空き家活用の合意形成 ── 所有者が、先である
- 空き家は箱ではなく、誰かの財産。所有者が動かなければ進まない
- ワークショップの前に、所有者の意向を確かめる
- 所有者が決められない理由は、感情と相続にあることが多い
- 盛り上がった案が、法令と費用で止まる
地域で話し合い、良い案が出た。ところが、所有者が首を縦に振らない。
空き家の活用は、ここで止まります。
この記事では、所有者をどう扱うかを軸に、進め方を整理します。
順序を間違えない
使える見込みのない建物で盛り上がっても、落胆が残るだけです。
| やること | |
|---|---|
| 一 | 所有者を特定する |
| 二 | 意向を確かめる 貸す気があるか、売る気があるか |
| 三 | 建物の状態と法令上の制限を調べる |
| 四 | ここまでで成り立つ見込みが立ってから、地域に投げる |
逆にすると、こうなります。
- 地域で案がまとまったのに、所有者が断る
- 「勝手に人の家の話をされた」と感じさせる
- 用途変更ができず、案が使えない
- 改修費が想定を大きく超える
熱意を注いだ人ほど、その落胆は大きくなります。
所有者を特定する
- 登記で名義を確認する
- 相続が済んでいないことが多い 名義が祖父母のまま
- 共有なら、全員の同意が要る
- 所在が分からない相続人がいる
- 固定資産税の納税義務者を、市町村が把握している場合がある
名義が古いまま放置されていると、そこから先に進めません。
相続の整理から始まる案件が、少なくありません。
所有者が決められない理由
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 感情 | 親の家、育った家。他人に触られたくない |
| 仏壇・遺品 | 片づけられないまま時間が経っている |
| 相続 | 兄弟で意見が分かれる |
| 費用 | 改修も解体も、まとまった額が要る |
| 不安 | 貸したら返ってこないのではないか |
| 面倒 | 手続きが分からない |
| いつか使う | 具体的な予定はないが、手放したくない |
「もったいない」「地域のために」という説得は、通じません。
所有者にとっては、地域の課題ではなく自分の財産の話です。
聞き取りで確かめることです。
- いま、どうしたいと思っているか
- 何が決められない原因か
- 相続人は何人いるか
- 費用の負担はどこまで可能か
- 条件次第で考えられるか
不安に、制度で応える
| 不安 | 応え方 |
|---|---|
| 返ってこないのでは | 定期借家なら期間で終わる |
| 改修費が出せない | 借主負担で改修する形もある |
| 壊されたら困る | 原状回復の範囲を契約で定める |
| 誰が入るか不安 | 借主を選べる形にする |
| 管理ができない | 管理を委託する仕組み |
| 売ると税が心配 | 税理士に確認するよう案内する |
市町村に、空き家バンクや改修の補助制度がある場合があります。
その市町村で使えるものを、具体的に示してください。「制度があるらしい」では動きません。
三者の関係
| 望むこと | 心配なこと | |
|---|---|---|
| 所有者 | 負担が減ること | 財産を失うこと |
| 地域 | まちが良くなること | 知らない人が来ること |
| 担い手 | やりたいことができる | 投資を回収できるか |
三者が揃わないと、事業になりません。
地域の意欲だけでも、担い手の熱意だけでも、所有者の善意だけでも足りません。
ワークショップで扱えるのは、主に地域と担い手の部分です。所有者との交渉は、別に行います。
ワークショップで扱えること
| 扱える | 扱えない |
|---|---|
| 何があれば地域が助かるか | 所有者の意思決定 |
| どういう使い方があるか | 法令上できるかどうか |
| 誰が関われるか | 改修費の実額 |
| 地域の側の協力 | 事業として成り立つか |
出たアイデアが実現できるかは、法令と費用で決まります。
- その用途が、その用途地域で可能か
- 用途変更の確認申請が要る規模か
- 消防設備の要件 宿泊や不特定多数の利用は厳しくなる
- 既存不適格の是正が必要か
- 接道、上下水道
- 耐震性
- 改修費の見積り
「カフェにしよう」と決まってから、消防設備で断念する例があります。
用途を絞る前に、建築士と消防署に相談してください。
手続きの詳細は、空き家を活用するで扱っています。
「埋めること」を目的にしない
空室を埋めれば解決、とはなりません。
- 需要のない業種が入れば、また空く
- 短期間で撤退すれば、次の借り手が付きにくくなる
- 所有者の不信が強まる
- 地域の期待も、二度目は集まらない
一度失敗した空き家は、次の活用がさらに難しくなります。
急いで埋めるより、成り立つ形を作るほうが先です。
誰が続けるか
| 必要なこと | |
|---|---|
| 日々の運営 | 誰が、どれだけの時間を割くか |
| 閑散期 | 収入がなくても賃料と光熱費はかかる |
| 設備の更新 | 数年後、誰が費用を出すか |
| 担い手の交代 | 始めた人が続けられなくなったら |
| 所有者との関係 | 契約の更新、賃料の見直し |
補助金は改修には使えても、運営の赤字は埋められません。
閑散期を含めた年間の収支を、計画の段階で試算してください。
そして、始めた人が離れたときにどうするかを決めておいてください。多くの取組みが、ここで止まります。
- 登記で所有者を確認した
- 相続が済んでいるか確認した
- 共有なら、全員の所在を確認した
- 所有者の意向を、ワークショップの前に確かめた
- 決められない理由を聞き取った
- 不安に、制度と契約で応える案を示した
- 市町村の補助制度を具体的に確認した
- 用途地域で、その用途が可能か確認した
- 用途変更の確認申請の要否を確認した
- 消防署に事前相談した
- 建築士による調査を行った
- 改修費に予備費を見込んだ
- 閑散期を含めた年間収支を試算した
- 担い手が離れたときの取り決めをした
まとめ
- 所有者の意向を確かめてから、地域に投げる。順序を逆にしない。
- 決められない理由は、感情と相続にあることが多い。
- 「もったいない」「地域のために」では動かない。不安に制度で応える。
- 三者(所有者・地域・担い手)が揃わないと事業にならない。
- 埋めることを目的にしない。一度失敗すると、次はさらに難しくなる。
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