CHIOU / 株式会社地央

エネルギーマネジメント ── 測ることから始まる

この記事の要点
  • 出発点は測ること。何にどれだけ使っているかが分からなければ減らせない
  • 管理の単位は住戸・建物・工場・地域と階層になっている
  • 需要側で調整する仕組みが広がっている。減らすだけでなく、ずらす
  • 技術より、運用する体制とデータの質が結果を決める

建物の省エネは、設計と設備で決まる部分と、運用で決まる部分があります。

断熱や高効率の設備は、建てるときに決まります。一方、実際にどれだけ使うかは、日々の運用によって変わります。

この記事では、後者を扱う仕組みと、その限界を整理します。

測ることから始まる

分からないものは、減らせない

エネルギーの管理は、使用量を把握することから始まります。

月々の請求書の総額だけでは、対策の打ちようがありません。

分けて把握すること 分かること
用途別 空調、照明、給湯、動力のどれが大きいか
時間別 いつ使っているか。ピークはいつか
場所別 どの区画、どの階が多いか
季節別 年間の変動

計測の仕組みがなければ、この分解ができません。

計測点をどこに設けるかは、建物の設計段階で決まります。後から追加するには工事が必要です。

スマートメーター

電力の使用量を一定の間隔で自動的に計測し、送信する仕組みです。

検針のためだけでなく、使用状況の把握や、需給の調整に使われます。

管理の階層

単位 呼称 対象
住戸 HEMS 家庭内の機器
建物 BEMS ビル全体の空調・照明・受変電
工場 FEMS 生産設備を含む
地域 CEMS 複数の建物・地区をまたぐ

単位が大きくなるほど、融通の余地が生まれます。

一つの建物では使い切れない電力を、隣の建物で使う。時間帯によって需要が違う施設を組み合わせる。

これが面的な利用の考え方につながります。

減らすだけでなく、ずらす

同じ量でも、いつ使うかで価値が違う

電力は、使う瞬間に発電されている必要があります。大量に貯めておくことが難しいためです。

そのため、需要が集中する時間帯に合わせて発電設備を用意する必要がありました。

従来 これから
需要に合わせて発電する 発電に合わせて需要を動かす
ピークに備えて設備を持つ ピークをずらして設備を減らす

太陽光発電が増えると、昼間に電力が余り、夕方に足りなくなるという状況が生じます。

この差を埋めるため、需要側で調整する仕組みが求められるようになりました。

需要側でできること

  • 使う時間をずらす 給湯、蓄熱、充電を余っている時間帯に
  • 蓄電池に貯める 余った時間に充電し、足りない時間に放電する
  • 電気自動車を活用する 車載の電池を建物側で使う
  • 一時的に使用を抑える 空調の設定を緩める、照明を落とす

これらを組み合わせて需給に貢献する仕組みは、制度としても位置づけられつつあります。

DX・AIの活用

用途 内容
需要の予測 気象、曜日、過去の実績から、先の使用量を見込む
制御の最適化 空調・照明を、条件に応じて自動で調整する
異常の検知 設備の不調を、使用量の変化から見つける
機器の保全 故障の予兆を捉え、計画的に整備する
見える化 利用者に使用状況を示し、行動を促す
技術より、データと体制が結果を決める

高度な制御の仕組みを導入しても、期待した効果が出ないことがあります。

よくある原因です。

  • データの質が低い 計測点が足りない、欠測がある、単位が揃っていない
  • 運用する人がいない 設定を見直す担当者が不在
  • 設定が初期のまま 建物の使い方が変わっても更新されない
  • 利用者の不満で機能が切られる 暑い、暗いと言われて手動に戻す
  • 設備そのものが古く、制御に応答しない

