下水道法 ── 接続の義務と、排水経路の確認
- 処理区域内では、接続が義務。任意ではない
- 宅地内の排水設備は土地の所有者・使用者が設置する。公費ではない
- 他人地を経由する排水管は承諾が必要。将来の工事で問題になる
- 都市計画事業で整備した区域では、受益者負担金がかかる
下水道は、都市施設として都市計画で位置づけられる一方で、個々の土地に直接の義務を生じさせる制度でもあります。
調査の場面では、「前面道路に本管があるか」だけでは足りません。処理区域なのか、接続の義務があるのか、どの経路で流すのか。
この記事では、制度の構成と、土地の調査で確認すべき点を整理します。
下水道の種類
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 公共下水道 | 市町村が管理する。各家庭からの排水を受ける |
| 流域下水道 | 都道府県が管理する。複数の市町村の下水を集めて処理する |
| 都市下水路 | 主として雨水を排除する。処理施設を持たない |
| 内容 | |
|---|---|
| 単独公共下水道 | 市町村が処理場まで持つ |
| 流域関連公共下水道 | 流域下水道に接続する。処理は都道府県の施設で |
| 特定環境保全公共下水道 | 市街化区域以外の区域で整備されるもの |
| 特定公共下水道 | 特定の事業者の排水を受けるもの |
どの種類かによって、管理者と手続きの窓口が変わります。
とくに特定環境保全公共下水道は、農村部や観光地などで整備されている例があります。「市街化区域外だから下水道がない」とは限りません。
下水道以外の処理方式
| 方式 | 根拠法 |
|---|---|
| 公共下水道 | 下水道法 |
| 農業集落排水施設 | 補助事業による。市町村が管理 |
| 合併処理浄化槽 | 浄化槽法 |
| コミュニティ・プラント | 廃棄物処理法 |
同じ「下水」でも、根拠法と管理者が異なります。維持管理の費用負担も違います。
処理区域と、接続の義務
公共下水道が整備され、供用開始の公示がされると、その区域は処理区域になります。
処理区域内では、次の義務が生じます。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 排水設備の設置 | 下水を公共下水道に流入させるため、遅滞なく設置する |
| 水洗便所への改造 | 汲み取り便所は、一定期間内に水洗化する |
| 浄化槽の使用中止 | 下水道に接続すれば、浄化槽は不要になる |
これは任意ではなく、法律上の義務です。市町村は改善を命じることができ、従わない場合の罰則も定められています。
ただし、実際には経済的な事情などにより、未接続の建物が残っている例があります。
調査で確認すること
- 処理区域内か 供用開始されているか
- 供用開始の時期 いつから義務がかかっているか
- 接続済みか 未接続なら、買主が接続することになる
- 供用開始が予定されている区域か 整備予定の時期
未接続の物件では、接続の工事費が買主の負担になります。金額は距離と条件によりますが、小さくありません。
排水設備は、誰が設置するか
| 範囲 | 設置・管理 |
|---|---|
| 道路内の本管 | 市町村(公共下水道の管理者) |
| 取付管・公共汚水桝 | 市町村が設置することが多い |
| 宅地内の排水設備 | 土地の所有者・使用者 |
境目は、市町村によって定めが異なります。公共汚水桝までが公共、そこから宅地側が個人、という区分が一般的です。
宅地内の配管の詰まりや破損は、所有者の負担で修繕することになります。
指定工事店
排水設備の工事は、市町村が指定した工事店でなければ行えません。
工事には事前の確認申請と、完了後の検査が必要です。手続きを経ていない工事は、後で問題になります。
他人地を経由する場合
自分の土地から前面道路の本管まで、他人の土地を通らなければ排水できないことがあります。
この場合、その土地の所有者の承諾が必要です。
- 私道を経由する → 私道所有者・共有者の掘削承諾
- 隣地を経由する → その所有者の承諾
- 他人の敷地内の私設管に接続する → 管の所有者の承諾
既に管が入っていても、承諾書がない場合があります。
問題になるのは、更新や修繕の工事をするときです。掘り返す必要が生じたとき、承諾が得られなければ工事ができません。
また、相続で所有者が変わっていると、改めて承諾を求めることになります。共有者が増えていれば、全員の対応を待つことになります。
私設管に注意
