地盤調査 ── 報告書の、どこを見るか
- 調査は資料 → 現地踏査 → 試験の順で進む
- 戸建てはSWS試験、中高層はボーリングと標準貫入試験
- 試験は点でしか分からない。間は推定している
- 報告書は調べた範囲を示す文書。保証ではない
地盤調査の報告書を渡されても、どこを見ればよいか分からない。
数字が並んでいるが、それが何を意味するのか。どこまで信頼できるのか。
この記事では、調査の進め方と、報告書の読み方を整理します。
三つの段階
| 段階 | すること | 分かること |
|---|---|---|
| 資料調査 | 地形図、古地図、空中写真、既往のボーリングデータ | その土地の成り立ち |
| 現地踏査 | 歩いて見る | 周囲との高低差、擁壁、近隣の状態 |
| 試験 | 実際に測る | その地点の強さ |
一つ目と二つ目で、おおよその見当がつきます。
旧河道、埋立地、盛土。これらは掘る前に分かります。
試験は最後です。先に見当をつけておくと、結果の読み方が変わります。
資料でどこまで分かるか
- 地形分類 台地か低地か、旧河道か
- 明治以降の地図 かつて何があったか
- 空中写真 造成の前後を比べる
- 既往のボーリングデータ 公開している自治体・機関がある
- ハザードマップ 液状化、浸水
- 大規模盛土造成地マップ
近隣のボーリングデータがあれば、地層の重なりが推測できます。
試験の種類
| 試験 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| スクリューウエイト貫入試験 | 戸建住宅 | 安価で早い。深さに限りがある |
| 標準貫入試験(ボーリング) | 中高層、大規模 | 土を採取できる。深くまで測れる |
| 平板載荷試験 | 直接基礎の確認 | 実際に荷重をかける。浅い範囲のみ |
| 表面波探査 | 補助 | 掘らずに測る。精度に限界 |
| 簡易動的コーン貫入試験 | 斜面、補足 | 機材が小さく、狭い場所でも可能 |
戸建てで最も使われるのは一つ目です。
かつてスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていたもので、規格の改正により名称が変わりました。古い資料では旧称で書かれています。
スクリューウエイト貫入試験
先端がねじ状のロッドにおもりを載せ、回転させて地中に入れます。
- おもりだけで沈むか、回転が要るか
- 25cm貫入するのに何回転したかを記録する
- 建物の四隅と中央、計5点程度が一般的
- 半日程度で終わる
| できること | できないこと |
|---|---|
| おおよその硬さが分かる | 土を採取できない |
| 安価 | 土質は音と感触で推定する |
| 狭い敷地でも可能 | 礫や瓦礫があると止まる |
| 深さ10m程度まで | それ以深は分からない |
ロッドが入らなくなっても、そこが良い地盤とは限りません。
- 大きな石や瓦礫に当たっただけ
- 薄い硬い層の上で止まり、その下は軟らかい
- コンクリートの残骸
複数の測点で深さが揃わない場合、この可能性を疑ってください。
標準貫入試験
ボーリングで孔を開けながら、一定の高さから重りを落として打撃します。
- 30cm打ち込むのに要した打撃回数がN値
- 土を採取できるので、土質を目で確認できる
- 深くまで測れる
- 地下水位が分かる
- 費用と日数はSWSより大きい
N値は土質によって意味が違います。
| 読み方 | |
|---|---|
| 砂質土 | 締まり具合を示す |
| 粘性土 | 硬さを示すが、砂ほど当てにならない |
同じN値でも、砂と粘土では扱いが違います。数字だけを比べないでください。
報告書の読み方
| 確認すること | |
|---|---|
| 測点の位置と数 | 建物の配置と対応しているか |
| 深さ方向の変化 | どこで硬くなるか |
| 測点ごとのばらつき | 場所によって大きく違わないか |
| 自沈層の有無 | おもりだけで沈む層があるか |
| 地下水位 | 浅ければ、液状化・沈下に効く |
| 判定と根拠 | なぜその基礎・改良を勧めるのか |
| 調査した日 | 雨季と乾季で地下水位が違う |
測点ごとのばらつきが、いちばん重要です。
同じ敷地でも、切土と盛土にまたがっていれば大きく違います。差が大きければ、不同沈下の懸念があります。
試験は、測った場所のことしか教えません。
5点測ったなら、その5点の間は推定です。
- 測点の間に、局所的な弱い部分があるかもしれない
- 古い井戸、埋められた池、浄化槽の跡
- 地中の障害物
- 測点を外れた場所の状態
「調査したから安全」ではなく「調査した範囲では、こうだった」です。
報告書は、調べた範囲を示す文書であって、地盤の保証ではありません。
いつ、誰が行うか
| 時期 | 設計の前。建物の配置が決まってから |
| 費用負担 | 通常は建築主。契約で確認する |
| 実施 | 専門の調査会社、または施工会社が手配 |
| 結果の扱い | 設計に反映。改良が要れば費用が増える |
調査は建物の計画が決まってから行うのが通常です。
つまり、土地を買う段階では地盤の状態が分かりません。
そこで生じる問題です。
- 買った後に、改良費用が想定を超える
- 予算が狂い、建物の仕様を落とすことになる
- 売主に責任を問えるかが争いになる
対処の方法です。
- 資料調査で見当をつけ、懸念があれば買主に伝える
- 近隣の造成履歴と、改良の有無を調べる
- 売主に、過去の調査資料があるか確認する
- 契約前に簡易な調査を行う特約を検討する
- 改良費用の想定額を、資金計画に見込んでもらう
「地盤は大丈夫です」と業者が断定しないでください。判断には調査が要り、その調査にも限界があります。
説明の仕方
| 避けるべき言い方 | 適切な言い方 |
|---|---|
| 「地盤は問題ありません」 | 「地盤調査は建築の際に行われます。資料上はこの地形です」 |
| 「改良は不要でしょう」 | 「必要かどうかは調査の結果によります。費用を見込んでおいてください」 |
| 「N値が高いので安全です」 | 「土質によって読み方が違います。設計者にご確認ください」 |
| 「調査済みなので安心です」 | 「調べた範囲ではこうでした。測点の間は推定です」 |
- 資料調査で地形分類を確認した
- 古地図・空中写真で過去の状態を追った
- 切土と盛土の境目がないか確認した
- 既往のボーリングデータを探した
- (報告書)測点の位置と数を確認した
- (報告書)測点ごとのばらつきを見た
- (報告書)自沈層の有無を確認した
- (報告書)地下水位と調査日を確認した
- (報告書)判定の根拠が示されているか確認した
- 止まった深さを支持層と読み違えていない
- (売買)改良費用の想定を資金計画に見込んでもらった
- (売買)売主に過去の調査資料を確認した
- 地盤の安全性を業者が断定していない
まとめ
- 資料調査で見当をつけてから試験する。順序を飛ばさない。
- 戸建てはSWS試験、中高層はボーリングと標準貫入試験。
- ロッドが止まった深さが、支持層とは限らない。
- 測点の間は推定。報告書は調べた範囲を示す文書で、保証ではない。
- 土地の売買段階では結果が出ていない。改良費用を資金計画に見込む。
不動産事業者、専門職団体の皆様向けにお引き受けしています。報告書の読み方と、説明してよい範囲をお話しします。
構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。