自治体職員のための建築基準法と道路 ── 「建てられる土地」の見極め方
- 接道義務は幅員4m以上の道路に2m以上。満たさない土地は新築も建て替えもできない
- 建築基準法上の道路は第42条のものに限る。市道認定と一致するとは限らない
- 幅員4m未満のみなし道路では、中心線から2m後退するセットバックが要る
- 1981年5月以前の建物は旧耐震基準。空き家の相談では建築時期の確認を習慣に
空き家の相談を受けたとき、公共施設の建て替えを検討するとき、住民から「この土地に家を建てたい」と言われたとき。いずれの場面でも、その土地に建物を建てられるのかという問いが出てきます。
土地を持っていれば建てられる、というわけではありません。建築基準法は、建物そのものの安全性だけでなく、その土地がどのような道路にどう接しているかまで定めています。この条件を満たさない土地では、新築も建て替えもできません。空き家を除却したあとに再建築できないことが分かり、対応が行き詰まる例もあります。
この章では、建築基準法が何を守ろうとしている法律なのか、接道義務とみなし道路の考え方、そして窓口で道路と建物の条件を確認していく順序までを扱います。
建築基準法は何を守る法律か
建築基準法は1950年(昭和25年)に制定された、建物を安全に建てるためのルールです。日本は地震と火災の多い国であるため、この法律は建物が災害から人命と財産を守る役割を担っています。
目的は大きく二つあります。一つは安全の確保。地震で倒れないための耐震基準、火が燃え広がらないための防火基準がこれにあたります。もう一つは健康で快適な環境の確保。建物に十分な光と風が入るよう、採光と換気の基準が定められています。
規定は「単体規定」と「集団規定」に分かれます。単体規定は建物そのものの安全性に関するもの、集団規定は市街地における建物と周囲との関係に関するものです。窓口の相談で問題になるのは、多くの場合この集団規定、なかでも道路に関する規定です。
接道義務 ── 建てられるかどうかの分かれ目
建築基準法では、建物の敷地は幅員四メートル以上の道路に、二メートル以上接していなければならないと定められています。これを接道義務といいます。
この規定の理由は明確です。災害時に消防車や救急車が現場へ到達できるようにするためです。道路が狭すぎたり、敷地が道路に十分接していなければ、火災や救急の際に人命に関わります。
接道義務を満たさない敷地には、新築はもちろん、既存建物を取り壊しての建て替え(再建築)もできません。いわゆる「再建築不可」の土地です。空き家の除却を相談されたとき、この点を確認せずに進めると、更地にしたあとで再建築できないことが判明し、相談者が困る事態になります。
建築基準法上の道路とは
ここでいう「道路」は、日常語の道路ではありません。建築基準法第42条で定められた道路だけを指します。市道として認定されていても、建築基準法上の道路に当たらない場合があります。逆に、私道であっても建築基準法上の道路として扱われる場合があります。
| 第42条1項1号 | 道路法による道路。国道、県道、市町村道など。幅員4m以上のもの。 |
| 第42条1項2号 | 都市計画法、土地区画整理法などによって築造された道路。 |
| 第42条1項3号 | 建築基準法が適用された時点で既に存在していた幅員4m以上の道。 |
| 第42条1項5号 | 位置指定道路。特定行政庁から位置の指定を受けた私道。 |
| 第42条2項 | いわゆる「みなし道路」。適用時点ですでに建物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したもの。 |
みなし道路(第42条2項道路)
建築基準法が適用された時点ですでに建物が立ち並んでいた幅四メートル未満の道について、特定行政庁が指定したものを、実務では「みなし道路」または「二項道路」と呼びます。古い市街地や集落に多く見られます。
この道に接する敷地でも建物は建てられますが、条件があります。道路の中心線から二メートル後退した線を道路の境界とみなすという扱いです。これをセットバックといいます。後退した部分には建物や塀を建てられず、実質的に敷地が狭くなります。
反対側が川や崖の場合は、その境界から四メートル後退した線が道路境界になります。この場合、後退の負担は片側だけが負うことになります。
耐震基準の変遷
建築基準法は、大きな地震のたびに改正されてきました。建物の建築時期を聞くだけで、おおよその耐震性能が見当をつけられるため、空き家や既存建築物の相談では役に立ちます。
| 1950年 | 建築基準法制定。1923年の関東大震災の経験が背景にある。 |
| 1981年6月 | 新耐震基準の施行。1978年の宮城県沖地震を受けたもの。震度6強から7程度の地震で倒壊しないことを目標とする。この前後が最も大きな分かれ目。 |
