都市計画法の全体像 ── 線引き・用途地域・開発許可は、どこでつながっているか
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この記事の要点
- 都市計画法の条文は、「どこを」「どう使い」「誰が担保するか」の三段構えで並んでいる
- 区域区分も用途地域も、マスタープランに「即して」定められるという一本の線でつながっている
- この法律は人口が増える時代に設計された。減る時代には、規制ではなく誘導の道具として使い直すことが求められている
都市計画法は、条文を順に読んでも全体像が見えにくい法律です。区域区分、用途地域、都市施設、地区計画、開発許可。それぞれの用語は知られていても、互いにどうつながっているのかが説明されないまま実務に入ることが少なくありません。
この記事は、制度の骨格を上から順にたどり直したものです。最後に、人口が減る時代にこの法律をどう使い直すのかまで見ていきます。
何のための法律か ── 第1条と第2条
公共の福祉の増進
合理的な土地利用
機能的な都市活動の確保
第1条は目的を、第2条は基本理念を定めています。
目的として掲げられているのは、都市の健全な発展と秩序ある整備、そして国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進です。理念のほうは、適正な制限のもとでの合理的な土地利用、農林漁業との調和、そして健康で文化的な都市生活と機能的な都市活動の確保、の三つ。
ここで押さえておきたいのは、「適正な制限のもとで」という前置きが理念そのものに書き込まれていることです。土地の使い方を制限するのは例外的な措置ではなく、この法律の出発点に置かれている。後に出てくる線引きも用途地域も開発許可も、すべてこの一句から降りてきます。
誰が決めるのか ── 国・都道府県・市町村
都市計画は、三つの層で決められます。
国は基本方針を示す。都道府県は広域的・根幹的な都市計画を決める。市町村は地域に密着した都市計画を決める。
実務で迷いやすいのは、同じ「都市計画」でも決定権者が違うという点です。区域区分や広域の都市施設は都道府県、用途地域や地区計画は市町村、というように分かれています。窓口を間違えると話が進まないので、調べようとしている都市計画がどちらの決定なのかを最初に確かめるのが早道です。
計画は上から順に「即して」定められる
※ 立地適正化計画を含む
個別の都市計画の上には、二つのマスタープランがあります。
ひとつは都市計画区域マスタープラン(都市計画区域の整備、開発及び保全の方針)。都道府県が定めます。もうひとつは市町村マスタープラン(市町村の都市計画に関する基本的な方針)です。
区域区分、用途地域、都市施設、市街地開発事業といった個別の都市計画は、このマスタープランに「即して」定められる。つまり個々の決定は単独では成立せず、上位の方針から説明できなければならない、ということです。
この構造は、住民説明の場面でそのまま効いてきます。「なぜここが調整区域なのか」に答えるとき、条文ではなくマスタープランのどの方針に基づくのかを示せるかどうかで、話の通りが変わります。
立地適正化計画は、都市計画法ではなく都市再生特別措置法に基づく制度です。市町村マスタープランの一部とみなされる扱いになっているため図では同じ枠に入っていますが、根拠法が違います。条例や要綱を引くときは、この点で参照先が変わります。
どこに線を引くのか ── 都市計画区域と準都市計画区域
・人口の約95%が居住
・一体的、総合的に整備・
開発・保全すべき区域
未然に防ぐ区域
都市計画法は、日本の国土すべてに同じようにかかるわけではありません。まず都市計画区域という枠が指定され、その中で計画が組まれます。
都市計画区域は、一体的・総合的に整備、開発、保全すべき区域として定められるもので、面積では国土の三割弱、しかしそこに人口の大半が住んでいます。面積の話と人口の話がまったく違う数字になる、というのがこの制度の要点です。
その外側には、準都市計画区域という枠もあります。高速道路のインターチェンジ周辺のように、放っておくと無秩序に建物が建ってしまう場所をあらかじめ押さえておくための区域です。
図中の「国土の約27%」「人口の約95%」は、区域指定の見直しによって年度ごとに動きます。資料に載せる際は、国土交通省の都市計画現況調査で最新値をご確認ください。
区域区分(線引き)── 市街化区域と市街化調整区域
