CHIOU / 株式会社地央

転売を禁じる特約 ── どこまで拘束できるか

この記事の要点
  • 所有権を得た者は、原則として自由に処分できる
  • 転売を禁じる特約は、当事者の間では効くことがある
  • しかし第三者への売却そのものを止める力はない
  • 実効性を持たせるには、別の手当てが要る

「この土地は転売しないでください」──契約書にそう書けば、守らせられるのか。

答えは、効く場面と効かない場面があるです。そして、その区別が実務で問題になります。

この記事では、どこまで拘束できるかを整理します。

出発点 ── 所有権は自由

処分の自由が原則

所有権を取得した者は、その物を使い、収益を上げ、処分することができます。

処分には、売却・贈与・担保設定が含まれます。

この自由を制限するには、相応の根拠が要ります。

制限できる根拠
法令 農地法の許可、国土利用計画法の届出
物権的な制限 抵当権、地役権など
当事者の合意 特約。ただし効力に限りがある

三つ目が、この記事の主題です。

特約は、誰を縛るか

債権的な効力にとどまる

「転売しない」という約束は、契約した相手方に対する債務です。

効くか
売主と買主の間 効く。約束違反として責任を問える
買主が売った第三者 及ばない
売却そのもの 止められない。移転登記は通る

ここが最も誤解されるところです。

特約に違反して売却されても、その売買契約が無効になるわけではありません。

第三者は有効に所有権を取得します。売主が問えるのは、約束を破った買主に対する責任だけです。

問える責任

  • 損害賠償 実際に生じた損害を証明する必要がある
  • 違約金 あらかじめ額を定めておけば、証明の負担が減る
  • 契約の解除 既に移転が済んでいれば、実際上は難しい

違約金の定めがなければ、実際には請求が難しくなります。

「転売されて損害が出た」と言っても、その額をどう算定するかが問題になります。

効力が否定されうる場合

当事者の間でも効かないことがある

特約そのものが無効とされる可能性があります。

問題となる点 内容
期間の定めがない 永久に拘束することは認められにくい
合理的な理由がない 何のための制限かが説明できない
制限が過大 目的に照らして必要な範囲を超える
相手が消費者 一方的に不利な条項として無効となりうる
違約金が過大 平均的な損害を超える部分

「とりあえず書いておく」では、いざというとき使えません。

特約を置くなら、期間・範囲・理由を明確にしてください。

実効性を持たせる方法

特約だけでは足りない

本当に転売を防ぎたいなら、債権的な約束以外の手当てが要ります。

方法 仕組み
買戻しの特約 登記できる。第三者にも対抗しうる
再売買の予約 仮登記により順位を保全できる
所有権移転の時期を遅らせる 代金完済まで移転しない
解除条件を付ける 一定の事由で契約が失効する
抵当権を残す 実質的に売りにくくなる
違約金を高く定める 経済的な抑止

登記できるかどうかが、決定的な違いです。

登記があれば、第三者はその存在を知ったうえで取引することになります。

ただし、いずれの方法にも要件と期間の制限があります。使えるかどうかは事案によります。

買戻しの特約

売主が、一定期間内に代金等を返して買い戻せるという定めです。

  • 売買契約と同時にしなければならない
  • 期間に上限がある
  • 売買契約と同時に登記すれば、第三者に対抗できる
  • 返す額にも定めがある

要件が細かく、後から付けることはできません。

使うなら、契約の設計段階から組み込む必要があります。

どういう場面で使われるか

場面 目的
自治体の分譲地 投機目的の取得を防ぎ、定住を促す
親族間の売買 家を外に出したくない
補助金を受けた土地 目的外の使用を制限する
分譲事業者 街並みの維持、転売益の抑制
事業用地の譲渡 用途の維持
自治体の分譲では、別の仕組みが使われる

定住促進の分譲地などでは、単なる特約ではなく、条例や要綱に基づく制度が組まれていることがあります。

  • 一定期間の居住を条件に、価格を下げる
  • 期間内に転売した場合、補助金の返還を求める
  • 買戻しの特約を登記する
  • 用途を制限する地区計画や建築協定を併用する

買う側は、これらの条件を必ず確認してください。

安く買えた理由が、後の制約と結びついています。

調査で確認すること

確認するもの
登記記録に買戻特約・仮登記がないか
過去の売買契約書に、転売制限がないか
補助金・助成を受けた土地か
自治体の分譲地か。要綱の有無
建築協定・地区計画による用途の制限
管理規約による制限(区分所有の場合)
登記に出ない制限がある

債権的な特約は、登記されません。

登記記録を見ても分からないため、前の契約書を確認する必要があります。

  • 売主に、取得時の契約書の提示を求める
  • 補助金の交付決定通知が残っていないか
  • 自治体からの譲渡なら、その時の条件を照会する
  • 売主本人が忘れていることがある

「知らなかった」では済まず、後に返還を求められた例があります。

説明の仕方

避けるべき言い方 適切な言い方
「特約があるので転売できません」 「特約があります。違反した場合の責任はこうです」
「登記にないので制限はありません」 「登記上は確認できません。取得時の契約書も確認しましょう」
「守らなくても大丈夫です」 「損害賠償や違約金を請求される可能性があります」
「無効だから気にしなくていい」 「有効かどうかは事案によります。弁護士にご確認ください」

特約の有効性を、業者が断定しないでください。

効くか効かないかは、期間・理由・当事者の属性によって変わります。判断は弁護士の領域です。

転売制限に関する確認
  • 登記記録に買戻特約・仮登記がないか確認した
  • 取得時の売買契約書を確認した
  • 補助金・助成の有無を確認した
  • 自治体からの譲渡なら、条件を照会した
  • 建築協定・地区計画の制限を確認した
  • (区分所有)管理規約の制限を確認した
  • (特約を置く側)期間を定めた
  • (特約を置く側)制限の理由を明記した
  • (特約を置く側)違約金の額を定めた
  • (実効性が要る)登記できる方法を検討した
  • 特約の有効性を業者が断定していない

まとめ

  • 所有権を得た者は、原則として自由に処分できる。
  • 転売禁止の特約は当事者間では効くが、第三者には及ばない。
  • 違反しても売買は有効。問えるのは相手方への責任だけ。
  • 期間や理由がない特約は、当事者間でも無効とされうる。
  • 実効性が要るなら、登記できる方法を契約の設計段階から組み込む。
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