自治体職員のための開発許可制度 ── 調整区域で建てられる場合とは
- 開発許可の要否は、区域・行為・面積の三つの組み合わせで決まる
- 登記上の分筆だけなら開発行為に当たらない。道路を入れて区画を割れば当たる
- 市街化調整区域は面積にかかわらず許可が必要。市街化区域は1,000㎡以上
- 第11号・第12号は自治体の条例による。隣の市と扱いが違うのはこのため
「この土地を分けて売りたい」「農地をならして資材置場にしたい」「調整区域だが施設を建てたい」。開発に関わる相談は、規模も内容もさまざまな形で窓口に持ち込まれます。
判断が難しいのは、開発許可の要否が区域・行為・面積の三つの組み合わせで決まるためです。同じ工事でも、市街化区域なら不要で調整区域なら必要、ということが起こります。さらに調整区域では、許可の可否が都市計画法第34条各号への該当で決まるため、窓口だけでは結論を出せません。
この章では、開発許可という制度が何のためにあるのか、開発行為の三類型と面積の基準、そして窓口で許可の要否を見立てるまでの順序を扱います。
開発許可は何のためにあるのか
開発許可は、無秩序な開発を防ぎ、地域全体を計画的に発展させるための制度です。もし誰もが好きな場所を自由に造成し、建物を建てられたら、道路も上下水道も追いつかず、災害時の避難にも支障が出ます。そこで行政が、一定規模以上の土地の改変について事前に審査する仕組みが置かれています。
制度が守ろうとしているのは、主に次の三つです。
- インフラの確保 道路の幅員、上下水道、排水施設が、その規模の開発に見合っているか。消防車が進入できない街区が生まれることを防ぎます。
- 防災と環境の保全 造成による土砂災害や洪水のリスクを抑え、緑地や地形への影響を審査します。
- 公共施設の担保 住宅が増えれば、学校や公園が必要になります。開発の規模に応じた公共施設の用地を確保させます。
開発行為とは何を指すか
都市計画法でいう「開発行為」は、建築物の建築または特定工作物の建設のために行う、土地の区画・形質の変更です。実務では「区画・形・質」の三つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 区画の変更 | 道路や水路を新設・廃止して、土地の区画割りを変えること。単に分筆するだけ(登記上の分割)は含まれません。 |
| 形の変更 | 切土や盛土によって土地の形状を変えること。一定の高さ・面積を超える造成が対象になります。 |
| 質の変更 | 農地や山林、雑種地といった宅地以外の土地を、宅地に変えること。 |
「土地を分けて売るだけだから開発許可は要らない」という相談がありますが、登記上の分筆だけなら開発行為に当たらない一方、道路を入れて区画を割るなら開発行為に当たります。相談を受けたときは、図面か手描きでよいので「どう分けるつもりか」を描いてもらうと判断が早くなります。
面積の基準
開発行為に当たっても、規模が小さければ許可は不要です。区域ごとに基準が異なります。
| 市街化区域 | 1,000㎡以上で許可が必要(三大都市圏の一部では500㎡以上)。自治体の条例でさらに引き下げられている場合があります。 |
| 市街化調整区域 | 面積にかかわらず許可が必要。小規模でも例外ではありません。 |
| 非線引き区域 準都市計画区域 | 3,000㎡以上で許可が必要。 |
| 都市計画区域外 | 1ha(10,000㎡)以上で許可が必要。 |
市街化区域では「1,000㎡」が基準になりますが、自治体の条例で引き下げている場合があるため、必ず自庁の基準を確認してください。県内でも市町村によって異なることがあります。
市街化調整区域での例外
調整区域では開発が原則として認められませんが、都市計画法第34条に掲げる基準のいずれかに該当すれば許可されます。窓口で問われることの多いものを挙げます。
| 第1号 | 周辺住民の日常生活に必要な店舗、診療所など。いわゆる「日常生活利便施設」。 |
| 第4号 | 農林漁業用の施設、または農林水産物の処理・貯蔵・出荷の施設。 |
| 第9号 | 道路の沿道に立地することが必要な施設(ドライブインなど)、火薬類の貯蔵施設。 |
| 第10号 | 地区計画または集落地区計画に定められた内容に適合する開発。 |
| 第11号 | 市街化区域に隣接・近接し、一体的な日常生活圏を構成している区域のうち、条例で指定した区域内の開発。いわゆる「区域指定」「集落内開発制度」の根拠。 |
| 第12号 | 市街化を促進するおそれがなく、市街化区域内で行うことが困難または著しく不適当と認められる開発。条例で定める。 |
| 第14号 | 開発審査会の議を経て、支障がないと認められるもの。個別審査。 |