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 市街化区域 | すでに市街地を形成している区域、または概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。 |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域。原則として開発行為は禁止。 |
| 非線引き区域 | 区域区分が定められていない都市計画区域。 |
都市計画区域の中を、さらに二つに分けるのが区域区分、いわゆる線引きです。
市街化区域は、すでに市街地を形成している区域、または概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域で、開発行為は原則として禁止されます。
そして、区域区分そのものが定められていない都市計画区域もあります。実務では非線引き区域と呼ばれますが、条文上は「区域区分が定められていない都市計画区域」という言い方です。
線引きの目的は、スプロール現象の防止にあります。市街地が虫食い状に広がると、道路も下水道も後追いで延ばすことになり、一戸あたりのインフラ費用が跳ね上がる。線を引くのは景観のためではなく、都市を運営する費用の問題としてでした。
「市街化調整区域だから建てられない」と言い切れる場面は、実は多くありません。既存宅地の扱い、農家住宅、開発許可不要の建築、条例による指定など、例外が幾重にも用意されています。個別の判断は 市街化調整区域 ── 建てられる場合と、その条件 をご覧ください。
用途地域 ── 13種類で土地の使い方を割り振る
市街化区域には、必ず用途地域が定められます。住居系が8、商業系が2、工業系が3で、あわせて13種類です。
用途地域が決まると、建てられる建物の種類だけでなく、建ぺい率、容積率、高さの制限までがついてきます。同じ広さの土地でも、用途地域が違えば建てられる床面積がまるで変わる。土地の価格差の相当部分は、ここから来ています。
13種類のうち、田園住居地域は2018年に加わった比較的新しい区分です。市街化区域内の農地を、宅地化を待つ土地としてではなく農地のまま残す前提で位置づけ直したところに、時代の変化が出ています。
都市施設と市街地開発事業 ── 線でつくるか、面でつくるか


- 快適な都市生活・都市活動を支える基盤。
- 例:道路、公園、下水道、ごみ焼却場など。


- 面的な市街地の開発・整備。
- 例:土地区画整理事業、市街地再開発事業など。
土地の使い方を決めたら、次はそれを支える中身です。
都市施設は、道路、公園、下水道、ごみ焼却場など、都市の生活と活動を支える基盤を個別に都市計画として定めるもの。市街地開発事業は、土地区画整理事業や市街地再開発事業のように、ある範囲をまとめて整え直すものです。
大まかに言えば、都市施設は線や点で、市街地開発事業は面で都市をつくります。道路を一本通すのと、街区ごと組み替えるのとでは、合意形成の相手も、期間も、費用の出どころも変わってきます。
地区計画 ── 都市全体の物差しでは足りないところへ
- 住民の意見を反映し、その地区独自のきめ細かいルールを設定。
- 地区施設の配置(生活道路、公園等の整備)
- 建築物の規制(用途、デザイン、容積率、建ぺい率)
- 緑地の保全
用途地域は、都市全体を大きく塗り分ける道具です。そのため、ひとつの街区に固有の事情までは拾えません。
そこを埋めるのが地区計画です。住民の意見を反映しながら、その地区だけのきめ細かいルールを定める。生活道路や小公園といった地区施設の配置、建築物の用途・デザイン・容積率・建ぺい率の規制、緑地の保全まで、内容は幅があります。
制度の重心が、「都市全体」から「特定の地区」へ移ってきた。これは都市計画法だけの動きではなく、景観法や歴史まちづくり法にも共通する流れです。一律の基準で全体を管理する時代から、場所ごとに条件を書き分ける時代へ、という長い変化のなかに地区計画は置かれています。
担保措置としての開発許可制度
(建築物の建築等)には許可が必要。
ここまでの計画は、それだけでは絵に描いた線にすぎません。実際に土地が動く場面で効かせる仕組みが要ります。それが開発許可制度です。
一定規模以上の「土地の区画形質の変更」(建築物の建築等を目的とするもの)には、許可が必要になる。審査は大きく二つの物差しで行われます。技術的基準は、防災対策やインフラ整備が足りているかを見るもの。立地基準は、そもそもそこに建ててよいのかを見るもので、市街化調整区域では厳格に適用されます。
この二つは性質が違います。技術的基準は設計で満たせる。立地基準は設計では動かせない。相談を受けたとき、どちらの話をしているのかを最初に切り分けると、見通しの立て方がはっきりします。