| 2000年6月 | 木造住宅の基準強化。1995年の阪神・淡路大震災を受け、地盤に応じた基礎、柱頭・柱脚の接合金物、耐力壁の配置バランスが明確化された。 |
| 2011年以降 | 東日本大震災を受け、津波対策と天井脱落防止などの規定が整備された。 |
1981年5月以前に建築確認を受けた建物は旧耐震基準によるもので、耐震診断と改修の補助制度の対象になることが多くあります。相談を受けた際は、建築時期の確認を習慣にしておくとよいでしょう。
既存不適格建築物
建てた当時は適法だったものの、その後の法改正によって現在の基準に適合しなくなった建物を、既存不適格建築物といいます。違法建築物とは区別されます。
既存不適格の建物は、そのまま使い続けることはできますが、大規模な増改築や建て替えの際には、現行基準に適合させる必要が生じます。空き家の活用を検討する相談では、この点が計画を左右します。
窓口での確認手順
一 前面道路が建築基準法上の道路かを確認する
道路の種別(第42条の何号に当たるか)を道路種別図または建築指導部門の台帳で確認します。市道として認定されていても、建築基準法上の道路とは限りません。ここを取り違えると回答がまるごと誤ります。
二 幅員と後退の要否を確認する
幅員が四メートル未満であれば、二項道路の指定があるかを確認し、セットバックの要否と後退距離を確認します。反対側が川や崖の場合は取り扱いが変わります。
三 接道の長さを確認する
道路に二メートル以上接しているかを確認します。旗竿地では、竿の部分の幅が全長にわたって二メートル以上あるかどうかが問題になります。
四 建築時期と耐震基準を確認する
既存建物がある場合、建築確認の時期を確認します。1981年5月以前であれば旧耐震基準であり、耐震診断・改修の補助制度の案内につながります。
五 既存不適格の可能性を確認する
建ぺい率・容積率の超過、接道不足、用途の不適合など、現行基準に合わない点がないかを見ます。増改築や用途変更の相談では、ここが計画の前提になります。
六 建築指導部門につなぐ
可否の判断は建築指導部門が行います。窓口では、道路種別と幅員、接道の状況という事実の確認までを行い、判断は所管につなぎます。とくに二項道路の指定の有無や後退線の位置は、現地の状況によって判断が分かれることがあります。
- 前面道路が建築基準法上の道路か確認した第42条の何号に当たるかまで。市道認定と建築基準法上の道路は別
- 道路の幅員を確認した4m未満なら二項道路の指定の有無を確認
- セットバックの要否と後退距離を確認した反対側が川・崖の場合は片側4m後退
- 接道の長さが2m以上あるか確認した旗竿地は竿部分の幅が全長にわたって2m以上必要
- 私道の場合、所有者と通行・掘削の承諾の有無を確認した
- 既存建物の建築確認の時期を確認した1981年5月以前は旧耐震基準
- 既存不適格に当たる可能性を確認した建蔽率・容積率の超過、接道不足、用途の不適合など
- 防火地域・準防火地域の指定を確認した
- 可否の判断は建築指導部門につないだ
- 相談内容と回答内容を記録に残した
まとめ
- 建築基準法は建物の安全と快適な環境を守る法律。窓口で問題になるのは、多くの場合、道路に関する集団規定。
- 接道義務は、幅員4m以上の道路に2m以上接すること。満たさない土地は新築も建て替えもできない。
- 建築基準法上の道路は第42条で定められたものに限る。市道認定と一致するとは限らない。
- 幅員4m未満のみなし道路では、中心線から2m後退するセットバックが必要になる。
- 1981年5月以前の建物は旧耐震基準。空き家の相談では建築時期の確認を習慣にする。
関連法令
- 建築基準法第42条 この法律における道路の定義を規定。第2項がいわゆるみなし道路。
- 建築基準法第43条 敷地は道路に2m以上接しなければならない旨(接道義務)を規定。
- 建築基準法第44条 道路内の建築制限を規定。
- 建築基準法第3条第2項 既存不適格建築物について規定。
- 建築基準法第6条 建築確認について規定。
- 道路法 国道・県道・市町村道の指定と管理について規定。建築基準法上の道路とは別の体系。
本章は制度理解のための一般的な解説であり、個別案件の法的判断を保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、都市計画課・農業委員会・法務局・建築指導課など所管窓口や専門家(行政書士・土地家屋調査士等)に必ずご確認ください。
全10章の内容は、対象者と時間に合わせて構成し直してお話ししています。
90分の単発講義から、半日研修、複数回の連続講座まで。構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。