地目の変更時期が示すもの ── 田から宅地に変わった年の意味

この記事の要点
  • 地目は現況で決まる。登記・課税・現況の三つがずれる
  • 変更が登記された年は、実際に変わった年より遅いことがある
  • 地歴調査でいちばん効くのは水面が消えた年
  • 雑種地は受け皿。中身は分からない

「地目が畑だったので、農地だったということですね」──それだけでは、履歴を読んだことになりません。

地目は土地の使われ方を示す唯一の公的な記録ですが、変わった年と登記された年がずれ、しかも同じ言葉が幅の広い実態を覆っています。

この記事では、地目の変換年から何が読め、何が読めないかを整理します。

地目は現況で決まる

不動産登記規則99条に、地目は23種類と定められています。田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地。

決め方は現況主義です。所有者がどう呼ぼうと、そのとき現に何に使われているかで決まります。だからこそ、地目の並びは土地の使われ方の履歴になります。

地目は三つあり、それぞれずれる

登記地目・現況地目・課税地目は別のものです。

登記地目は登記記録に書かれたもの。現況地目はいま実際にそうなっているもの。課税地目は市町村が固定資産税を課すために認定したものです。

三つが一致しない土地は珍しくありません。地歴調査では登記地目を軸にしますが、それが現況とずれていた可能性を、常に念頭に置いて読みます。

変更の年は、いつの年か

地目に変更があったときは、その日から1か月以内に変更の登記を申請しなければならないとされています(不動産登記法37条1項)。怠れば過料の定めもあります(同法164条)。

しかし実際には、そのとおりに登記されているとは限りません。

登記の年は「その頃」の目安

造成してから何年も経って、売却や融資の必要が生じたときにまとめて地目変更を出す。そういう例が少なくありません。逆に、現況が変わっても登記が動かないまま残ることもあります。

だから地歴調査では、地目の変換年を点ではなく幅として扱います。「この年までには変わっていた」という上限として読み、下限は航空写真で挟みます。

年代を挟む手順は、この連載の考え方の中心です。台帳と登記が「いつまでに」を示し、航空写真と住宅地図が「いつから」を示す。詳しくは旧土地台帳の読み方閉鎖登記簿で分かることを併せて読んでください。

田・畑から宅地へ

いちばん多く出てくる変換です。読むべきは、その年の前後に何が行われたかです。

農地を農地以外にするには許可か届出が要ります。つまり地目が農地から動いた年の前後に、行政の記録が残っている可能性が高いということです。市町村の農業委員会への照会が効きます。手続そのものは農地転用に整理があります。

そして地歴調査の関心は、その先にあります。田を宅地にするには、埋めるか、盛るかしています。その土が、どこから来たか。

水面が消えた年

ここが、地目の変換でもっとも重い意味を持つところです。

23地目のうち、池沼・ため池・用悪水路・堤・井溝は水にかかわる地目です。これらが宅地や雑種地に変わっている土地は、埋め立てられています。

「何で埋めたか」は、登記からは分からない

埋立てがあったという事実までは、地目の変換が示します。しかし何を入れて埋めたかは、登記記録のどこにも書かれていません。

建設残土か、産業廃棄物か、周辺の切土か。ここを確かめずに「問題なし」と書くことはできません。

当たるのは、その年代の航空写真、市町村への照会、そして周辺の聞き取りです。フェーズⅠは資料調査であり、汚染の有無を証明するものではありません。

埋め立てられた水路や池は、合筆で消えていることがよくあります。いまの地番だけを見ても出てきません。親番までさかのぼり、隣接地の閉鎖された記録まで当たって、はじめて「ここに水路があった」と分かります。