許可が必要になる面積の下限は、市街化区域か調整区域か、非線引き区域か、三大都市圏の一部かによって異なり、条例でさらに引き下げられている場合もあります。実際の判断は、必ず当該自治体の開発指導要綱・条例でご確認ください。手続きの流れは 開発許可申請の実務 ── 最大の関門は、32条の同意 にまとめています。
ここまでを一枚に置き直す
地域地区(用途地域)
下水道
開発事業土地区画整理、
市街地再開発
上にマスタープラン。その下に、土地利用(区域区分・用途地域)、都市施設、市街地開発事業、地区計画。そして全体を下から支える担保措置として、開発許可と建築確認。
個別の条文を追っているとばらばらに見えますが、「方針 → 個別計画 → 担保」という三段が縦に通っているだけです。調べものに詰まったときは、いま自分がどの段の話をしているのかをこの図で確かめると、当たるべき窓口も、引くべき資料も決まります。
前提が変わった ── 都市のスポンジ化
- 都市が外縁部から縮小するのではなく、内部でランダムに空き地や空き家が発生する現象。
- 細分化された土地と強い私有財産制が背景にあるため、面的で急激な変化は起きにくい。
- 大きな開発には弊害となるが、小さな空間(スポンジの穴)を活用する新しい都市計画のアプローチが求められる。

ここまでの制度は、人口が増え、都市が外へ広がることを前提に組まれてきました。いま起きているのは、その逆です。
ただし、都市は外側から順にきれいに縮むわけではありません。内部のあちこちに、ランダムに空き地と空き家が生まれる。これが都市のスポンジ化と呼ばれる現象です。
背景にあるのは、細分化された土地所有と、強い私有財産制です。だから面的で急激な変化は起きにくい。裏を返せば、大きな開発の手法はここでは効かないということでもあります。
スポンジ化は、拡大期の道具では扱えません。区画整理も再開発も、まとまった面を前提にしているからです。小さく空いた穴を一つずつ使い直していく方法が要る、というのがこの十数年の問題設定でした。
コンパクト・プラス・ネットワーク
- 「コンパクト・プラス・ネットワーク」による持続可能な都市構造の再編。
- 立地適正化計画を活用し、医療・福祉・商業機能と居住を拠点へ緩やかに誘導。
- 公共交通を軸とし、スポンジ化の「空き穴(低未利用地)」を活かしながら、歩いて暮らせるまちづくりへの転換。

その答えとして進められているのが、コンパクト・プラス・ネットワークという都市構造の再編です。
立地適正化計画を使い、医療・福祉・商業の機能と居住を拠点へ緩やかに誘導する。拠点どうしは公共交通で結ぶ。そしてスポンジ化で生じた低未利用地を活かしながら、歩いて暮らせるまちづくりへ転換していく。
ここで使われている言葉は「規制」ではなく「誘導」です。線を引いて禁じるのではなく、住みたい場所・出したい場所として選ばれるように条件を整える。同じ都市計画法を使いながら、効かせ方が変わってきています。
まとめ ── 縮小をデザインするために
明治維新からの約150年、日本の都市計画は「1億人の人口増加」と「都市の拡大・過密」に対応するシステムとして機能し、成果を上げてきました。
いま迎えているのは、かつてない人口減少と過疎の時代です。これからの都市計画法に求められるのは、拡大を前提とした規制ではなく、マスタープランや立地適正化計画を柔軟に運用し、既存の枠組みを活かしながら、時間をかけて「持続可能で質の高い縮小」をデザインしていくことだ、と資料は結んでいます。
手を動かす前に確かめること
- 対象地は都市計画区域の内か外か。内なら線引きの有無はどうか
- 用途地域と、建ぺい率・容積率・高さ制限はどう定められているか
- 地区計画や条例による上乗せ・横出しの規制はかかっていないか
- 開発許可が要る規模か。要るとして、技術的基準と立地基準のどちらが論点か
- 立地適正化計画の居住誘導区域・都市機能誘導区域の内か外か
本記事は、都市計画法および国土交通省の公表資料をもとに構成しています。区域指定の状況、許可を要する規模、条例による上乗せ規制は、自治体および年度によって異なります。実際の検討にあたっては、必ず当該自治体の都市計画課・建築指導課および一次資料でご確認ください。
次に読む
- まちづくりの見取り図 ── 制度全体のなかでの位置づけ
- 日本の都市・建築法制 百年の軌跡 ── いまの条文が生まれた経緯
- 市街化調整区域 ── 建てられる場合と、その条件
- 開発許可申請の実務 ── 最大の関門は、32条の同意
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