術の話であると同時に、予算の組み方を変える話です。一度に大きく出ていく更新費を、平準化して先送りしない形に組み替える。それができる自治体と、できない自治体で差がつきます。
グリーン国土の創造 ── 自然資本を使う側に回る
森・里・まち・川・海のつながりを確保し、グリーンインフラによる複合的な地域課題解決を推進
ハイブリッドダムの全国展開

二つの方向が示されています。
健全な生態系の保全・再生。広域的な生態系ネットワークの形成(30by30の実現)。森・里・まち・川・海のつながりを確保し、グリーンインフラによる複合的な地域課題解決を推進する。
カーボンニュートラルの実現。地域共生型再エネ導入の促進、森林資源の循環利用、ハイブリッドダムの全国展開。
「30by30」は、2030年までに陸と海の30%以上を保全する国際目標を指します。数字だけ見ると遠い話に思えますが、市町村の緑地保全や生物多様性地域戦略が、この目標に接続する形で位置づけ直されつつあるという点は押さえておく価値があります。
「地域共生型」という限定がついているのも読みどころです。再エネであれば何でもよい、という段階はすでに終わっている。
デジタル田園都市の先行事例 ── デジタルは目的ではない
アプリをつくることではなく、いくつもの窓口を一つにまとめることが要点になる。
先行事例として三つ挙げられています。
会津若松市。デジタル情報プラットフォーム「会津若松+」(都市OS)。食、観光、ヘルスケア等のサービスを実装し、地域内外の関係者と連携する。
AIオンデマンド交通。スマホアプリを活用し、地域交通を他の生活サービスと一体的に提供する。定額制・乗り放題で利便性を高める。
地域エネルギー会社。エネルギーの地産地消を回す仕組みをつくり、災害時には防災力の強化にも寄与する。
三つに共通するのは、デジタルが目的ではなく「サービスを束ねる手段」として使われていることです。アプリをつくることが仕事なのではなく、ばらばらだったいくつもの窓口を一つにまとめることが仕事になっている。交通単体の話は地域公共交通のリ・デザインで詳しく扱いました。
関係人口 ── 線を引くのではなく、段を用意する
都市と地方の新しい関係を、「関係人口」という軸で組み立てるという方針です。施策としては三つ。二地域居住の促進、関係人口の拡大・深化、子育てしやすい環境整備。
考え方の芯は、関わりの濃さが連続しているという認識です。観光 → 頻繁な訪問者 → 二地域居住 → 移住。「住民か、住民でないか」で線を引くのではなく、途中に段を用意する。
例として挙げられているのが、山梨県小菅村の「1/2村民」登録制度です。アプリを通じて村外の人と関わりを持ち続ける仕組みで、住民票を移さないまま、村の一員として関わる道をひらいています。
移住政策が行き詰まりやすいのは、ゴールを「移住」の一点に置いてしまうからだと思います。手前の段を用意すれば、関わる人はもっと多く見つかる。
国土の管理構想 ── どこを守り、どこを手放すか
この計画でいちばん実務に近いのが、ここだと思います。
構想とは何か。都道府県・市町村・地域(集落等)の各レベルで、目指すべき将来像と土地の管理の在り方を示す構想を策定する。
ねらいは何か。地図上に見える化(管理構想図)することで、地域の主体的な土地利用計画を促進する。
長野市中条地区の事例では、地区内の土地が三つに区分されています。
- 積極的に維持する ── 貴重な棚田
- 手のかからない方法で管理する ── 将来の活用に備えた農地
- 必要最小限の管理にとどめる ── 獣害防止のため管理が必要な森林
これは、率直に言えば「あきらめる場所を決める」作業です。すべてを同じ水準で維持することはもうできない、という前提に立ったうえで、どこに労力を集中させるかを地域が自分で決めて地図に描く。
難しいのは技術ではなく合意です。自分の土地が「必要最小限の管理」に色分けされることを、所有者がどう受け止めるか。この作業を進めるには、合意形成の場をどう設計するかが先に要ります。
