住民参加ワークショップ ── 一卓は、四人から六人
- 一つの卓は4〜6人。それを超えると発言しない人が出る
- 誰を呼ぶかで、出てくる意見が決まる
- 付箋は出すための道具。まとめる作業は別に要る
- 進行役と記録係は分ける。一人では両方できない
付箋がたくさん貼られ、参加者はよく話し、雰囲気もよかった。それなのに、何が決まったのか分からない。
「賑わい」と「成果」は別のものです。
この記事では、ワークショップの運営を、具体的な設計から整理します。
その場に向くかどうか
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 選択肢を広げたい | 案がすでに固まっている |
| 参加者が多様 | 利害が鋭く対立している |
| 現場の実感を集めたい | 法的な説明が主目的 |
| 関係を作りたい | 結論を急ぐ |
説明会とワークショップを混ぜないでください。
説明が目的なら説明会を開く。意見を聴きたいならワークショップを開く。両方を一度にやろうとすると、どちらも中途半端になります。
場の設計そのものについては、合意形成の設計で扱っています。ここでは運営の実務に絞ります。
誰を呼ぶか
公募だけにすると、来るのはいつもの顔ぶれになります。
関心が高く、時間があり、発言に慣れた人。その人たちの意見は貴重ですが、地域の全体ではありません。
| 集め方 | 性格 |
|---|---|
| 公募 | 関心の高い層が来る |
| 団体からの推薦 | 自治会、商工団体、PTA |
| 無作為抽出 | 普段来ない層に届く |
| 個別の依頼 | 特定の立場の人を確保する |
組み合わせてください。
三つ目は、住民基本台帳から無作為に選んで案内を送る方法です。返信率は高くありませんが、届く層が変わります。
意識的に確保したい立場です。
- 働いている世代 平日昼の開催では来られない
- 子育て中の人 託児がないと参加できない
- 若い世代
- その地域で事業をしている人
- 影響を受けるが、住んではいない人
何人で、どう分けるか
| 人数 | 起きること |
|---|---|
| 3人以下 | 意見の幅が出ない |
| 4〜6人 | 全員が話せる |
| 7人以上 | 話す人と聞く人に分かれる |
七人を超えると、発言しない人が必ず出ます。
全体で30人なら、5〜6卓に分けます。卓ごとに進行役を置ければ理想ですが、人手が足りなければ全体の進行役が巡回します。
卓の組み方
- 立場を混ぜる 同じ属性で固めない
- 知り合い同士を離す いつもの関係が持ち込まれる
- 声の大きい人を分散させる
- 途中で席を替える方法もある
受付で番号を配り、機械的に分けるのが公平です。「好きな席へどうぞ」だと、知り合い同士が固まります。
時間の配分
| 時間 | すること |
|---|---|
| 10分 | 趣旨と、決まっている範囲の説明 |
| 10分 | 自己紹介 |
| 30分 | 意見を出す |
| 30分 | 出た意見を整理する |
| 20分 | 卓ごとの発表 |
| 15分 | 全体の共有 |
| 5分 | 次の予定を伝えて閉じる |
四つ目を削らないでください。
出しっぱなしで終わると、付箋が貼られただけになります。整理する時間を確保して初めて、意見が形になります。
時間が足りないなら、意見を出す範囲を狭めてください。問いを絞れば、短い時間でも成立します。
問いの立て方
| 広すぎる問い | 答えやすい問い |
|---|---|
| このまちをどうしたいか | この道を、どう使えるようにしたいか |
| 課題は何か | 最近、不便だと感じたことは |
| 理想の姿は | ここに何があれば来るか |
抽象的な問いには、抽象的な答えしか返りません。
「賑わいのあるまち」「安全・安心」といった言葉が並ぶのは、問いが広すぎるためです。
道具の使い方
付箋に書くのは、意見を平等に出すためです。
口が達者な人だけが話すのを防ぐ効果があります。しかし、貼っただけでは何も決まりません。
整理の段階では、次のことをします。
- 似たものを寄せる
- 寄せた塊に、見出しを付ける
- 塊どうしの関係を線で結ぶ
- 対立している意見は、対立したまま残す
- すぐできること/時間がかかることを分ける
四つ目が重要です。
「意見が割れました」という記録が、後の判断の材料になります。無理に一つにまとめると、その情報が消えます。
模造紙の後始末
写真を撮るだけでは、読み返せません。
- その日のうちに文字に起こす
- 付箋の文言をそのまま残す
- 誰が言ったかは書かない
- 卓ごとの結果を並べて、共通点と相違点を出す
この作業を省くと、模造紙は倉庫に眠ります。
役割を分ける
| 役割 | すること |
|---|---|
| 全体進行 | 時間管理、指示、全体の共有 |
| 卓の進行役 | 発言を促す、偏りを直す |
| 記録係 | 発言を書き留める |
| 事務局 | 受付、配布、機材 |
進行しながら記録することはできません。
進行に集中すると記録が抜け、記録に集中すると場が止まります。
人手が足りなければ、録音して後で起こす方法があります。参加者に断ってください。
進行役が守ること
- 自分の意見を言わない
- 結論を誘導しない
- 発言していない人に、話を向ける
- 否定的な意見も、そのまま受け止める
- 時間を守る
計画を進めたい人が進行すると、公平性が疑われます。
参加者は、「都合の悪い意見は流されるのではないか」と感じます。
可能であれば、その事業に利害のない職員か、外部の進行役に任せてください。
担当者は、質問に答える立場で同席するほうが場が落ち着きます。
発言しない人
| 理由 | できること |
|---|---|
| 話しにくい雰囲気 | 先に付箋で書いてもらう |
| 専門用語が分からない | 言い換える |
| 意見を持っていない | 具体的な経験を尋ねる |
| 立場上、言えない | 匿名で書ける仕組み |
| 声の大きい人がいる | 順番に話す形にする |
黙っている=同意している、ではありません。
後で「聞いていない」と言われる原因になります。
終わった後
その場で、次の予定を伝えてください。
- 出た意見を、いつまでに整理するか
- どういう形で返すか
- 次に集まるのはいつか
- 連絡先
意見の扱いを返す仕組みについては、合意形成の設計で詳しく扱っています。
- 説明会とワークショップを分けた
- 公募以外の集め方も組み合わせた
- 働いている世代・子育て中の人が参加できる設定にした
- 託児・時間帯を検討した
- 一卓を4〜6人にした
- 受付で機械的に卓を分けた
- 立場を混ぜ、知り合いを離した
- 整理する時間を確保した
- 問いを具体的に立てた
- 対立した意見を、対立したまま記録した
- 進行役と記録係を分けた
- 事業の担当者が進行役を兼ねていない
- 発言していない人に話を向けた
- その日のうちに文字に起こした
- 次の予定と連絡先を伝えた
まとめ
- 説明会とワークショップは別のもの。混ぜない。
- 一卓4〜6人。七人を超えると発言しない人が出る。
- 整理する時間を削らない。出しっぱなしでは形にならない。
- 対立した意見は、対立したまま残す。それが後の材料になる。
- 進行役と記録係を分ける。事業の担当者が進行を兼ねない。
行政の側で説明会に立ち、地権者と交渉し、部局間を調整してきた立場から、場の設計をお引き受けしています。
研修だけでなく、実際の協議への同席も承っています。