閉鎖登記簿で分かること ── オンラインで取れない記録
- 「閉鎖謄本」には二種類ある。オンラインで取れるものと、取れないもの
- 紙の閉鎖登記簿は管轄の登記所にしかない
- 地歴調査で効くのは甲区より乙区。借りて使っていた者の影が出る
- 保存期間がある。古いものほど、もう無い
「閉鎖謄本も取りました」と言われたとき、それがどちらの閉鎖謄本かを確かめないと話が噛み合いません。
登記簿の閉鎖には理由がいくつもあり、閉鎖された記録の置き場所も取り方も違います。オンラインで済むものと、管轄の窓口まで行かないと見られないものがあります。
この記事では、閉鎖登記簿の種類を分けたうえで、地歴調査で何を取り出すかを整理します。
閉鎖登記簿とは何か
使われなくなった登記の記録です。閉鎖される理由は、大きく三つに分かれます。
| 閉鎖の理由 | 何が起きたか |
|---|---|
| 改製 | 紙の登記簿をコンピュータに移した。土地や建物は今も存在する |
| 不動産が消えた | 合筆で吸収された、建物が滅失した |
| その他 | 行政区画の変更、錯誤による抹消など |
地歴調査で見に行くのは、主に一つ目と二つ目です。いま登記事項証明書を取っても出てこない過去が、そこに残っています。
オンラインで取れるものと、取れないもの
ここが実務でいちばん混乱するところです。
同じ言葉で、まったく別の資料を指しています。
コンピュータ化されたあとに閉鎖された記録は「閉鎖事項証明書」で、オンラインでも全国の窓口でも取れます。
コンピュータ化される前の紙の簿冊を閉じたものが「閉鎖登記簿」で、こちらは管轄の登記所にしかありません。
県外の土地を調べるとき、この違いを知らないまま「閉鎖謄本はオンラインで取れる」と考えていると、必要な年代が丸ごと抜けます。
| 資料 | 取り方 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | オンライン・全国どの窓口でも |
| 閉鎖事項証明書 (改製後の閉鎖) |
オンライン・全国どの窓口でも |
| 閉鎖登記簿 (紙・改製前) |
管轄の登記所。窓口または郵送 |
| 旧土地台帳 | 管轄の登記所の窓口 |
紙の閉鎖登記簿も、地番と年代が特定できていれば郵送で謄本を請求できます。
ただし地歴調査では、どの地番のどの年代を見ればよいかが、行く前には決まりません。親番をさかのぼり、合筆で消えた地番を拾い、乙区に出てきた名前から別の筆へ移る。簿冊を繰りながら判断する作業です。
だから結局、窓口に立つことになります。一日で足りないこともあります。
何が書かれているか
構成は今の登記記録と同じです。三つの部に分かれています。
| 部 | 地歴調査で読むところ |
|---|---|
| 表題部 | 地目の変更、分筆・合筆の履歴。土地の輪郭が動いた年 |
| 甲区 | 所有権の移転。個人から法人へ変わった年 |
| 乙区 | 所有権以外の権利。ここが効く |
甲区で読めることは、旧土地台帳とかなり重なります。旧土地台帳のほうが古い年代まで届くので、甲区は補強として使います。
表題部に並ぶ地目の変換をどう読むかは、地目の変更時期が示すものにまとめてあります。
乙区が効く
地歴調査の関心は「そこで何が行われていたか」です。所有者の名前だけでは、そこに届きません。乙区には、所有者以外の関与が残ります。
抵当権の債務者に、法人名が出る
所有者が個人のままでも、抵当権や根抵当権の債務者の欄に法人名が入っていることがあります。
その土地を担保に、その法人が借りていたということです。個人が所有し、法人が使っていた形が見えてきます。債権者が政府系の金融機関であれば、設備資金だった可能性も読めます。
地上権と賃借権
借地に建物を建てて操業していた場合、地上権や賃借権が登記されていることがあります。数は多くありませんが、登記に現れた場合の証拠としての強さは、住宅地図の屋号の比ではありません。
