CHIOU / 株式会社地央

空き家の支援制度 ── 税・補助・流通

この記事の要点
  • 支援は三つの面。税・補助・流通。それぞれ目的が違う
  • 相続した空き家の売却には譲渡所得の特別控除がある。要件が細かい
  • 補助制度は市町村ごとに違い、年度で変わる。着手前に確認する
  • 使えるかどうかは時期に左右される。期限のある制度が多い

空き家の問題は、所有者に動く動機と資力がなければ解決しません。

規制や命令だけでなく、後押しする仕組みが用意されています。

この記事では、税・補助・流通の三つの面から整理します。税務の判断は税理士の業務であり、この記事は制度の全体像を示すものです。

この記事の位置づけ

税制上の措置には、細かい要件と期限が定められており、改正も頻繁です。

この記事では、どういう制度があるか、何を確認すべきかを示します。

適用の可否や税額の計算は、必ず税理士にご確認ください。最新の要件は国税庁の資料で確認できます。

税に関する措置

相続した空き家を売ったとき

譲渡所得の特別控除

相続によって取得した被相続人の居住用家屋を売却した場合、一定の要件のもとで譲渡所得から控除を受けられる制度があります。

主な要件です。

要件 内容
家屋の時期 昭和56年5月31日以前に建築されたもの
居住の状況 相続の開始の直前に、被相続人が一人で居住していた
その後の使用 相続時から譲渡時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていない
期限 相続の開始から一定の期間内の譲渡
譲渡の対価 上限が定められている
建物の扱い 耐震基準に適合させるか、除却する

昭和56年5月31日は、新耐震基準が適用される前の建築を指します。

つまり、耐震性に不安のある古い住宅を、除却するか耐震化して流通させることを促す制度です。

要件が多く、外れやすい

実務でよく問題になる点です。

  • 「一人で居住」の要件 同居していた家族がいると外れる場合がある
  • 相続後に貸してしまった 少しでも貸付けに使うと外れる
  • 期限を過ぎた 相続から時間が経ってから売却する例が多い
  • 相続人が複数いる場合の扱い 控除額に影響することがある
  • 老人ホームに入所していた場合の扱い 別の要件がある

「相続した空き家なら使える」わけではありません。

また、売主が耐震改修または除却するのが原則ですが、買主が譲渡の後一定期日までに行う場合にも適用できる取扱いがあります。取引の設計に影響します。

売却を検討する段階で、税理士に確認してください。売った後では取り返せません。

そのほかの税制上の措置

制度 概要
低額の土地等を譲渡した場合の特別控除 使われていない土地の流通を促すもの
住宅用地特例 建物があると軽減。勧告を受けると外れる
耐震改修・省エネ改修に関する措置 所得税、固定資産税
相続土地国庫帰属制度 要件を満たせば、土地を国に帰属させられる

いずれも要件と期限があります。該当しそうな場合は、専門家に確認してください。

補助に関する措置

市町村ごとに違う

空き家に関する補助の多くは、市町村が実施しています。

類型 内容
除却への補助 老朽化した危険な空き家の解体
改修への補助 活用するための修繕、設備の更新
耐震改修への補助 診断と改修
家財の処分への補助 残置物の撤去
移住・定住に伴う補助 取得や改修の費用
店舗等への転用 創業支援と組み合わせた制度

制度の有無、金額、要件は市町村によって大きく異なります。

着手した後では、対象にならない

ほとんどの補助制度は、事前の申請と交付決定が必要です。

工事を始めてから申請しても、対象になりません。

次の点を、着手前に確認してください。

  • 申請の時期と、交付決定までの期間
  • 年度の予算枠 早い時期に上限に達することがある
  • 対象となる工事の範囲
  • 施工業者の要件 市内の事業者に限る制度がある
  • 補助を受けた後の義務 一定期間の使用、処分の制限
  • 他の補助との併用の可否

