道路事業と街路事業 ── 同じ道路を、二つの仕組みでつくる
- 道路をつくる仕組みは二つある。道路法による道路事業と、都市計画法による街路事業
- 街路事業は、都市計画法59条の認可・承認を受けて行う都市計画事業。主に既成市街地が対象になる
- 街路事業は先に都市計画で位置を決めるため、事業に入る前から建築の制限がかかる
- 幅員や設計速度は道路構造令で決まる。ただし都道府県道・市町村道は各自治体の条例が基準になる
道路は道路管理者が道路法にもとづいてつくるもの、と思われがちです。
しかし、市街地の道路の多くは、都市計画法にもとづく街路事業でつくられています。根拠法が違えば、決め方も、沿道にかかる制限も変わります。
この記事では、二つの仕組みの違いと、幅員や設計速度がどう決まるかを整理します。
二つの仕組みがある
同じ「道路をつくる」でも、拠って立つ法律が二つあります。
ひとつは道路法にもとづく道路事業。路線を認定し、区域を決め、工事をして供用する、道路そのものの管理の系統です。
もうひとつは都市計画法にもとづく街路事業。国土交通省は、街路事業を「都市計画法第59条の認可又は承認を得て実施される都市計画事業のうち、都市計画道路を整備する事業」と説明しています。都市内、主に既成市街地で、都道府県や市町村等が実施します。
目の前の道が街路事業で整備される予定であれば、その計画は都市計画課が持っています。道路管理課に聞いても、都市計画道路の区域や事業の時期までは分かりません。
どちらの仕組みで動いている道路なのかを、最初に見分けてください。そこを取り違えると、聞く相手も、読む図面も変わってしまいます。
根拠法と対象が違う
| 道路事業 | 街路事業 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 道路法 | 都市計画法(59条の認可・承認) |
| 位置づけ | 道路の新設・改築 | 都市計画事業として行う都市計画道路の整備 |
| 主な対象 | 一般国道、都道府県道など、都市内外を通じた路線 | 都市内、主に既成市街地の都市計画道路 |
| 先に決めるもの | 路線の認定と、道路の区域 | 都市計画(都市施設としての道路) |
| 主な窓口 | 道路管理課、土木事務所 | 都市計画課、街路担当課 |
どちらの事業で整備された道路も、完成すれば道路法上の道路として管理されます。違うのは、そこに至るまでの手続きです。
つくり方の順序が違う
道路事業 ── 区域を決めてから買う
路線が認定され、道路の区域が決定・公示されます。区域が決まった範囲で用地の買収と物件の補償を行い、工事をして供用を開始します。
市街化が進んでいない区域で採られることが多く、事業がまとまった段階で区域を決められるのが特徴です。
街路事業 ── 都市計画で位置を決めてから、事業化する
先に都市計画で道路の位置と幅員を決めます。将来の市街地の姿を見据えて決めるため、計画決定から事業化までに長い期間が空くことがあります。
事業化の段階で都市計画法59条の認可・承認を受け、そこから用地の取得と工事に入ります。
建物が建て込んだ市街地で、事業が固まってから区域を決めようとしても、その間に沿道の建て替えが進みます。
先に都市計画で線を引いておくことで、将来の道路用地に重い建物が建つのを抑える。街路事業が既成市街地で使われるのは、この順序に意味があるからです。
できる構造
計画決定だけで、制限が始まる
都市計画施設の区域内で建築物を建てるには、事業の認可を受ける前の段階から、都道府県知事等の許可が必要です。
許可の基準は限られており、階数が二以下で地階を有しないこと、容易に移転し、または除却できる構造であることなどが求められます。
つまり、計画決定から事業化までの長い期間、沿道の土地は建て方を制限されたまま置かれます。取引の場面では、この制限がかかっているかどうかが価格にも計画にも影響します。
制限の中身と、許可の申請については都市計画施設の区域内の建築制限 ── 計画決定だけで、制限はかかるで扱っています。
自動車専用道路
(一般道路)
幅員と設計速度は、構造令で決まる
道路の構造の一般的な技術的基準は、道路法30条を受けた政令、道路構造令(昭和45年政令第320号)に定められています。
出発点は、道路を四つに分ける区分です。
| 区分 | 場所 | 機能 |