権利者の名称、設定の時期、存続期間。借りていた者と、借りていた期間が特定できます。
工場財団
工場抵当の制度により、工場財団が組成されている土地では、その旨が登記に現れます。工場としての稼働があったことが、登記の側から裏づけられる数少ない場面です。
債務者が法人であることは、その土地で操業していたことを意味しません。本社所在地の土地を担保に入れただけかもしれません。
読めるのは「その法人がこの土地に関与していた」までで、「ここで何を使っていたか」ではありません。
次に当たるのは、旧住宅地図と航空写真、そして行政庁への届出の照会です。フェーズⅠは資料調査であり、汚染の有無を証明するものではありません。
滅失した建物の記録
取り壊された建物の登記記録も、閉鎖されて残っています。地歴調査では、これが効きます。
建物の登記には種類が書かれています。工場、倉庫、車庫。構造と床面積も分かります。土地の登記からは決して出てこない情報です。
いま更地になっている土地でも、そこに何が建っていたかが書面で確かめられます。取壊しの年も、滅失の登記の日付から分かります。現況と登記の関係については表示登記に整理があります。
保存期間という壁
ここが、この資料の限界です。閉鎖された記録には保存期間があります。
| 資料 | 保存期間 |
|---|---|
| 閉鎖した土地の記録 | 閉鎖の日から50年 |
| 閉鎖した建物の記録 | 閉鎖の日から30年 |
| 閉鎖した地積測量図・建物図面 | 閉鎖の日から30年 |
| 登記の申請書・添付書面 | 受付の日から30年 |
| 地図 | 永久 |
いまの土地50年・建物30年は、昭和63年7月1日から後に閉鎖されたものについての期間です。
それ以前に閉鎖された土地・建物の記録は、20年でした。つまり昭和40年代までに閉鎖された記録は、制度のうえではとうに期間を過ぎています。
実際には期間が過ぎてもすぐには廃棄されず、残っていることがあります。しかしあることを前提に工程を組んではいけません。無かった場合にどう書くかを、先に決めておくことです。
旧土地台帳と突き合わせる
二つの資料は守備範囲が違います。重ねて初めて、年表が一本につながります。
旧土地台帳は明治期まで届きますが、書いてあるのは所有者と地目だけです。閉鎖登記簿は届く年代が浅いかわりに、乙区という、使用者の影が映る欄を持っています。
台帳で所有者の遍歴を追い、閉鎖登記簿で同じ年代の権利関係を確かめる。台帳に法人が現れた年の前後で、乙区に何が入っているかを見ます。登記から権利関係をどう読むかは法務局での権利関係調査にまとめてあります。
そのうえで残った空白は、旧住宅地図と航空写真、行政庁への照会で埋めます。取引の場面で必要になる調査の範囲はエンジニアリングレポートを、有害物質を使う施設の届出は水質汚濁防止法を併せて確かめてください。
- 改製前の紙か、改製後のデータかを区別した
- 紙のものは管轄の登記所に当たった
- 合筆で消えた地番の記録もさかのぼった
- 甲区だけでなく乙区を読んだ
- 抵当権・根抵当権の債務者名を書き出した
- 地上権・賃借権の有無を確認した
- 滅失した建物の記録を当たり、種類と構造を控えた
- 保存期間の経過で見られなかったものを記録した
まとめ
- 「閉鎖謄本」は二種類ある。改製後の閉鎖事項証明書はオンラインで取れ、改製前の紙の閉鎖登記簿は管轄の登記所にしかない
- 紙のものも郵送で請求はできるが、地歴調査では簿冊を繰る必要があるので窓口になる
- 地歴調査で効くのは乙区。抵当権の債務者、地上権、賃借権に、所有者以外の関与が残る
- 滅失した建物の記録には「種類」が書かれていて、工場か倉庫かが分かる
- 閉鎖した記録の保存期間は土地50年・建物30年。昭和63年7月1日より前に閉鎖されたものは20年だったので、古いものは残っていないことがある
熊本県内の土地の地歴調査(土壌汚染フェーズⅠ)。法務局と市町村の窓口でしか確認できない資料を、現地で集めます。株式会社地央(熊本市)が承っています。
