山林の所有者をたどる ── 登記、林地台帳、課税台帳

この記事の要点
  • 山林の所有者の記録は、登記・固定資産の課税台帳・林地台帳の三か所にある。食い違うことがあるので並べて見る
  • 山林には、住所のない名義や「外何名」とだけある名義など、登記そのものが変則的な土地がある
  • 固定資産税がかからない山林は、相続人が存在に気づかないことがある。名寄帳や所有不動産記録証明で洗い出す
  • 林地台帳で所有者の氏名・住所を見られるのは、所有者本人や隣接する森林の所有者などに限られる
  • 森林計画図の線は、登記の筆界ではない

山の持ち主は、登記簿を見ればわかる。多くの方がそう考えています。

実際には、山林の登記は何代も前の名義のままだったり、住所が書かれていなかったりして、登記簿だけでは今の持ち主にたどり着けないことが珍しくありません。その一方で、山林には登記のほかにも所有者を記録した台帳がいくつかあります。

この記事は、山林の所有者をたどるときに見る記録と、その読み方、見られる人の範囲を整理したものです。

所有者の記録は、三か所にある

山林の所有者は、目的の違う三つの記録に載っています。

作る者 誰が見られるか
登記 法務局 誰でも登記事項証明書を取れる
固定資産の課税台帳 市町村(税務) 所有者本人、相続人など。名寄帳の写しを請求できる
林地台帳 市町村(林務) 地番などは公表。所有者の氏名・住所は、所有者本人や隣接する森林の所有者などに限られる

登記は権利を公示するための記録、課税台帳は税を課すための記録、林地台帳は森林を管理するための記録です。それぞれ更新のきっかけが違うので、三つが一致しているとは限りません。登記は亡くなった方の名義のまま、課税台帳は相続人の一人に変わっている、ということは普通に起こります。

登記を読む

最初に見るのは登記です。登記事項証明書の権利部(甲区)に、所有者の氏名と住所が記録されています。

山林では、権利部がなく、表題部にだけ所有者が書かれている土地もあります。所有権の登記がされないまま、明治期以来の記録が引き継がれてきた土地です。

名義の書き方そのものが変則的な土地がある

表題部の所有者欄が正常に記録されていない土地があります。法務省の資料では、次の三つの型が挙げられています。

  • 氏名だけで住所がないもの
  • 「大字〇〇」のように地名だけが書かれたもの(字持地)
  • 「〇〇外七名」のように一部の名前だけが書かれたもの(記名共有地)

このような土地は、登記簿から所有者をたどることができません。

こうした土地については、令和元年11月に施行された表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律により、登記官が所有者を探索し、その結果を登記に反映させる仕組みが設けられました。自分の家の名前が出てくる土地について、法務局から照会が届くこともあります。

名義人が亡くなっているとき

登記の名義人が亡くなっていれば、戸籍をたどって、いま権利を持っている相続人を確定させます。何代も前の名義であれば、相続人の数は大きく増えます。戸籍の集め方と法定相続情報一覧図は、何代も前の名義のままの土地 ── 相続人が増えた土地をたたむ順序で整理しました。

山林で気をつけたいのは、相続人が山の存在そのものを知らないことです。評価額の低い山林は固定資産税の免税点を下回り、納税通知書に載ってこないことがあります。家族の誰も、その山を払ったことも見たこともない、という状態です。

漏れを減らす二つの方法

一つは、市町村で亡くなった方の名寄帳の写しを取ることです。免税点以下の土地も載っているのが通例です(扱いは市町村によって違うことがあります)。山のある市町村ごとに取ります。

もう一つは、令和8年2月に始まった所有不動産記録証明です。亡くなった方が登記名義人になっている不動産を、相続人が法務局に請求して一覧で受け取れます。ただし、氏名と住所で検索する仕組みのため、古い住所のままの登記や表記の揺れがあると漏れることがあります。二つを併せて使うのが確実です。

課税台帳と、現所有者の申告

固定資産の課税台帳には、原則として登記の名義人が所有者として載っています。名義人が亡くなると、市町村は誰に課税すればよいかわからなくなります。

そこで、所有者が亡くなった土地を相続などで引き継いだ人は、市町村に現所有者の申告をすることになっています(地方税法第384条の3と、各市町村の条例)。熊本市の場合、現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過する日までが期限です。登記の手続きや遺産分割がまとまる前でも、申告は別に求められます。