盛土そのものの規制については盛土規制法を、開発行為を伴っていた場合は開発登録簿を確かめます。

雑種地という受け皿

雑種地は「ほかのどれにも当たらない土地」です。定義が残余であるぶん、中身がまったく分かりません。

資材置場、駐車場、露天の物置場、工場の付属地、残土の仮置場。地歴調査でもっとも警戒すべき用途が、そろってここに入ります。

だから雑種地への変換が出てきたら、そこで止まらず、必ず別の資料へ移ります。その年代の旧住宅地図に屋号が出ていないか。航空写真に何が写っているか。滅失した建物の登記記録に「工場」「倉庫」が残っていないか。

宅地から雑種地へ戻る動きに気をつける

地目の変換は、一方向とは限りません。宅地だった土地が雑種地に戻っていることがあります。

建物が取り壊されて更地になれば、宅地の要件(建物の敷地)を欠きます。つまり宅地から雑種地への変換年は、建物が失われた年に近いということです。

この一行を見つけたら、同じ年代の滅失した建物の登記記録を当たります。そこには建物の「種類」が書かれていて、工場だったのか倉庫だったのかが分かります。

特殊な地目が語ること

数は少ないものの、出てきたら見逃せない地目があります。

鉄道用地

駅舎や線路の敷地だけでなく、引込線や操車場の跡地もここに入っていました。工場へ資材を運び込む専用線が引かれていた土地は、鉄道用地から雑種地へ変わっています。

塩田・鉱泉地

沿岸部では塩田が、温泉地では鉱泉地が出てきます。その地域の産業史そのものが、地目に残っています。

墓地・境内地

汚染とは別の筋ですが、取引や造成の可否に直結します。過去に墓地であった土地は、地目が変わっていても、改葬の記録を確かめる必要があります。

何と突き合わせるか

地目だけを並べても、年表は立ちません。三つの資料と重ねます。

資料 地目のどこを裏づけるか
航空写真 変換の下限。実際にいつ変わったか
旧住宅地図 変換後に誰が何をしていたか
行政庁への照会 農地転用、開発行為、埋立ての記録
閉鎖登記簿・旧土地台帳 合筆で消えた地番の地目

依頼者が所有者であれば、固定資産税の課税明細や名寄帳も手に入ります。そこに書かれているのは課税地目なので、登記地目と食い違っていれば、それ自体が「登記が現況に追いついていない」証拠になります。所有者からしか取れない資料なので、着手のときに揃えてもらいます。

現況と登記が食い違っている場合の扱いは表示登記に、調査全体の位置づけは土壌汚染対策法にまとめてあります。

航空写真の集め方と判読の要領は、航空写真で土地の履歴を読むにまとめてあります。

地目の履歴を読むときの確認
  • 変換の年をすべて書き出し、西暦に直した
  • 登記の年を「上限」として扱い、下限を航空写真で挟んだ
  • 水にかかわる地目(池沼・ため池・用悪水路・堤・井溝)が過去にないか確かめた
  • 合筆で消えた地番の地目までさかのぼった
  • 雑種地で止めず、別の資料で中身を当たった
  • 農地からの変換について、行政の記録を照会した
  • 鉄道用地・塩田・墓地などの特殊な地目を見落としていない
  • 現況地目・課税地目とのずれの可能性を書き添えた

まとめ

  • 地目は不動産登記規則99条の23種類。現況で決まるが、登記地目・現況地目・課税地目の三つはずれる
  • 変更の登記は1か月以内が原則だが実際は遅れるので、登記の年は「その頃までに」の上限として読む
  • 田・畑から宅地への変換は造成の年に近く、入れた土の由来が問題になる
  • 池沼・ため池・用悪水路・堤・井溝が消えた年は埋立ての年。何で埋めたかは登記からは分からない
  • 雑種地は受け皿で中身が分からないので、そこで止めずに別の資料へ移る
土地の地歴調査、お引き受けしています。

熊本県内の土地の地歴調査(土壌汚染フェーズⅠ)。法務局と市町村の窓口でしか確認できない資料を、現地で集めます。株式会社地央(熊本市)が承っています。

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