CHIOU / 株式会社地央

空き家活用の合意形成 ── 所有者が、先である

この記事の要点
  • 空き家は箱ではなく、誰かの財産。所有者が動かなければ進まない
  • ワークショップの前に、所有者の意向を確かめる
  • 所有者が決められない理由は、感情と相続にあることが多い
  • 盛り上がった案が、法令と費用で止まる

地域で話し合い、良い案が出た。ところが、所有者が首を縦に振らない。

空き家の活用は、ここで止まります。

この記事では、所有者をどう扱うかを軸に、進め方を整理します。

順序を間違えない

所有者が先、ワークショップは後

使える見込みのない建物で盛り上がっても、落胆が残るだけです。

やること
所有者を特定する
意向を確かめる 貸す気があるか、売る気があるか
建物の状態と法令上の制限を調べる
ここまでで成り立つ見込みが立ってから、地域に投げる

逆にすると、こうなります。

  • 地域で案がまとまったのに、所有者が断る
  • 「勝手に人の家の話をされた」と感じさせる
  • 用途変更ができず、案が使えない
  • 改修費が想定を大きく超える

熱意を注いだ人ほど、その落胆は大きくなります。

所有者を特定する

  • 登記で名義を確認する
  • 相続が済んでいないことが多い 名義が祖父母のまま
  • 共有なら、全員の同意が要る
  • 所在が分からない相続人がいる
  • 固定資産税の納税義務者を、市町村が把握している場合がある

名義が古いまま放置されていると、そこから先に進めません。

相続の整理から始まる案件が、少なくありません。

所有者が決められない理由

「使わないなら貸せばいい」とはならない
理由 内容
感情 親の家、育った家。他人に触られたくない
仏壇・遺品 片づけられないまま時間が経っている
相続 兄弟で意見が分かれる
費用 改修も解体も、まとまった額が要る
不安 貸したら返ってこないのではないか
面倒 手続きが分からない
いつか使う 具体的な予定はないが、手放したくない

「もったいない」「地域のために」という説得は、通じません。

所有者にとっては、地域の課題ではなく自分の財産の話です。

聞き取りで確かめることです。

  • いま、どうしたいと思っているか
  • 何が決められない原因か
  • 相続人は何人いるか
  • 費用の負担はどこまで可能か
  • 条件次第で考えられるか

不安に、制度で応える

不安 応え方
返ってこないのでは 定期借家なら期間で終わる
改修費が出せない 借主負担で改修する形もある
壊されたら困る 原状回復の範囲を契約で定める
誰が入るか不安 借主を選べる形にする
管理ができない 管理を委託する仕組み
売ると税が心配 税理士に確認するよう案内する

市町村に、空き家バンクや改修の補助制度がある場合があります。

その市町村で使えるものを、具体的に示してください。「制度があるらしい」では動きません。

三者の関係

それぞれ、求めるものが違う
望むこと 心配なこと
所有者 負担が減ること 財産を失うこと
地域 まちが良くなること 知らない人が来ること
担い手 やりたいことができる 投資を回収できるか

三者が揃わないと、事業になりません。

地域の意欲だけでも、担い手の熱意だけでも、所有者の善意だけでも足りません。

ワークショップで扱えるのは、主に地域と担い手の部分です。所有者との交渉は、別に行います。

ワークショップで扱えること

扱える 扱えない
何があれば地域が助かるか 所有者の意思決定
どういう使い方があるか 法令上できるかどうか
誰が関われるか 改修費の実額
地域の側の協力 事業として成り立つか
案が出たあと、確かめること

出たアイデアが実現できるかは、法令と費用で決まります。

  • その用途が、その用途地域で可能か
  • 用途変更の確認申請が要る規模か
  • 消防設備の要件 宿泊や不特定多数の利用は厳しくなる
  • 既存不適格の是正が必要か
  • 接道、上下水道
  • 耐震性
  • 改修費の見積り

「カフェにしよう」と決まってから、消防設備で断念する例があります。

用途を絞る前に、建築士と消防署に相談してください。

手続きの詳細は、空き家を活用するで扱っています。

「埋めること」を目的にしない

空室を埋めれば解決、とはなりません。

  • 需要のない業種が入れば、また空く
  • 短期間で撤退すれば、次の借り手が付きにくくなる
  • 所有者の不信が強まる
  • 地域の期待も、二度目は集まらない

一度失敗した空き家は、次の活用がさらに難しくなります。

急いで埋めるより、成り立つ形を作るほうが先です。

誰が続けるか

開業までは進む。その後が難しい
必要なこと
日々の運営 誰が、どれだけの時間を割くか
閑散期 収入がなくても賃料と光熱費はかかる
設備の更新 数年後、誰が費用を出すか
担い手の交代 始めた人が続けられなくなったら
所有者との関係 契約の更新、賃料の見直し

補助金は改修には使えても、運営の赤字は埋められません。

閑散期を含めた年間の収支を、計画の段階で試算してください。

そして、始めた人が離れたときにどうするかを決めておいてください。多くの取組みが、ここで止まります。

空き家の活用に関する確認
  • 登記で所有者を確認した
  • 相続が済んでいるか確認した
  • 共有なら、全員の所在を確認した
  • 所有者の意向を、ワークショップの前に確かめた
  • 決められない理由を聞き取った
  • 不安に、制度と契約で応える案を示した
  • 市町村の補助制度を具体的に確認した
  • 用途地域で、その用途が可能か確認した
  • 用途変更の確認申請の要否を確認した
  • 消防署に事前相談した
  • 建築士による調査を行った
  • 改修費に予備費を見込んだ
  • 閑散期を含めた年間収支を試算した
  • 担い手が離れたときの取り決めをした

まとめ

  • 所有者の意向を確かめてから、地域に投げる。順序を逆にしない。
  • 決められない理由は、感情と相続にあることが多い。
  • 「もったいない」「地域のために」では動かない。不安に制度で応える。
  • 三者(所有者・地域・担い手)が揃わないと事業にならない。
  • 埋めることを目的にしない。一度失敗すると、次はさらに難しくなる。
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