熊本市の宿泊税 ── 民泊も、集めて納める側になる
- 熊本市宿泊税は2026年7月1日から。旅館・ホテル・簡易宿所だけでなく、住宅宿泊事業(民泊)も課税対象
- 宿泊者1人1泊につき200円。免税点はなく、修学旅行の課税免除もない
- 民泊の事業者は特別徴収義務者になる。県への届出とは別に、市へ経営申告書を出し、毎月申告して納入する
- 宿泊者名簿とは別に帳簿が要る。届出をしていない施設も課税される
民泊の収支を組むとき、宿泊税は見落とされます。金額が小さく、しかも自分の懐に入らない金だからです。
ただ、税額の大小と手続きの重さは別の話です。熊本市内で民泊を営むなら、県への届出とは別に、市に対して継続する義務が生じます。
この記事では、何が課税され、誰が集めて納め、どんな書類と帳簿が要るのかを、熊本市の資料に沿って整理します。
民泊も、課税の対象になっている
熊本市宿泊税条例は2026年7月1日に施行され、同日のチェックインから課税が始まっています。県内では最初の宿泊税です。熊本県には宿泊税がないので、熊本市内かどうかで、そもそも義務があるかどうかが分かれます。
課税対象は、熊本市内にある宿泊施設への宿泊です。旅館業法の旅館・ホテル営業、簡易宿所営業に加えて、住宅宿泊事業に係る施設も含まれます。下宿営業は除かれています。
税率は宿泊者1人1泊につき200円の定額です。宿泊料金による区分はなく、免税点も設けられていません。課税を免除されるのは、外国大使等の任務に伴う宿泊だけです。修学旅行生等の課税免除は設けられていません。
納税義務者は宿泊者です。事業者は、宿泊者から預かって市へ納める立場になります。これを特別徴収義務者といいます。
だから収支表では、200円を収入にも費用にも入れません。入れるべきは、集める手間と、申告する手間のほうです。宿泊料金に含めて表示するのか、現地で別に受け取るのか、予約サイトの設定をどうするのかを、営業を始める前に決めておくことになります。
課税開始日の前日までに、市へ出す書類がある
特別徴収義務者は、市に「宿泊税に係る経営申告書」を提出します。提出先は熊本市の市民税課です。
期限は、課税開始日の前日まで。これから始める施設であれば、営業開始日の前日までということになります。旅館業の許可を受けている事業者と、住宅宿泊事業の届出をしている事業者が、どちらも対象です。
住宅宿泊事業の届出は熊本県に出します。宿泊税の経営申告書は熊本市に出します。役所も、書類も、期限も別です。
届出が済んだから終わり、と考えると、ここが抜けます。窓口が分かれていることそのものが、抜け落ちの原因になります。
何が「宿泊料金」に当たるか
税額は定額なので、料金がいくらでも200円です。それなら料金の範囲は関係ないかというと、そうではありません。宿泊料金がかからない宿泊には、宿泊税が課されないからです。何が宿泊料金に当たるかは、課税されるかどうかの境目として効いてきます。
| 扱い | |
|---|---|
| 清掃代 | 含む |
| 寝具使用料 | 含む |
| サービス料 | 含む |
| 食事代 | 含まない |
| 消費税 | 含まない |
| 予約サイトの事務手数料 | 含まない |
民泊では清掃代を別建てにすることが多いので、ここは実際に効きます。宿泊料は取らず清掃代だけ受け取る、という組み方をしても、宿泊料金があるものとして扱われます。
予約サイトのポイントを使って支払われた場合は、割引前の金額が基準になります。また「宿泊」に当たるかどうかは、契約上宿泊として扱われるか、日をまたぐ6時間以上の利用か、で判断されます。
毎月、翌月末日までに納める
申告と納入は毎月です。各月の初日から末日までの宿泊にかかる宿泊税を、翌月の末日までに申告して納入します。
年4回にまとめる特例もあります。年間の納入額が一定額以下であることなどが条件で、承認を受ける必要があります。要件の細かいところは熊本市が「宿泊税特別徴収の手引」を公開しているので、そちらで確認してください。
