CHIOU / 株式会社地央

第三次国土形成計画 ── これからの国土をどう描くか

この記事の要点
  • 計画は全国計画と広域地方計画の二層。国土利用計画と一体で策定される
  • 第三次計画は人口減少を前提に、拠点をつなぐ形の国土を描いている
  • 中心にあるのが地域生活圏。市町村の枠を越えて生活機能を確保する考え方
  • 直接の規制はないが、下位の計画と予算の方向を決める

国土形成計画は、日本全体の国土をどうするかを示す最上位の計画です。

ただし、この計画自体が土地の利用を直接規制するわけではありません。その下に連なる計画や施策の方向を決めるものです。

この記事では、計画の構造と、第三次計画が何を示しているかを整理します。個々の記述は改定されるため、最新の内容は国土交通省が公表する計画本文で確認してください。

計画の構造

内容
全国計画 国土全体の方針。閣議決定される
広域地方計画 ブロック単位の計画。国と地方の協議を経て決定される

この二層構造が、国土形成計画法の特徴です。全国一律ではなく、地域ごとの事情を反映させる仕組みになっています。

国土利用計画と一体で策定される

国土形成計画は、国土利用計画(全国計画)と一体のものとして策定されます。

役割
国土形成計画 どういう国土にするかという方向
国土利用計画 土地をどう使うかという量と配分

方向を示す計画と、土地の使い方を示す計画。この二つが対になっています。

国土利用計画は、都道府県計画・市町村計画へと下りていきます。その先で土地利用基本計画が五地域を定め、都市計画法や農地法といった個別法につながります。

全総からの流れ

国土形成計画の前身は、全国総合開発計画(全総)です。

時期 主題
全総の時代 開発。拠点の整備、地域間の格差の是正
国土形成計画へ 開発から、成熟した国土の管理へ

平成17年(2005年)に国土総合開発法が改正され、国土形成計画法となりました。名称から「開発」が外れています。

量的な拡大を前提とした計画から、既にあるものをどう使うかという計画へ。この転換が、法律の名称に表れています。

第三次計画が示していること

第三次の全国計画は、令和5年(2023年)に閣議決定されました。

前提

  • 人口減少が続く 地域によって減り方に差がある
  • 高齢化により、生活を支える担い手が減る
  • 災害が激甚化している
  • デジタル技術が使えるようになった
  • 脱炭素への対応が求められる
「増やす」計画ではない

従来の全総は、開発の拠点を配置し、量的な成長を導く計画でした。

第三次国土形成計画は、そうではありません。減っていく前提で、どう機能を維持するかを扱っています。

したがって、「この地域にこれだけ投資する」という形ではなく、「限られた資源をどう配分し、どうつなぐか」という組み立てになっています。

拠点をつなぐという発想

人口が減ると、すべての場所にすべての機能を置くことができなくなります。

従来 これから
各地に一通りの機能を配置 機能を拠点に集約する
個々の市町村で完結 複数の市町村で分担・連携
移動して利用する 移動と、デジタルによる代替を組み合わせる

拠点を交通とデジタルでつなぎ、全体として生活を成り立たせる。これが計画の基本的な考え方です。

地域生活圏

市町村の枠を越えて考える

第三次計画の中心にあるのが地域生活圏という考え方です。

一つの市町村では維持できない機能を、周辺と合わせた圏域で確保する。そういう単位で生活サービスを組み立てます。

対象となる機能
医療・介護 病院、診療所、介護施設
教育 学校の統廃合と通学の確保
商業 日常の買い物ができる場
交通 拠点と周辺を結ぶ移動手段
行政サービス 窓口の集約、デジタル化

官民が連携して、圏域の単位でサービスを維持する。民間事業者や地域の団体が担い手になることも想定されています。

立地適正化計画との関係

地域生活圏は市町村を越えた広がりを扱います。一方、立地適正化計画は一つの市町村の中で、どこに居住や機能を誘導するかを扱います。

スケール 根拠
地域生活圏 複数の市町村 国土形成計画
立地適正化計画 市町村内の区域 都市再生特別措置法

入れ子の関係にあります。圏域の中で拠点となる市町村が、その内部でさらに誘導区域を定める、という構造です。

そのほかの柱

分野 方向
デジタル 移動の代替、行政サービスの効率化、データの活用
脱炭素 再生可能エネルギー、建築物の省エネ、緑地の確保
防災 災害リスクを踏まえた土地利用
人材 担い手の確保、関係人口、二地域居住
産業 地域の産業の高付加価値化
防災が、土地利用の前提に組み込まれた

災害の激甚化を受けて、災害リスクの高い場所での立地をどう扱うかが、計画の前提に入っています。

これは、立地適正化計画において災害の危険性が特に高い区域を居住誘導区域に含めないという運用や、ハザードマップの重要事項説明への追加といった動きと一続きのものです。

「どこに住むか」の判断に、災害リスクが正面から組み込まれる方向にあります。

直接の規制ではない

この計画で建築が止まることはない

国土形成計画は、個別の土地の利用を直接規制するものではありません。

「地域生活圏の外だから建てられない」ということはありません。

効いてくるのは、次のような経路です。

  • 下位の計画 都道府県・市町村の計画に反映される
  • 予算と交付金 国の支援がどこに向くかに影響する
  • 個別法の改正 計画の方向に沿って制度が整えられる

したがって、数年から十年単位で効いてくる性質のものです。

実務にどう効くか

行政との協議で使える

事業の提案が上位計画の方向と合っていることを示せると、庁内での説明がしやすくなります。

示すこと 効果
国の計画のどの方向に沿うか 予算・交付金の根拠になりうる
県・市町村の計画との整合 担当課が上に上げやすくなる
圏域での位置づけ 近隣市町村との連携を示せる

広域地方計画を確認する

全国計画だけでなく、その地域を含む広域地方計画を見てください。

より具体的な、その地域の方向が書かれています。九州であれば九州圏の広域地方計画にあたります。

長期の見通しに使う

不動産の取得や事業の計画では、十年、二十年先の見通しが必要になります。

国の計画は、その地域が拠点として位置づけられているか、周辺として位置づけられているかの手がかりになります。

ただし、計画は計画です。そのとおりに進む保証はありません。実際の人口の動きや事業の進捗と、併せて見てください。

計画を確認するときの視点
  • 全国計画の本文を確認した国土交通省が公表している
  • その地域を含む広域地方計画を確認した
  • 国土利用計画(全国・都道府県・市町村)も併せて見た
  • 都道府県・市町村の計画との整合を確認した
  • 地域生活圏の考え方と、その市町村の位置づけを確認した
  • 立地適正化計画が策定されているか確認した入れ子の関係
  • 災害リスクに関する記述を確認した
  • 直接の規制ではないことを踏まえた下位の計画と予算に効く
  • 計画どおりに進む保証はないことを前提にした

まとめ

  • 計画は全国計画と広域地方計画の二層。国土利用計画と一体で策定される。
  • 「開発」から「形成」へ。量的な拡大を前提とした計画ではなくなった。
  • 第三次計画の中心は地域生活圏。市町村の枠を越えて生活機能を確保する。
  • 立地適正化計画とは入れ子の関係。圏域の中で、さらに誘導区域を定める。
  • 直接の規制ではないが、下位の計画と予算の方向を決める。
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