複数の宅地が、一本の私設管を共同で使っていることがあります。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 管の所有者は誰か | 市町村の管か、個人の管か |
| 誰が使っているか | 共同使用の範囲 |
| 維持管理の負担 | 詰まったときに誰が費用を負担するか |
| 承諾書の有無 | 書面で残っているか |
私設管は、公共下水道の一部ではありません。市町村は修繕してくれません。
受益者負担金
下水道の整備を都市計画事業として行った区域では、受益者負担金が課されます。
| 内容 | |
|---|---|
| 根拠 | 都市計画法に基づく |
| 対象 | 整備により利益を受ける土地の所有者等 |
| 性格 | 一度限り。土地に対して課される |
| 分割 | 数年に分けて納付する扱いが多い |
受益者負担金は土地に着目して課されるため、売買の際に精算が必要になります。
分割納付の途中で売買された場合、残りを誰が負担するかを契約で定めることになります。
市町村で賦課の有無と納付の状況を確認してください。売主が把握していない場合があります。
なお、使用料(毎月の下水道料金)とは別のものです。混同しないでください。
合流式と分流式
| 合流式 | 分流式 | |
|---|---|---|
| 汚水と雨水 | 同じ管で流す | 別々の管で流す |
| 整備 | 古い市街地に多い | 近年の整備はこちら |
| 大雨のとき | 未処理の下水が河川等へ放流されることがある | 汚水は処理場へ |
| 宅地側の配管 | 一本でよい場合がある | 汚水と雨水を分ける必要がある |
分流式の区域では、宅地内でも汚水と雨水を分けて配管する必要があります。
雨水の放流先が下水道でない場合、側溝や水路への放流について、別の管理者の承諾が必要になることがあります。
近年の課題
老朽化
整備から数十年が経過し、管路の更新時期が集中しています。
陥没事故の原因になることもあり、計画的な点検と更新(ストックマネジメント)が課題とされています。
浸水対策
近年の豪雨により、下水道の能力を超える雨が降る場面が増えています。
水防法に基づき、雨水出水(内水)についても浸水想定区域が指定・公表される仕組みがあります。
河川の氾濫だけでなく、内水氾濫のリスクも確認してください。河川から離れていても浸水することがあります。
人口減少と経営
接続する世帯が減れば、使用料収入が減ります。一方、管路の維持費は簡単には減りません。
整備区域の見直しや、浄化槽への転換を検討する自治体もあります。
実務での確認
| 確認するもの | 窓口 |
|---|---|
| 処理区域か、供用開始の時期 | 市町村の下水道担当課 |
| 本管の位置と管径 | 同上。下水道台帳で確認できる |
| 公共汚水桝の有無と位置 | 同上 |
| 接続の状況 | 同上。現地でも確認 |
| 合流式か分流式か | 同上 |
| 受益者負担金 | 同上。賦課と納付の状況 |
| 私設管の有無 | 台帳、現地、売主への確認 |
| 他人地の通過と承諾 | 現地、公図、承諾書の確認 |
下水道台帳を見る
多くの市町村で、下水道台帳が窓口で閲覧でき、ウェブで公開されている場合もあります。
本管の位置、管径、深さ、公共汚水桝の位置が分かります。
ただし、私設管は台帳に載っていないことがあります。現地の桝の蓋を開けて確認する、売主に聞くといった作業が必要です。
- 処理区域内か確認した供用開始の公示の有無
- 供用開始の時期を確認した
- 現に接続されているか確認した未接続なら工事費の負担
- 下水道台帳で本管の位置と管径を確認した
- 公共汚水桝の位置を確認した
- 合流式か分流式か確認した分流式なら宅地内で分ける必要
- 雨水の放流先を確認した
- 他人地を経由していないか確認した
- (経由する場合)承諾書の有無を確認した
- 私設管を共同使用していないか確認した
- (私設管)維持管理の費用負担を確認した
- 受益者負担金の賦課と納付の状況を確認した
- 内水の浸水想定区域を確認した
- (下水道がない場合)浄化槽など、代替の方式と費用を確認した
まとめ
- 処理区域内では接続が義務。任意ではなく、罰則も定められている。
- 宅地内の排水設備は所有者の負担。工事は指定工事店による。
- 他人地を経由する場合、承諾が必要。更新工事の際に問題になる。
- 私設管は公共下水道ではない。市町村は修繕しない。
- 受益者負担金は土地に課される。売買時に精算の要否を確認する。
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