課税台帳の所有者が登記と違っているときは、この申告や、相続人代表者の届出が出されている可能性があります。家族の誰が、いつ届け出たのかを確かめておくと、話が早くなります。

林地台帳と森林簿

森林については、登記とは別に、市町村が林地台帳を整備しています。所有者の氏名・住所、所在・地番、地目、面積、境界の測量の実施状況などが記載されています。

公表されるのは地番などの一部で、所有者の氏名・住所は公表されません。所有者の情報を受け取れるのは、その森林の所有者本人、隣接する森林の所有者、森林経営計画の認定を受けた者などに限られます。熊本市の場合、窓口は都市建設局 みどり公園課で、相続人が請求するときは本人確認の書類に加えて戸籍謄本が要ります。

記載が実際と違っていれば、所有者から市町村に修正を申し出ることができます。登記や遺産分割協議書など、根拠になる資料を添えます。

県は別に、森林簿と森林計画図を作っています。区画ごとの樹種や林齢が記録されていて、山の中身を知る手がかりになります。熊本県は、所有者の住所・氏名を除いた森林簿をオープンデータとして公開しています。

森林計画図の線は、筆界ではない

森林計画図や森林簿の区画は、森林を管理するための区分です。登記の一筆の範囲とは一致しないことがあります。

林地台帳も同じで、台帳が整備されたからといって境界が確定するわけではありません。境界を確かめる材料は、法務局の地図・公図と、現地の目印、隣接する山の所有者の認識です。確かめ方は山林の境界 ── 公図の精度、地籍調査、境界の明確化で整理しました。

登記に出てこない権利

所有者がわかっても、それで山のすべてが把握できるとは限りません。

一つは立木です。立木だけを別に登記したり、地元と分収の契約を結んだりしていることがあります。先代が木を売っていた、という話が出てくることもあります。

もう一つは入会です。集落が共同で山を使ってきた慣行がある場合、その権利は登記簿には記録されません。入会権は登記できない権利だからです。集落の名義や、記名共有地のような変則的な名義の山では、とくに注意が要ります。

どちらも、書類より先に、地元の人や親族の話から出てくることが多い事柄です。

所有者が見つからないとき

調べても所有者にたどり着けない場合は、状況によって使える手当てが違います。

  • 共有者の一部と連絡がつかない:裁判所の決定を得て、その持分を取得したり、ほかの共有者の同意だけで管理したりする仕組みがある。詳しくは兄弟で共有になった土地 ── 分ける・売る・一人が持つで整理した
  • 相続人がいない:家庭裁判所が相続財産清算人を選び、財産を清算する
  • 所有者がまったくわからない:隣地の所有者などが裁判所に申し立て、管理人を選んでもらう所有者不明土地管理命令がある。市町村が森林経営管理制度で扱う場合は、探索と公告を経る特例がある

いずれも手間と時間がかかります。所有者の調査は、相続が重なる前、事情を知る人が残っているうちに進めておくほど楽になります。

山林の所有者をたどるときの確認
  • 登記事項証明書で、権利部の名義人と表題部の記載を確かめた
  • 名義が住所のない名前や「外何名」になっていないかを見た
  • 亡くなった名義人の名寄帳を、山のある市町村で取った
  • 所有不動産記録証明で、ほかに名義の不動産がないかを確かめた
  • 課税台帳の所有者と、現所有者の申告の有無を確かめた
  • 林地台帳の記載が登記と合っているかを見た
  • 立木の登記や分収の契約、入会の慣行がないかを親族や地元に聞いた

まとめ

  • 山林の所有者の記録は、登記・課税台帳・林地台帳の三か所にある。一致しているとは限らない
  • 住所のない名義、字持地、記名共有地など、登記そのものが変則的な山林がある
  • 免税点以下の山林は相続人に知られていないことがある。名寄帳と所有不動産記録証明で洗い出す
  • 林地台帳の所有者情報を見られる人は限られる。森林計画図の線は筆界ではない
  • 立木と入会は、登記に出てこないことがある
山林の所有者調査と境界の確定、お引き受けしています。

熊本県内の山林について、相続人の調査、境界の確定と測量、相続土地国庫帰属の承認申請書の作成。行政書士・土地家屋調査士 村上事務所(熊本市東区)が承っています。

行政書士 村上事務所
相続した土地の教科書(目次)

BLOG

ブログ

PAGE TOP