CHIOU / 株式会社地央

グリーンビルディング認証 ── 誰のための評価か

この記事の要点
  • 「グリーンビルディング」に法令上の定義はない。認証制度によって基準が違う
  • 認証は主に投資家とテナントに向けた言語。個人の売買では効きにくい
  • 省エネ性能の表示は、販売・賃貸の場面で努力義務とされている
  • 認証には費用と手間がかかる。何のために取るかを決めてから動く

環境に配慮した建物を、どう評価するか。この問いに対して、複数の認証制度が並立しています。

ただし、「グリーンビルディング」という言葉自体に、法令上の定義はありません。どの制度による評価かで、意味が変わります。

この記事では、制度の違いと、実務での位置づけを整理します。

まず、法令と任意を分ける

義務は建築物省エネ法、認証は任意
性格 内容
建築物省エネ法 法令上の義務 省エネ基準への適合。満たさなければ着工できない
各種の認証 任意 基準を上回る性能や、環境配慮の取組みを評価する

認証を取らなくても、違法にはなりません。

認証は、「基準は満たしているが、それ以上に何をしているか」を第三者が評価し、外部に示すための仕組みです。

したがって、「誰に、何を示したいのか」が決まっていなければ、取る意味がありません。

主な認証制度

制度 評価の重点 主な利用者
CASBEE 建築物の環境性能を総合的に評価 設計者、事業者。自治体の届出制度で用いられる例がある
BELS 省エネ性能に特化 幅広く。住宅にも用いられる
DBJ Green Building認証 環境・社会への配慮を含むESGの観点 投資家、大規模な不動産
LEED 国際的な基準による環境性能 外資系企業、国際的な投資
WELL そこにいる人の健康 オフィス、テナント誘致
評価しているものが違う

「認証を取得している」という事実だけでは、何が良いのか分かりません。

  • 省エネ性能が高いのか
  • 周辺環境への配慮があるのか
  • 運用の体制が整っているのか
  • 働く人の健康に配慮しているのか

制度によって、見ているものが違います。

「どの制度の、どの水準か」まで確認してください。

また、認証には有効期間があり、更新が必要なものがあります。取得した時点の評価が、現在も維持されているとは限りません。

CASBEEの位置づけ

建築物の環境性能を、複数の観点から総合的に評価する制度です。

評価の結果は段階で示されます。一部の自治体では、一定規模以上の建築物について届出を求める制度に用いられています。

その自治体で届出の対象になるかは、条例等で確認してください。

BELSと省エネ性能の表示

販売・賃貸の場面で表示が求められる

建築物省エネ法に基づき、建築物の販売または賃貸を行う事業者には、省エネ性能を表示することが努力義務とされています。

内容
対象 販売・賃貸される建築物
表示するもの 省エネ性能の評価、目安となる光熱費など
位置づけ 努力義務

広告に省エネ性能のラベルを掲載する形が想定されています。

表示の方法と、対象となる建築物の範囲は、制度の運用によります。

国土交通省が公表する資料で、最新の内容を確認してください。

星の意味

星が少ない=基準を満たしていない、ではない

省エネ性能を星の数で示す表示があります。

この星は、省エネ性能の水準を段階的に示すものです。

星の数が少ないことが、直ちに「基準に適合していない」ことを意味するわけではありません。

基準への適合は義務であり、その上でどれだけ上回っているかを示すのが星です。

顧客に説明する際は、「基準は満たしたうえで、さらにどの水準か」という位置づけで伝えてください。

誰のための評価か

主に投資家とテナントに向けた言語

認証制度が発達してきた背景には、投資判断に環境の要素を組み込む動きがあります。

誰が なぜ求めるか
投資家 運用資産の環境性能を、開示する必要がある
大企業のテナント 自社の排出量に、入居するビルの分が含まれる
金融機関 融資の条件や金利に反映する仕組みがある
事業者 他の物件との差別化

