長期優良住宅 ── 長く使うための認定制度
- 認定は建てて終わりではない。維持保全の計画と、その実行が求められる
- 令和4年から既存住宅の増改築も対象になった
- 災害リスクの高い区域を認定の対象外とできる基準が加わった
- 点検と記録は義務であると同時に、将来の売却で価値になる
住宅を長く使うには、丈夫に建てるだけでは足りません。
点検し、傷んだところを直し、その記録を残す。この繰り返しがあって、初めて長く使えます。
長期優良住宅の制度は、建てるときの性能と、その後の維持を一体で扱うものです。
制度の位置づけ
日本では、住宅が比較的短い期間で建て替えられてきたとされています。
この状態には、次の問題があります。
- 住宅への支出が、資産として残らない
- 解体と新築のたびに、資源とエネルギーを消費する
- 廃棄物が発生する
- 中古住宅の市場が育たない
そこで、長く使える住宅を認定し、支援する仕組みが平成20年(2008年)に設けられました。
「良いものをつくり、きちんと手入れして、長く大切に使う」という考え方です。
認定の基準
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 劣化対策 | 構造躯体が長期にわたり使用できること |
| 耐震性 | 大規模な地震後も、改修して住み続けられる |
| 維持管理・更新の容易性 | 配管の点検・交換がしやすい構造 |
| 省エネルギー性 | 断熱等の性能 |
| 居住環境 | 地区計画、景観計画等との調和 |
| 住戸面積 | 一定以上の広さ |
| 維持保全計画 | 点検の時期と内容を定める |
| 災害への配慮 | 災害リスクの高い区域への対応 |
共同住宅については、可変性(間取りの変更のしやすさ)とバリアフリー性(共用部分の対応)も加わります。
建物には、寿命の長い部分と短い部分があります。
| 耐用の目安 | |
|---|---|
| 構造躯体 | 長い |
| 外装・屋根 | 中程度 |
| 給排水管 | 構造躯体より短い |
| 設備機器 | 短い |
寿命の短いものを交換するために、寿命の長いものを壊さなければならない。この構造だと、長く使えません。
たとえば、配管をコンクリートに埋め込むと、交換の際に躯体を壊すことになります。
点検口を設ける、配管を躯体から独立させる。こうした配慮が求められます。
災害への配慮
令和4年(2022年)から、災害の危険性が高い区域について、認定の対象外とすることができる基準が加わりました。
対象となりうる区域の例です。
- 災害危険区域
- 土砂災害特別警戒区域
- 地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域
- 浸水想定区域のうち、市町村が定める区域
また、区域内であっても災害への配慮に関する措置を求めるという運用もありえます。
「長く使える住宅」を、災害で失われる可能性が高い場所には認定しない。そういう考え方です。
具体的にどの区域を対象外とするかは、所管する行政庁が定めます。市町村によって異なります。
この考え方は、立地適正化計画において災害リスクの高い区域を居住誘導区域に含めない運用と同じ方向を向いています。
既存住宅も対象に
従来、認定の対象は新築が中心でした。
制度の改正により、既存の住宅を増改築して基準を満たす場合にも、認定を受けられるようになりました。
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 既存住宅の増築・改築 |
| 基準 | 新築とは別に定められている |
| 意義 | 既にある住宅の質を上げる方向 |
新築を増やすのではなく、既存のストックを良くする。住宅政策全体の方向と一致しています。
耐震改修、省エネ改修、劣化対策をまとめて行う場合、認定を目指すという選択肢があります。
支援の内容
| 分野 | 内容 |
|---|---|
| 税 | 所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税に関する措置 |
| 融資 | 金利の優遇を受けられる住宅ローンがある |
| 補助 | 一定の要件を満たす場合の補助事業 |
| 地震保険 | 耐震性能に応じた割引 |
要件と期限があり、改正もあります。適用の可否は、税理士または所管の窓口にご確認ください。
費用との関係
認定を受けるには、申請の手続きと、それに要する費用がかかります。
- 技術的審査、認定申請の手数料
- 設計にかかる追加の手間
- 基準を満たすための仕様の向上
一方で、税制上の措置や融資の優遇があります。
どちらが有利かは、建てる住宅の規模や、その時点の制度によって変わります。
建築士に試算してもらったうえで判断してください。
認定を受けた後
認定は、維持保全計画に従って点検・修繕を行うことが前提です。
| 内容 | |
|---|---|
| 点検 | 計画に定めた時期・部位について実施する |
| 修繕 | 必要に応じて行う |
| 記録の保存 | 点検・修繕の内容を記録し、保存する |
| 報告 | 所管行政庁から求められた場合に報告する |
これらを怠ると、改善を求められ、従わない場合には認定が取り消されることがあります。
認定が取り消されると、受けていた税制上の措置について、返還を求められる場合があります。
記録が資産になる
点検と修繕の記録は、義務であると同時に、将来の価値につながります。
- 売却の際に、建物の状態を客観的に示せる
- 買主が改修の判断をしやすい
- 金融機関の評価の材料になる
- 次の所有者が、維持を続けやすい
中古住宅が評価されない理由の一つは、状態が分からないことです。
記録があれば、その不確実性が減ります。これが、既存住宅の流通を促す方向とつながっています。
取引で確認すること
| 確認するもの | 備考 |
|---|---|
| 認定を受けているか | 認定通知書 |
| 維持保全計画の内容 | 次に何をすべきか |
| 点検・修繕の記録 | 計画どおり実施されているか |
| 地位の承継 | 手続きが必要 |
| 税制上の措置 | 適用の状況 |
認定を受けた住宅を取得すると、維持保全の義務も引き継ぐことになります。
地位の承継については、所管行政庁への手続きが必要です。
また、前の所有者が点検を怠っていた場合、その状態を引き継ぎます。
取引の際は、記録の有無と内容を必ず確認してください。「認定を受けている」という事実だけでは足りません。
実務での位置づけ
新築を検討する場合
- 認定を受けるかどうかを、設計の早い段階で決める
- 認定の費用と、支援の内容を比べる
- 維持保全を続けられるか 点検の手配、費用
- 災害リスクに関する基準を確認する
既存住宅を改修する場合
- 耐震・省エネ・劣化対策をまとめて行うなら、認定を目指す選択肢がある
- 既存住宅向けの基準を確認する
- 補助制度との関係を確認する
自治体の立場から
- 災害リスクに関する区域の設定
- 居住環境の基準 地区計画、景観計画との整合
- 認定後の維持保全の確認
- 既存住宅の改修を促す施策との連携
- (新築)認定の要否を設計の早い段階で判断した
- (新築)認定の費用と支援の内容を比較した
- (新築)災害リスクに関する基準を確認した
- (改修)既存住宅向けの認定基準を確認した
- 維持保全計画の内容を確認した何を、いつ点検するか
- 点検を続けられる体制と費用を確認した
- 記録の保存方法を決めた
- (取引)認定通知書を確認した
- (取引)点検・修繕の記録を確認した
- (取引)地位の承継の手続きを確認した
- (取引)税制上の措置の適用状況を確認した
まとめ
- 建てるときの性能と、その後の維持を一体で扱う制度。
- 寿命の短い部分を交換するために、長い部分を壊さない設計が求められる。
- 災害リスクの高い区域を認定の対象外とできる基準が加わった。
- 令和4年から既存住宅の増改築も対象。既存ストックの質を上げる方向。
- 点検と記録は義務であると同時に、将来の売却で価値になる。
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