「後から申請すればよい」という制度は、まずありません。

国の支援

市町村が行う空き家対策に対して、国が財政的な支援を行う枠組みがあります。

市町村の補助制度は、これを財源としている場合があります。制度の内容や継続の可否は、国の予算にも左右されます。

流通に関する仕組み

空き家バンク

市町村や関係団体が、空き家の情報を登録し、利用希望者に紹介する仕組みです。

利点 限界
市場に出にくい物件が載る 情報が少ない、写真が古い
移住希望者が見る 登録数が限られる
行政が関与する安心感 契約は当事者間または宅建業者を介して行う

全国の空き家バンクの情報を横断的に検索できる仕組みも整えられています。

行政は取引の当事者ではない

空き家バンクは、情報を仲立ちする仕組みです。

売買や賃貸の契約自体は、当事者間、または宅地建物取引業者を介して行われます。

したがって、物件の調査や重要事項の説明は、通常の取引と同じように必要です。

  • 接道と再建築の可否
  • 境界の確定状況、越境
  • 建物の状態、雨漏り、シロアリ
  • 私道・排水の権利関係
  • 残置物の扱い

「バンクに載っているから大丈夫」ということはありません。

宅地建物取引業者との連携

多くの市町村が、宅地建物取引業の団体と協定を結んでいます。

相談への対応、物件の調査、契約の仲介。行政だけでは担えない部分を、専門家が受け持つ形です。

低額な物件の取扱い

仲介の手数料では、費用が賄えない

空き家の中には、価格が非常に低い物件があります。

仲介手数料は売買価格に応じて上限が定められているため、低額な物件では、調査や書類作成の費用を賄えないことがあります。

この点については、低額な物件について、通常の調査等に要する費用を考慮した報酬の特例が設けられています。

流通を担う側が成り立たなければ、市場に出てきません。その観点からの措置です。

組み合わせて使う

場面 使いうる制度
相続した実家を売る 譲渡所得の特別控除、空き家バンク
危険な建物を壊す 除却への補助。ただし解体後の税負担も確認
改修して貸す 改修・耐震への補助、住宅セーフティネット制度
店舗として使う 活用促進区域、創業支援
引き取り手がない 相続土地国庫帰属制度、財産管理制度
順序を間違えない

制度には、適用の順序や前提があります。

  • 解体する前に 譲渡所得の特別控除の要件を確認する
  • 工事を始める前に 補助の申請と交付決定を受ける
  • 貸す前に 貸付けに使うと外れる特例がないか確認する
  • 相続から時間が経つ前に 期限のある制度を確認する

先に動いてしまうと、使えたはずの制度が使えなくなります。

何かをする前に、一度整理する時間を取ってください。

相談先

内容 相談先
税の適用 税理士、税務署
補助制度 市町村の担当課
売却・賃貸 宅地建物取引業者
建物の状態 建築士
境界・測量 土地家屋調査士
相続・登記 司法書士
相続人間の争い 弁護士

多くの市町村が、専門職団体と連携した無料相談会を実施しています。

支援制度を確認するときの視点
  • 何かをする前に、制度を確認した解体・工事・賃貸の前に
  • (税)譲渡所得の特別控除の要件を税理士に確認した
  • (税)相続からの経過期間を確認した
  • (税)相続後に貸付け等をしていないか確認した
  • (補助)その市町村の制度を確認した
  • (補助)申請の時期と交付決定までの期間を確認した
  • (補助)年度の予算枠の状況を確認した
  • (補助)施工業者の要件を確認した
  • (補助)補助を受けた後の義務を確認した
  • (解体)解体後の固定資産税の水準を確認した
  • (流通)空き家バンクでも通常の調査が必要なことを確認した
  • 相談先を分野ごとに分けた

まとめ

  • 支援は税・補助・流通の三つの面。それぞれ目的と窓口が違う。
  • 相続した空き家の売却には特別控除があるが、要件が多く外れやすい。
  • 補助は事前の申請が原則。着手した後では対象にならない。
  • 空き家バンクに載っていても、通常の調査と説明は必要。
  • 先に動くと使えなくなる制度がある。何かをする前に整理する。
この内容を、研修・講座として。

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