CHIOU / 株式会社地央

エネルギーの面的利用 ── 地域で融通するということ

この記事の要点
  • 面的利用が成り立つ条件は需要の密度と、需要の異なる用途の組み合わせ
  • 災害時に系統から切り離して自立運転できることが、近年の主要な目的になっている
  • 「地域共生」は、地域に何が残るかという問題。発電するだけでは成立しない
  • 最大の課題は誰が長期にわたって担うか

建物ごとに設備を持つのではなく、複数の建物でエネルギーを融通し合う。この考え方を面的利用といいます。

効率が上がる一方で、成立する条件は限られています。どこでもできるわけではありません。

この記事では、仕組みと条件、そして「地域共生」という言葉の中身を整理します。

面的利用とは

方式 内容
地域熱供給 プラントで作った熱を、配管で複数の建物に送る
自営線による電力融通 地区内に自前の配電線を敷き、電力をやりとりする
未利用エネルギーの活用 清掃工場の排熱、下水の熱、河川水の温度差
コージェネレーション 発電の際に生じる熱も併せて使う
なぜ効率が上がるのか

建物ごとに設備を持つと、それぞれがピークに備えた容量を用意することになります。

しかし、すべての建物が同時にピークを迎えるわけではありません。

用途 需要のピーク
事務所 平日の昼間
住宅 朝と夜、休日
商業施設 夕方から夜、休日
ホテル 朝と夜
病院 比較的一定

時間帯の違う用途を組み合わせると、全体としてのピークが平準化されます。

結果として、設備の総容量を小さくできます。これが面的利用の基本的な利点です。

成立する条件

需要の密度がなければ、成り立たない

面的利用には、配管や配線といったインフラの整備が必要です。

この費用は、つなぐ建物の数と、そこで使われる量によって回収されます。

成立しやすい 成立しにくい
建物が密集している 建物がまばら
床面積が大きい 小規模な建物ばかり
用途が混在している 同じ用途に偏っている
同時期に開発される 建て替えの時期がばらばら
需要が将来も続く 人口・事業所が減っていく

地方都市の郊外部や、人口が減少している地域では、成立が難しくなります。

制度や補助があっても、需要の密度という前提は変えられません。

既成市街地での難しさ

新たに開発する地区であれば、計画段階からインフラを組み込めます。

一方、既にある市街地では次の問題が生じます。

  • 道路を掘って配管を敷く必要がある 工事費と、占用の手続き
  • 建物の側の受入設備を、それぞれ改修する必要がある
  • 建て替えの時期が揃わない
  • 参加するかどうかを、所有者ごとに判断する

再開発や区画整理の機会に合わせて導入されることが多いのは、このためです。

災害時の自立

近年、目的の重点が移っている

従来、面的利用の主な目的は効率とコストの削減でした。

近年は、災害時に電力や熱の供給を維持できることが重視されています。

内容
自立運転 系統から切り離して、地区内で電力を供給し続ける
重要施設の維持 庁舎、病院、避難所、上下水道施設
熱の供給 給湯、暖房。避難生活の質に直結する

大規模な停電を経験した地域では、この点が導入の主な動機になっています。

効率だけで評価すると成立しない事業でも、防災上の価値を含めて考えると判断が変わることがあります。

どこまで維持するか

すべてを平常時と同じように動かすのは、設備の規模と費用の面で現実的ではありません。

  • どの施設を、どの水準で維持するか
  • 何時間、何日間を想定するか
  • 燃料の備蓄をどうするか
  • 誰が運転を継続するのか

「災害に強い」という説明だけでは足りません。具体的な想定を決めてください。

関連する制度

制度 内容
都市の低炭素化の促進に関する法律 低炭素まちづくり計画、認定低炭素建築物
都市再生特別措置法 脱炭素に資する都市の再生整備に関する仕組み
地球温暖化対策推進法 地方公共団体実行計画、促進区域
熱供給事業法 一定規模以上の熱供給事業の規律
電気事業法 自営線による供給の扱い