このほか、農林漁業を営む者の住宅や、公益上必要な建築物(学校、社会福祉施設、医療施設等)については、第29条の段階で許可が不要または別扱いになる場合があります。
隣の市では建てられるのに自市では建てられない、という違いが生じるのはこのためです。相談者が他市の事例を持ち出してきた場合は、この点を説明すると納得が得られやすくなります。
農地転用との並行
調整区域の開発は、対象地が農地であることが少なくありません。その場合、開発許可と農地転用の両方が必要になります。さらに農用地区域内であれば、その前に農振除外が要ります。
手続きの順序と所要時間は、農振除外に一年前後、そのうえで農地転用と開発許可の事前協議、という流れになります。相談者が着工時期を決めている場合、この見通しを早い段階で伝えないと計画が破綻します。第04章とあわせて確認してください。
窓口での確認手順
一 区域を特定する
市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域・都市計画区域外のいずれか。面積基準がここで決まります。
二 開発行為に当たるかを見る
区画・形・質のいずれかの変更を伴うか。建築物の建築または特定工作物の建設が目的か。「どう分けて、どう造成して、何を建てるのか」を具体的に聞き取ります。ここが曖昧なままでは判断できません。
三 面積を確認する
自庁の条例で引き下げられていないかを含めて確認します。調整区域であれば面積にかかわらず許可が必要です。
四 調整区域なら第34条各号の該当可能性を見る
該当しそうな号があるか、区域指定の対象区域に入っているかを確認します。該当の判断そのものは開発指導部門が行います。窓口では可能性の有無までにとどめてください。
五 農地かどうかを併せて確認する
農地であれば農地転用が必要になり、農用地区域であれば農振除外が先行します。所要時間の見通しをここで立てます。
六 開発指導部門につなぐ
可否の判断は開発指導部門が行います。窓口では、許可が必要になりそうかどうかと、並行して必要になる手続きの見通しまでを伝え、担当につなぎます。
- 区域を特定した市街化区域/市街化調整区域/非線引き区域/都市計画区域外
- 開発行為に当たるかを確認した区画・形・質のいずれかの変更を伴うか
- 何を建てる計画かを聞き取った建築物の建築または特定工作物の建設が目的かどうか
- 面積基準を自庁の条例まで含めて確認した市街化区域1,000㎡/非線引き3,000㎡/区域外1ha。調整区域は面積不問
- (調整区域)第34条各号に該当する可能性を確認した判断は開発指導部門へ。窓口では可能性の有無まで
- (調整区域)区域指定・集落内開発制度の対象区域か確認した第11号・第12号は自治体の条例による
- 農地かどうかを確認した農地なら転用が必要。農用地区域なら農振除外が先行
- 排水の放流先が確保できるか確認した開発審査で必ず問題になる
- 所要時間の見通しを相談者に伝えた
- 開発指導部門につないだ
- 相談内容と回答内容を記録に残した
まとめ
- 開発許可の要否は、区域・行為・面積の三つの組み合わせで決まる。
- 開発行為は区画・形・質の変更。登記上の分筆だけでは開発行為に当たらないが、道路を入れて区画を割れば当たる。
- 市街化区域は1,000㎡以上、非線引きは3,000㎡以上、区域外は1ha以上。市街化調整区域は面積にかかわらず許可が必要。
- 調整区域では第34条各号への該当が鍵。第11号・第12号は自治体の条例で定めるため、市町村によって扱いが違う。
- 農地であれば農地転用が並行して必要。農用地区域なら農振除外が先行し、年単位の時間を要する。
関連法令
- 都市計画法第4条第12項 開発行為(土地の区画形質の変更)の定義を規定。
- 都市計画法第29条 開発行為の許可について規定。許可を要しない場合も定める。
- 都市計画法施行令第19条・第22条の2 許可を要する規模(面積要件)を規定。
- 都市計画法第33条 開発許可の技術基準(道路・排水・給水・防災等)を規定。
- 都市計画法第34条 市街化調整区域における開発許可の立地基準を規定。
- 農地法第4条・第5条 開発の対象が農地である場合、転用の許可等が並行して必要になる。
本章は制度理解のための一般的な解説であり、個別案件の法的判断を保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、都市計画課・農業委員会・法務局・建築指導課など所管窓口や専門家(行政書士・土地家屋調査士等)に必ずご確認ください。
全10章の内容は、対象者と時間に合わせて構成し直してお話ししています。
90分の単発講義から、半日研修、複数回の連続講座まで。構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。