営業日数が180日以内であっても、営業した月については毎月の申告が生じます。季節営業でも、義務は月単位で回ってきます。
なお、申告と納入は税の手続きです。制度の内容は熊本市の市民税課が窓口ですが、個別の税務の判断は税理士の領域になります。
帳簿は、宿泊者名簿とは別に要る
住宅宿泊事業者には、住宅宿泊事業法によって宿泊者名簿を備える義務があります。宿泊税には、それとは別に帳簿の義務があります。
宿泊者名簿と、宿泊税の帳簿は、記録する項目が違います。
宿泊税の帳簿に記載するのは、宿泊年月日、宿泊者数、宿泊税の課税対象となる宿泊者数、宿泊税額です。保存期間は5年間とされています。宿泊に関する書類も、別途保存が求められます。
名簿は「誰が泊まったか」、帳簿は「何人分の税をいくら預かったか」を残すものです。目的が違うので、片方で代用できません。
脱税に対する罰則と、過少申告・不申告に対する加算金、延滞金の定めもあります。加算金や延滞金の率は年によって変わるので、額を見積もる前に市に確認してください。
委託していても、義務は経営者に残る
家主不在型の民泊では、住宅宿泊管理業者に管理を委託します。では宿泊税を集めて納めるのは誰か、という問題が出てきます。
特別徴収義務者は、原則として宿泊施設の経営者です。旅館業の許可を受けた者、あるいは住宅宿泊事業の届出をした者が、それに当たります。管理を委託していても、義務の主体が自動的に移るわけではありません。
熊本市のFAQは、全面的に経営を委託している場合などには管理業者が該当しうる、という趣旨の説明をしています。境目のある話なので、委託契約を結ぶ前に、誰が徴収し誰が納入するのかを決めておくほうが確実です。実際に集めるのは委託先、義務を負うのは自分、という形になることが多いはずです。
届出をしていない施設も、課税される
熊本市のFAQには、いわゆる違法民泊についても宿泊税は課税される、と書かれています。届出がないことは、課税されない理由になりません。
これは、届出をせずに営業している施設にとって、住宅宿泊事業法とは別の経路で行政に把握されうる、ということでもあります。市は関係機関と連携して適正な課税を進める方針を示しています。
逆にいえば、きちんと届出をして営業する側から見ると、条件がそろえられる方向の話です。届出のない施設が価格で有利になる構図は、ここでは成り立ちません。
熊本市内かどうかで、扱いが分かれる
宿泊税があるのは熊本市です。熊本県には宿泊税がなく、熊本市が県内で最初の導入でした。合志市でも益城町でも、物件が熊本市外であれば、いまのところ宿泊税の手続きは生じません。
同じ県内でも、市境をまたぐと義務の数が変わります。物件を比べるときは、そこも見ておくことになります。
- 物件が熊本市内かどうかを確認した
- 営業開始日の前日までに、経営申告書を市へ出す段取りにした
- 宿泊税を宿泊料金に含めるか、別に受け取るかを決めた
- 予約サイトの設定で、宿泊税をどう扱うかを確認した
- 清掃代を別建てにしている場合の扱いを確認した
- 宿泊者名簿とは別に、宿泊税の帳簿を作る用意をした
- 管理を委託する場合、誰が徴収し誰が納入するかを契約で決めた
- 毎月の申告納入を、誰がいつ行うかを決めた
まとめ
- 熊本市宿泊税は2026年7月1日から。住宅宿泊事業(民泊)も課税対象で、1人1泊200円、免税点なし
- 200円は宿泊者から預かる金。事業者は特別徴収義務者として、集めて納める側になる
- 県への届出とは別に、課税開始日(営業開始日)の前日までに、市へ経営申告書を出す
- 申告納入は原則毎月、翌月末日まで。宿泊者名簿とは別の帳簿を5年間保存する
- 管理を委託しても義務の主体は原則として経営者。届出をしていない施設も課税される
熊本県・熊本市の住宅宿泊事業(民泊)の届出、旅館業の許可申請。行政書士 村上事務所(熊本市東区)が承っています。