エネルギー側の法律と、まちづくり側の法律の両方が関わります。

どちらか一方の窓口だけで話を進めると、後で手戻りが生じます。

「地域共生」とは何か

地域に何が残るか

再生可能エネルギーの事業をめぐって、各地で紛争が生じてきました。

共通する構図があります。

  • 土地は地域のもの
  • 環境への影響は地域が受ける
  • 収益は域外へ出ていく
  • 雇用も生まれない
  • 事業終了後の設備が残る懸念

この状態では、地域が受け入れる理由がありません。

「地域共生型」という言葉は、この構図を変えることを指しています。

何を還元するか

内容
出資への参加 地元の企業・住民が事業に出資する
収益の還元 地域づくりの財源として拠出する
電力の地産地消 発電した電力を、地域の施設で使う
災害時の供給 避難所への電力供給を協定で定める
雇用 維持管理を地元の事業者が担う
土地の管理 耕作放棄地、荒廃した森林の活用と管理

いずれも、事業計画の段階で決めておく必要があります。

後から「地域貢献します」と言っても、信用されません。

地域新電力

自治体や地元企業が出資して設立する電力会社の形態があります。

期待されること 課題
収益が域内に残る 電力の調達と価格変動のリスク
地域の施設に供給できる 専門人材の確保
地域の再エネを活用できる 経営が安定するまでの体力

電力の市場価格が大きく変動する局面では、経営が厳しくなる例があります。

自治体が関与する場合、リスクの分担と、撤退の条件をあらかじめ整理しておく必要があります。

誰が担うか

長期にわたる主体が要る

面的なエネルギーの仕組みは、数十年にわたって運転し続ける必要があります。

形態 特徴
エネルギー事業者 専門性がある。採算が合わなければ撤退しうる
第三セクター 官民の共同。意思決定に時間がかかることがある
まちづくり会社 地域に根ざす。専門人材と資金力が課題
管理組合等 合意形成の負担が大きい

設備の更新時期に、誰が費用を負担して更新するのか。

この点を決めずに始めると、更新の時期に行き詰まります。

導入の検討では、初期投資だけでなく、更新まで含めた長期の収支を確認してください。

合意形成として

参加するかどうかを、それぞれが判断する

面的利用は、地区内の建物が参加して初めて成立します。

しかし、参加するかどうかは各所有者の判断です。

  • 自前で設備を持つより有利か
  • 途中で抜けられるか
  • 料金はどう決まるか。将来上がらないか
  • 供給が止まったときの責任
  • 建物を売却するとき、次の所有者に引き継がれるか

これらに答えられなければ、参加は得られません。

契約の内容と、長期の見通しを具体的に示す必要があります。

実務での確認

場面 確認すること
導入を検討する 需要の密度と、用途の組み合わせ
同上 更新まで含めた長期の収支
同上 担い手と、撤退の条件
土地・建物を取得する 地域熱供給等への加入義務がないか
同上 料金と、契約の期間・解約の条件
自治体の立場から 関係する法令の窓口を整理する
加入義務が付いている場合がある

地域熱供給が導入されている地区では、その建物が供給を受けることを前提に設計されていることがあります。

個別の設備を持たないため、離脱すると熱源がなくなります。

取引の際は、次を確認してください。

  • 加入の義務や、地区計画等による定めの有無
  • 料金の水準と改定の仕組み
  • 契約の期間と、解約の条件
  • 設備の更新時の費用負担

重要事項説明の対象となりうる事項です。

面的利用に関する確認
  • 需要の密度があるか確認した建物の数、床面積、将来の見通し
  • 用途の組み合わせを確認したピークの時間帯が異なるか
  • 既成市街地の場合、工事の範囲と占用の手続きを確認した
  • 災害時に何を、どの水準で、何日間維持するか決めた
  • 関係する法令と窓口を整理したエネルギー側とまちづくり側
  • 更新まで含めた長期の収支を確認した
  • 担い手と、撤退・引継ぎの条件を決めた
  • (地域共生)地域に何を還元するかを計画に明記した
  • (参加を求める)契約条件と長期の見通しを具体的に示した
  • (取得する側)加入義務・料金・解約条件を確認した

まとめ

  • 面的利用の利点は、ピークの平準化による設備容量の削減。
  • 成立には需要の密度が要る。人口が減る地域では難しい。
  • 近年は、災害時に系統から自立できることが主要な目的になっている。
  • 「地域共生」とは、地域に何が残るかという問題。計画段階で決めておく。
  • 最大の課題は、数十年にわたって誰が担うか。更新の費用まで含めて考える。
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