空家等活用促進区域 ── 規制を合理化して使えるようにする
- 令和5年の改正で、対策の重点に活用が加わった。従来は除却が中心だった
- 活用促進区域では、接道と用途の規制が合理化される
- 区域は市町村が空家等対策計画に定める。どこでも使えるわけではない
- 支援法人は、行政が届かない部分を担う。所有者情報の提供を受けられる
空き家対策は長く、危険な建物をどう除却するかという問題として扱われてきました。
しかし、空き家の多くは危険な状態ではありません。使えるのに使われていない建物が、圧倒的に多い。
令和5年(2023年)の改正では、この部分に手が入りました。この記事では、活用を促す仕組みを扱います。
なぜ活用が使えなかったか
空き家を使おうとすると、建築基準法と都市計画法の規制に突き当たります。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 接道 | 細い道にしか接していない。建て替えも改修も難しい |
| 用途 | 住宅として建てられた建物を、店舗や事務所にできない |
| 既存不適格 | 大規模な改修をすると、現行基準への適合が求められる |
とくに問題になるのが、古い集落や中心市街地です。
道が狭く、建物が密集している。建築基準法ができる前から続いてきた街並みが、そのまま残っています。
使いたい人がいても、法的に使えない。この状態が、空き家が放置される一因になっていました。
空家等活用促進区域
市町村が空家等対策計画の中で、活用を促進する区域を定めることができます。
| 想定される区域 | 内容 |
|---|---|
| 中心市街地 | 商店街など、賑わいの回復を図る区域 |
| 地域の拠点 | 生活サービスを維持したい区域 |
| 歴史的な集落・町並み | 景観や文化的な価値のある区域 |
区域を定める際、あわせて活用の指針を定めます。
どういう用途に使ってほしいか、どういう配慮を求めるか。これが後の手続きの基準になります。
接道規制の合理化
建築基準法上の道路に2メートル以上接していない敷地には、原則として建築できません。
ただし、安全上・防火上・衛生上支障がないと認められる場合には、許可により建築できる仕組みがあります。
活用促進区域では、この許可の運用について、特定行政庁があらかじめ方針を示すなどの措置が講じられます。
| 従来 | 区域内 |
|---|---|
| 個別に許可を判断 | あらかじめ基準が示される |
| 見通しが立ちにくい | 事前に可否の目安が分かる |
事業者にとっては、検討の初期段階で判断できるようになります。
用途規制の合理化
用途地域による制限があるため、住宅を店舗や事務所に転用できない場合があります。
活用促進区域では、市町村が定めた指針に沿った用途への変更について、許可を通じて対応しやすくする仕組みが設けられています。
合理化とは、個別の事情に応じて判断できるようにすることです。
- 安全性が確保されていることは前提
- 市町村の指針に沿った用途であること
- 個別の許可の手続きは必要
- 建築基準法のその他の規定は適用される
「区域内なら何でもできる」ということではありません。
実務では、活用の計画を立てた段階で、建築指導課と都市計画課に相談してください。
所有者への働きかけ
区域内の空き家について、市町村は所有者に対し、活用を要請することができます。
強制力はありませんが、「使ってもらえないか」と行政から接触する根拠になります。
空家等管理活用支援法人
市町村は、NPO法人や一般社団法人等を、支援法人として指定できます。
| 担いうる役割 | 内容 |
|---|---|
| 所有者からの相談 | どうしたらよいか分からない段階での対応 |
| 活用の支援 | 使いたい人とのつなぎ、改修の相談 |
| 管理の受託 | 遠方の所有者に代わる見回り、通風 |
| 市町村への提案 | 対策計画の変更などを提案できる |
| 普及・啓発 | 相談会、情報の発信 |
行政の職員だけでは、個々の所有者に丁寧に対応することが難しい。そこを補う仕組みです。
所有者情報の提供
空き家の活用で最初に詰まるのは、所有者に連絡が取れないことです。