|---|---|---|
| 第1種 | 地方部 | 高速自動車国道・自動車専用道路 |
| 第2種 | 都市部 | 高速自動車国道・自動車専用道路 |
| 第3種 | 地方部 | その他の道路(一般道路) |
| 第4種 | 都市部 | その他の道路(一般道路) |
区分が決まると、計画交通量や地形に応じて級が決まり、級に応じて設計速度が決まります。設計速度が決まれば、曲線半径や縦断勾配が連動して決まる。一つ決まると、次が決まる仕組みになっています。
車線の幅員も、この区分と級で定められています。
| 区分 | 車線幅員 |
|---|---|
| 第1種 | 3.50メートル(第4級は3.25メートル) |
| 第2種 | 第1級 3.50メートル、第2級 3.25メートル |
| 第3種 | 第1級 3.50メートル、第2級 3.25メートル、第3級 3.00メートル、第4級 2.75メートル |
| 第4種 | 第1級 3.25メートル、第2級・第3級 3.00メートル |
市街地の道路は第4種にあたります。地方部の高規格な道路と同じ幅を、市街地の道路に当てはめる必要はないという整理です。
画一から、柔軟へ
平成15年7月の改正で、構造令の運用は大きく変わりました。
ひとつは小型道路の新設です。小型自動車等のみの通行の用に供する道路という区分が置かれ、建築限界の高さは3メートル、車線幅員は2.75メートルから3.25メートルとされました。大型車が通らない住宅地の道路を、無理に大型車の基準でつくらなくてよくなったということです。
もうひとつは幅員の弾力的な運用です。交通の状況により必要がある場合には0.25メートルを加え、地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合には0.25メートルを減じることができる、という形で幅がもたされました。
令和2年の道路法等の改正(令和2年法律第31号、同年11月25日施行)で、歩行者利便増進道路の制度が設けられました。「ほこみち」と呼ばれています。
歩行者の通行に必要な幅員を確保したうえで、ベンチや食事施設などの占用を柔軟に認めるものです。道路を通り抜けるための空間としてだけでなく、人がとどまる場所として扱うという考え方が、法律の側にも入ってきました。
地方道の基準は、いまは条例
ここは実務で見落とされやすいところです。
平成23年のいわゆる一括法により道路法30条が改正され、都道府県道および市町村道の構造の技術的基準は、政令で定める基準を参酌して、道路管理者である地方公共団体の条例で定めることになりました。
各自治体は平成24年から25年にかけて条例を整備しています。地方道について数値を確かめるときは、道路構造令ではなく、その自治体の条例を見てください。
政令の値と同じ条例も多くありますが、地域の実情に応じて別の値を採っている例もあります。
実務での確認
沿道の土地を扱うとき、確認する順序はおおむね次のようになります。
- 都市計画道路の区域にかかっているかを、都市計画課で確認した
- 計画決定だけの段階か、事業認可を受けた段階かを確認した
- 都市計画で定められた幅員と、現況の幅員を照合した
- 道路法上の道路の区域を、道路管理課・土木事務所で確認した
- 建築の制限がかかる範囲と、許可の要否を確認した
- その道路の管理者が国・都道府県・市町村のどれかを確認した
- 地方道であれば、構造の基準は当該自治体の条例であることを踏まえた
- 買主・依頼者に、制限の有無と時期の見通しを説明し、記録に残した
計画決定から事業化までの時期は、行政の判断によります。「いつ事業化されるか」は断定せず、現在どの段階にあるかまでを伝えてください。
まとめ
- 道路をつくる仕組みは二つ。道路法にもとづく道路事業と、都市計画法にもとづく街路事業。
- 街路事業は都市計画法59条の認可・承認を受けて行う都市計画事業で、主に既成市街地が対象。
- 街路事業は先に都市計画で位置を決めるため、事業化の前から沿道に建築の制限がかかる。
- 幅員と設計速度は道路構造令の区分と級で決まる。市街地の道路は第4種。
- 都道府県道・市町村道の構造の基準は、いまは各自治体の条例。政令をそのまま当てはめない。
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