いずれも、第三者に説明する必要がある立場です。

認証は、その説明に使える共通の物差しとして機能します。

個人の売買では、まだ効きにくい

正直に伝えるべきこと

「環境性能が高いから、売却時に高く評価されます」とは、まだ言い切れません。

理由です。

  • 中古住宅の評価が、築年数中心の慣行から十分に脱していない
  • 買主が性能を比較できる材料が、まだ揃っていない
  • 認証を取得している住宅の数が限られる
  • 認証の費用を、価格に転嫁しにくい

一方で、光熱費が下がることは、居住中の実利として説明できます。

断熱性能が高ければ、室温が安定し、暖冷房の負荷が下がる。これは資産価値の話ではなく、暮らしの話です。

将来の価値を断定せず、いま得られるものを説明してください。

費用と手間

項目 内容
申請の費用 制度と規模による
設計の手間 評価の項目に沿った設計と、根拠資料の作成
仕様の向上 水準を上げるための設備・材料の費用
審査への対応 質疑への回答、資料の追加
更新 有効期間がある制度では、更新の費用
目的から逆算する

認証は、取ること自体が目的にはなりません。

次を先に決めてください。

  • 誰に示すのか 投資家、テナント、金融機関、購入者
  • その相手が、どの制度を見ているか
  • どの水準まで必要か
  • 費用に見合う効果があるか 賃料、稼働率、資金調達の条件

相手が見ていない制度の認証を取っても、費用が回収できません。

関係する法令

法令 関わり
建築物省エネ法 省エネ基準への適合義務、性能の表示
都市緑地法 緑化率、緑地の確保
地球温暖化対策推進法 排出量の算定・報告
自治体の条例 環境性能の届出、再エネ設備の設置に関する制度
法令名は正確に

再生可能エネルギーに関して、「再生可能エネルギー法」という名称の法律はありません。

関係するのは、次のようなものです。

  • 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 固定価格買取制度等
  • 地球温暖化対策推進法 促進区域、地域脱炭素化促進事業
  • 建築物省エネ法 省エネ性能の基準
  • 自治体の条例 太陽光発電設備の設置に関する規制など

いずれも、太陽光発電の設置を一律に義務づけるものではありません。

一部の自治体では、条例により一定の建築物への設置を求める制度を設けている例があります。その自治体で確認してください。

説明するとき

避けるべき言い方 適切な言い方
「グリーンビルディングです」 「◯◯認証の◯段階を取得しています」
「資産価値が上がります」 「光熱費が下がります。将来の評価は市場次第です」
「◯%削減できます」 「条件によりますが、この設備の一般的な効果は…」
「法律で義務化されています」 「基準への適合は義務、認証は任意です」
数値を断定しない

「LED照明で約50パーセント削減」といった数値は、従来の照明の種類、使用時間、設置環境で大きく変わります。

比較の前提を示さずに数値だけを伝えると、実際の効果との差が生じたときに問題になります。

示すなら、前提条件を添えてください。

認証に関する確認
  • 建築物省エネ法の基準への適合を確認したこれは義務
  • どの制度の、どの水準の認証か確認した
  • 認証の有効期間と更新の状況を確認した
  • その制度が評価している対象を確認した省エネ/総合/ESG/健康
  • (自治体の届出)条例で対象になるか確認した
  • 省エネ性能の表示について、対象と方法を確認した
  • (取得を検討)誰に示すのかを先に決めた
  • (取得を検討)相手が見ている制度か確認した
  • (取得を検討)費用と効果を比較した
  • 法令名を正確に用いた
  • 削減率の数値に、前提条件を添えた
  • 将来の資産価値を断定していない

まとめ

  • 「グリーンビルディング」に法令上の定義はない。どの認証かで意味が変わる。
  • 省エネ基準への適合は義務、認証は任意。この区別を明確にする。
  • 認証は主に投資家とテナントに向けた言語。個人の売買ではまだ効きにくい。
  • 将来の資産価値ではなく、光熱費や室温といった実利で説明する。
  • 「再生可能エネルギー法」という法律はない。法令名は正確に用いる。
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