CHIOU / 株式会社地央

自治体職員のための調査フローチャート ── 九つの領域を一本につなぐ

ここまで、区域区分、都市計画法、建築基準法、農地法、開発許可、法務局調査、民法、現地調査、道路調査という九つの領域を扱ってきました。章ごとに読めば独立していますが、実際の窓口では、これらはひとつながりの流れとして進みます。

相談を受けたとき、どこから確認し、どの順で進め、どこで所管につなぐのか。順序を誤ると、あとで前の段階に戻ることになります。とくに農振除外のように年単位の時間を要する手続きは、早い段階で見立てておかないと、相談者の計画そのものが破綻します。

この章では、九つの領域を一本の調査フローにまとめます。ハンドブックの総まとめとして、また日々の窓口で開く早見表としてお使いください。

調査の全体像

相談を受けてから回答するまでを、七つの段に整理します。上から順に降りていくと、飛ばした段があとで戻ってこない構造になっています。

  1. 【一】相談内容を聞き取る

    誰が、どの土地について、何をしたいのか。この三つを最初に押さえます。ここが曖昧なままだと、そもそも何を調べるべきかが定まりません。

    聞き取る項目 所在(地番。住居表示しか分からない場合は特定が必要)/相談者と所有者の関係/実現したいこと(建てる・分ける・売る・活用する・除却する)/時期の希望
  2. 【二】土地の位置を特定し、資料を揃える

    地番を特定し、公図・登記事項証明書・都市計画図・道路種別図を手元に置きます。住居表示と地番は別のものです。ここを取り違えると、別の土地を調べることになります。

    関連する章 第06章(法務局調査)
  3. 【三】都市計画上の区域を確認する

    市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域・都市計画区域外のいずれか。その後の判断がすべてここから枝分かれします。

    市街化区域なら 用途地域、建蔽率・容積率、高さ制限、地区計画、防火地域、計画道路との重なりを確認(第02章)
    市街化調整区域なら 都市計画法第34条各号の該当可能性、区域指定・集落内開発制度の対象かを確認(第01章・第05章)
    非線引き・区域外なら 用途地域の有無と、開発許可の面積要件を確認(第05章)
  4. 【四】農地かどうかを確認する

    登記地目ではなく現況で判断します。この確認は早い段階で行ってください。農用地区域に入っていれば農振除外が先行し、所要時間が一年単位で変わります。

    農地であれば 農用地区域の該否 → 農地区分(第1種・第2種・第3種・甲種) → 市街化区域なら届出、それ以外は許可 → 第4条(自己転用)か第5条(他者転用)か(第04章)
    所管 農業委員会
  5. 【五】道路と接道を確認する

    区域と用途の条件を満たしていても、接道義務を満たさなければ建てられません。ここで止まる案件は少なくありません。

    確認の順 建築基準法上の道路種別(第42条の何号か) → 道路法上の位置づけ(認定路線・法定外公共物・私道) → 幅員の実測 → 接道の長さ2m以上 → 4m未満なら二項道路の指定とセットバックの要否(第03章・第09章)
    私道なら 所有者・共有者、通行と掘削の承諾の有無
  6. 【六】開発行為に当たるかを見る

    区画・形・質のいずれかの変更を伴い、面積が基準を超えれば開発許可が必要です。市街化調整区域では面積にかかわらず許可を要します。

    面積基準 市街化区域 1,000㎡以上(条例で引下げの場合あり)/非線引き・準都市計画区域 3,000㎡以上/都市計画区域外 1ha以上/市街化調整区域 面積不問(第05章)
    所管 開発指導部門
  7. 【七】回答を組み立て、所管につなぐ

    「確認できたこと」「確認できていないこと」「次に相談すべき窓口」の三つに分けて伝えます。可否を断定せず、判断の所管を明示することが、後のトラブルを防ぎます。時間を要する手続きがある場合は、その見通しも添えます。

    記録 相談内容と回答内容を残します。後日、認識の食い違いが生じたとき、記録が唯一の拠りどころになります(第07章)

相談の類型ごとの入口

実際の相談は、必ずしも第一段から始まるとは限りません。よくある類型ごとに、どこから入るのが早いかを整理します。

「ここに家を建てたい」 区域の確認から。調整区域なら第34条の該当可能性と農地かどうかを並行して見る。接道の確認まで進めて、可否は所管へ。
「田を宅地にしたい」 農地の確認から。農用地区域の該否を最初に見て、所要時間の見通しを早く伝える。並行して区域と開発許可の要否を確認。
「土地を分けて売りたい」 開発行為に当たるかから。登記上の分筆だけか、道路を入れて区画を割るかで結論が変わる。接道の確保も確認。
「空き家をどうにかしたい」 所有者の特定から。相続登記の未了が多い。除却を検討する場合は、再建築の可否を必ず先に確認する。
「隣が越境している」 民事の相談として受ける。行政は判断者ではない。制度の説明と相談先の案内にとどめる(第07章)。
「公有地を買いたい」 財産の分類(行政財産か普通財産か)から。普通財産なら、境界確定の要否と手続きの流れを確認。