登記記録の名義人が死亡している。転居して所在が分からない。相続人が多数いる。
従来、市町村が把握している所有者情報を、民間の団体に提供することはできませんでした。
支援法人の制度では、その業務に必要な限度で、所有者に関する情報の提供を市町村に求めることができます。
ただし、所有者本人の同意を得ることが前提とされています。無制限に提供されるわけではありません。
それでも、「所有者にたどり着けない」という最大の障害に、一つの道ができました。
指定の実際
指定を受けるには、業務を適正かつ確実に行える体制が求められます。
- 組織としての継続性
- 専門的な知見 不動産、建築、法務
- 情報の適切な管理
- 利益相反への配慮
地域の宅地建物取引業者、建築士、司法書士等が関わる形が想定されます。
空家等対策計画
これらの制度は、いずれも市町村の空家等対策計画が前提になります。
| 計画に定めること | 備考 |
|---|---|
| 対象とする区域 | 市域全体か、一部か |
| 対策に関する基本方針 | |
| 調査に関する事項 | 実態把握の方法 |
| 活用の促進に関する事項 | 活用促進区域を定める場合 |
| 特定空家等への措置 | |
| 相談への対応 | 支援法人との連携を含む |
活用促進区域も、支援法人の指定も、計画に位置づけられていることが前提です。
しかし、小規模な市町村では、計画の策定自体が進んでいない場合があります。
- 担当職員が兼務で、手が回らない
- 実態調査に費用と時間がかかる
- 専門的な知見が庁内にない
制度が用意されていても、使える市町村と使えない市町村があるのが実情です。
事業を検討する際は、まずその市町村の計画の有無と内容を確認してください。
活用の実際
使い道の例
| 用途 | 関わる手続き |
|---|---|
| 住宅として賃貸 | 比較的少ない |
| 店舗・飲食店 | 用途変更、消防法、食品衛生法 |
| 宿泊施設 | 旅館業法または住宅宿泊事業法、消防法 |
| 事務所・工房 | 用途変更 |
| 地域の交流拠点 | 用途と規模による |
| 解体して活用 | 更地としての利用。住宅用地特例が外れる |
用途を決めた段階で、関係する部局にまとめて相談してください。
改修の費用
長く使われていない建物では、想定を超える費用がかかることがあります。
- 屋根・外壁からの雨漏りと、それによる構造材の傷み
- シロアリの被害
- 給排水管の全面的な更新
- 電気設備の容量不足
- 耐震性能の不足
- 残置物の処分
取得の前に、建築士による調査を行ってください。見た目では判断できません。
他の制度との関係
| 制度 | 関係 |
|---|---|
| 立地適正化計画 | 誘導区域と活用促進区域の整合 |
| 中心市街地活性化 | 区域が重なることがある |
| 歴史まちづくり法 | 歴史的な建造物の活用 |
| 登録有形文化財 | 建築基準法の適用除外が使える場合がある |
| 住宅セーフティネット法 | 住宅確保要配慮者向けの活用 |
空き家の活用は、空家法だけで完結しません。複数の制度を組み合わせて使うことになります。
- その市町村の空家等対策計画の有無を確認した
- 活用促進区域が定められているか確認した
- (区域内)市町村の指針の内容を確認した
- 接道の状況と、許可の見通しを建築指導課に確認した
- 用途変更の可否を確認した
- 支援法人が指定されているか確認した
- 所有者の特定ができるか確認した
- 用途に応じた関係法令をまとめて確認した消防・食品衛生・旅館業
- 建築士による調査を行った構造・雨漏り・シロアリ・設備
- 改修費用を、想定より厚く見込んだ
- 他の制度との組み合わせを検討した
まとめ
- 令和5年の改正で、対策の重点に活用が加わった。従来は除却が中心だった。
- 活用促進区域では、接道と用途の規制について運用が合理化される。
- ただし規制がなくなるわけではない。安全性の確保は前提。
- 支援法人は、所有者情報の提供を市町村に求めることができる。
- いずれも空家等対策計画が前提。計画のない市町村では使えない。
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