2033年の国土利用の目標 ── 三分の二は森林である
この比率をどう保つかが、土地利用計画の出発点になる。
優良農地の確保
向けた森林資源の循環利用
形成促進
2033年(令和15年)に向けて、国土の利用区分ごとの規模の目標が設定されています。
森林66.4%、農地11.0%、その他9.1%、宅地5.2%、道路3.9%、水面・河川・水路3.6%。
この比率を見ると、日本の土地利用の議論がどこに集中しがちかがよく分かります。実務で扱う場面がいちばん多い宅地は、国土全体のわずか5.2%。国土の三分の二は森林です。
目標を支える方針は三つ。食料の安定供給に不可欠な優良農地の確保。カーボンニュートラル実現に向けた森林資源の循環利用。健全な生態系ネットワークの形成促進。
いずれも「増やす」ではなく「確保する」「循環させる」という語で書かれています。拡大の時代の計画ではない、ということが、この動詞の選び方に出ています。
端数処理のため合計は100%になりません。目標値は国土利用計画の改定により変わります。
計画を実現するための、四つの戦略的視点
国土の刷新という言葉は、そこまで含めて読むべきものである。
最後に、実現手段として四つの視点が挙げられています。
- 民の力を最大限発揮する官民連携
- デジタルの徹底活用
- 生活者・利用者の利便の最適化
- 縦割りの打破(分野の垣根を越える横串の発想)
四つとも、計画書に書けば済む話ではありません。誰がその役割を引き受けるかを、地域の側で決めておく必要がある。
とくに四つめが難所です。国土の管理構想は、農地なら農政、森林なら林政、宅地なら都市計画、と担当課が分かれている土地を、一枚の地図の上で扱おうとするものです。横串を通す仕事は、たいてい誰の所管でもない仕事になる。
結び ── 次世代に引き継ぐ国土へ
豊かで希望の持てる国土へ
その問いに、国の計画は一つの答えを出した。
計画が掲げる到達点は「次世代に引き継ぐ、豊かで希望の持てる国土へ」です。
人口が半分になっても、暮らしが成り立つ国土をどう設計するか。その問いに、国の計画は一つの答えを出しました。拠点を集約してネットワークで結び、デジタルで距離を縮め、土地の管理は地域が自分で決めて地図に描く。
ただし、計画が答えを出したこととそれが実現することのあいだには、まだ距離があります。日本学術会議は、証拠に基づく検証が足りないと指摘しました。過去七十年の全総も、掲げた理念どおりにはなりませんでした。
それでも、この計画には過去の計画になかったものが一つあります。「すべては維持できない」と書いてあることです。国土の管理構想は、その前提から出てきました。拡大を前提にした計画には、書きようのなかった発想だと思います。
自分の地域に引き直すときの確認ポイント
- 自分の市町村は人口規模別のどの層にあたるか。県平均ではなく、その層の推計を見ているか
- 2050年の高齢化率を前提に、いまの公共施設・インフラの維持計画が組まれているか
- 予防保全型メンテナンスへの転換が、実際の予算の組み方に反映されているか
- 国土の管理構想(または類する土地利用の区分け)に、地域が着手しているか
- 移住だけでなく、その手前の関わり方を用意する仕組みがあるか
参考文献・出典
本記事は、国土交通省『第三次国土形成計画(全国計画)』(2023年7月閣議決定)、同「国土の長期展望」、国土利用計画(全国計画)、およびデジタル田園都市国家構想関連資料など、公表資料をもとに構成しています。なお元資料には、同一の人口区分が凡例に重複して記載された図表、内容が完全に重複したスライド、および国土交通省のウェブページを画面キャプチャしたスライドが含まれていたため、これらはそのままの形では掲載していません。人口推計、目標値、施策の内容は改定されることがあります。実際の検討にあたっては、必ず原典と最新版をご確認ください。
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