とくに気をつける三つ

一 時間のかかる手続きを最初に見立てる

農振除外は、受付が年に一回または二回にまとめられていることが多く、除外の告示まで一年前後を要することがあります。官民境界の確定も、関係者が多ければ相当の時間がかかります。相談者が着工時期を決めている場合、この二つを最初に見立てないと、あとで計画が破綻します。

二 可否の判断を窓口で断定しない

都市計画法第34条の該当、農地区分、建築の可否。いずれも所管部署が判断するものです。窓口では、該当する可能性の有無と、次に相談すべき窓口までを伝えます。断定したものが後で覆ると、行政への信頼が損なわれます。

三 記録を残す

相談内容、確認した事実、伝えた内容。三つを記録に残してください。窓口対応は口頭で完結しがちですが、後日「そう聞いていない」という食い違いが生じたとき、記録だけが拠りどころになります。

実務チェックリスト

  • □ 相談者と所有者の関係を確認した第4条か第5条か、行政事務か民事かの分かれ目になる
  • □ 地番を特定した住居表示と地番は別
  • □ 都市計画上の区域を確認したその後の判断がすべてここから枝分かれする
  • □ (市街化区域)用途地域・建蔽率・容積率・高さ制限を確認した
  • □ (市街化区域)地区計画・建築協定・計画道路を確認したここを飛ばすと回答が後から覆る
  • □ (調整区域)第34条各号の該当可能性を確認した判断は開発指導部門へ
  • □ 現況が農地かどうかを確認した登記地目ではなく現況で判断
  • □ 農用地区域の該否を確認した入っていれば農振除外が先行。年単位の時間を要する
  • □ 建築基準法上の道路種別を確認した市道認定とは別
  • □ 幅員を実測し、接道の長さを確認した
  • □ 開発行為の該当と面積基準を確認した調整区域は面積にかかわらず許可が必要
  • □ 時間のかかる手続きの見通しを相談者に伝えた農振除外・官民境界の確定
  • □ 可否を断定せず、所管部署につないだ
  • □ 相談内容と回答内容を記録に残した

まとめ

  • 調査は七つの段で進む。聞き取り → 資料 → 区域 → 農地 → 道路 → 開発行為 → 回答と所管への引継ぎ。
  • 区域の確認がすべての分岐点。市街化区域か調整区域かで、その後の手順がまったく変わる。
  • 農地かどうかは早い段階で見る。農用地区域なら農振除外が先行し、年単位の時間を要する。
  • 空き家の除却を検討する相談では、再建築の可否を必ず先に確認する。
  • 可否を断定せず、確認できたこと・できていないこと・次の窓口の三つに分けて伝え、記録に残す。

関連法令

  • 都市計画法 区域区分、地域地区、開発許可の基本。第7条・第8条・第29条・第34条・第53条。
  • 建築基準法 建物の安全と接道。第42条・第43条・第3条第2項。
  • 農地法/農業振興地域の整備に関する法律 農地の転用と農振除外。農地法第4条・第5条、農振法第13条。
  • 不動産登記法 登記記録、地図、相続登記の義務化。第2条・第14条・第76条の2。
  • 民法 所有権、対抗要件、相隣関係。第177条・第206条・第209条・第233条。
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法 空家等の調査、立入調査、特定空家等に対する措置。
  • 地方自治法 公有財産の分類と管理・処分。第238条以下。
本章は制度理解のための一般的な解説であり、個別案件の法的判断を保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、都市計画課・農業委員会・法務局・建築指導課など所管窓口や専門家(行政書士・土地家屋調査士等)に必ずご確認ください。

次に読む

全10章の内容は、自治体職員向けの研修としてもお話ししています。90分の単発講義から、全体を三時間で通す導入研修、章ごとに回を分けた連続講座まで、対象者と時間に合わせて構成します。配布資料とチェックリストは当日用に整えてお渡しします。詳しくは都市計画実践講座をご覧ください。
本ハンドブックの全10章はこちらの目次からご覧いただけます。

BLOG

ブログ

PAGE TOP