導入して終わりにならない体制が要ります。

誰が数値を見て、誰が判断し、誰が設定を変えるのか。この分担を決めずに導入すると、装置が動いているだけの状態になります。

ベンダーへの依存

特定の事業者の仕様に依存すると、更新や拡張が難しくなります。

  • 他社の機器を追加できない
  • データを取り出せない
  • 保守を他社に切り替えられない
  • システムの更新時に、全体を入れ替えることになる

導入の段階で、データの取扱いと相互接続について確認してください。

自治体の立場から

公共施設のエネルギー管理

庁舎、学校、体育館、上下水道施設。自治体は多数の施設を保有しています。

課題 内容
把握 施設ごとの使用量が、部局をまたいで分散している
担当 エネルギーの専門知識を持つ職員が少ない
予算 初期投資と、年度をまたぐ効果の扱い
老朽化 設備の更新時期と、省エネ改修の機会

設備の更新時期は、省エネ化の機会でもあります。

壊れてから交換するのではなく、計画的に更新すれば、性能の向上と組み合わせられます。

実行計画との関係

自らの事務事業に伴う排出は、地方公共団体実行計画(事務事業編)の対象です。

公共施設のエネルギー管理は、この計画の実行そのものになります。

建物の設計段階で決まること

後から変えにくいものを、先に決める
後から変えられるか
断熱性能 難しい。大規模な改修が必要
窓の性能・配置 難しい
建物の向き、形状 変えられない
計測点の位置 工事が必要
電気配線の系統 大がかりになる
設備機器 更新できる
制御の設定 変えられる

上のものほど、設計段階での判断が重要になります。

運用で頑張れる範囲には限りがあります。建物の基本性能が低ければ、どれだけ制御を工夫しても限界があります。

効果の見方

削減率の数字は、前提を確認する

「導入により何パーセント削減」という数値を見るときは、何と比べているかを確認してください。

  • いつと比べているか 前年か、複数年の平均か
  • 気象条件は補正されているか 猛暑・暖冬の影響
  • 建物の使い方は同じか 在館人数、稼働時間の変化
  • 他の対策と混在していないか 機器の更新と同時に行っていないか

前年より暑くなかったから減った、という場合があります。

効果を検証するには、条件を揃えた比較が要ります。

投資の回収

設備の導入には費用がかかります。削減できる費用と、投資額を比べてください。

見込むもの 備考
導入費用 機器、工事、設定
運用費用 保守、通信、クラウド利用料
更新費用 耐用年数経過後
削減できる費用 電気・ガス代。単価の変動を考慮する
補助金 要件と、その後の義務

補助金を前提に導入する場合、補助の要件として求められる報告や、処分の制限を確認してください。

データの扱い

エネルギーの使用データは、生活や事業の状況を示すことがあります。

  • 在室・在宅の有無
  • 生活のリズム
  • 事業所の稼働状況

個人に関わるデータを扱う場合、利用目的の明示と、適切な管理が必要です。

集合住宅や賃貸物件で導入する場合、入居者への説明と同意の取り方を、あらかじめ整理してください。

エネルギー管理の確認
  • 用途別・時間別に使用量を把握できているか確認した
  • 計測点の配置を設計段階で検討した
  • データの取扱いと、相互接続の可否を確認したベンダー依存を避ける
  • 誰が数値を見て、誰が設定を変えるか決めた
  • 建物の基本性能を優先して検討した断熱・窓・形状
  • 設備の更新時期と、省エネ改修の機会を合わせた
  • 効果の検証方法を決めた気象条件の補正
  • 投資と回収を、運用費・更新費まで含めて計算した
  • 補助金の要件と、その後の義務を確認した
  • (個人に関わるデータ)利用目的の明示と同意の方法を整理した

まとめ

  • 出発点は測ること。用途別・時間別に把握できなければ、対策は打てない。
  • 管理の単位は住戸・建物・工場・地域。大きくなるほど融通の余地が生まれる。
  • 減らすだけでなく、使う時間をずらす方向へ。太陽光の増加が背景にある。
  • 技術より、データの質と運用する体制が結果を決める。
  • 建物の基本性能は後から変えにくい。設計段階の判断が最も効く。
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