地区計画制度 ── 都市計画のいちばん小さな単位で、何ができるか
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地区計画制度 ── 都市計画のいちばん小さな単位で、何ができるか
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この記事の要点
- 地区計画は、用途地域では届かない地区の単位を扱うために1980年に作られた制度
- 構造は二階建て。方針(ビジョン)と、地区整備計画(具体のルール)に分かれる
- 効き目は条例にするかどうかで決まる。届出と勧告だけでは、従わない事業者を止められない
- 市街化調整区域では意味が違う。2006年改正以降、地区計画への適合が開発許可の前提になっている(34条10号)
「地区計画がかかっています」と言われて、それが何を意味するのかがすぐに分かる人は、そう多くありません。用途地域のように全国共通の類型があるわけではないからです。
地区計画は、その地区にしか当てはまらないルールです。隣の地区に同じものはありません。だから、都市計画図を見ただけでは中身が読めません。
この記事は、地区計画で何が決められるのか、それがどこまで効くのか、そして市街化調整区域では何が違うのかを整理したものです。
都市計画と建築規制のあいだが、空いていた
市街地を大きく塗り分ける
という単位が扱えない
周りとの調和までは扱えない
土地利用のルールは、大きく二段構えです。都市計画法が用途地域で市街地を大きく塗り分け、建築基準法が一棟ごとの基準を定める。
ところが、この二つのあいだが空いていました。用途地域は全国共通の13類型で、「この通りだけ」「この集落だけ」という単位を扱えません。建築基準法は一棟ごとの基準なので、周りとの調和までは扱えない。
この中間を扱うために、1980年(昭和55年)の都市計画法改正で創設されたのが地区計画です。根拠は法12条の4にあります。
用途地域は「どの類型か」を選ぶ制度です。地区計画は「この地区をどうするか」を書く制度です。選ぶのと書くのでは、性格がまったく違います。
全国共通の型から、地区ごとの誂えへ
敷地の細分化、壁面の後退、
屋根や垣の見え方までは決められない
細かいルールを重ねられる。敷地面積の最低限度を定めてミニ開発を防ぐ、
壁面を後退させて道にゆとりを作る、といった調整ができる
同じ第一種低層住居専用地域でも、地区の事情はそれぞれ違います。古い住宅地で敷地の細分化が進んでいる地区と、工場と住宅が混じり合っている地区とでは、必要なルールが同じはずがありません。
地区計画は、用途地域の上に細かいルールを重ねる形で働きます。敷地面積の最低限度を定めてミニ開発を防ぐ、壁面を後退させて道にゆとりを作る、といった調整ができます。
地区計画は、二階建てで書かれる
この地区を将来どうしたいかを言葉で書く階
そして建築物等に関する具体的な制限を書く階
地区計画は二つの階からできています。
上の階が地区計画の方針。地区の目標と、整備・開発・保全の方針を書きます。この地区を将来どうしたいかを、言葉で書く階です。
下の階が地区整備計画。地区施設(生活道路や小公園など)の配置と規模、そして建築物等に関する具体的な制限を書きます。
方針だけを定めて、地区整備計画を後から加えることもできます。合意が固まったところから順に書き足していける、段階的に育てられる制度です。
地区整備計画で決められること
特定の業種を建てられなくする
用途地域より抑える
ミニ開発への対応
通りにゆとりを作る
そろえる
生垣による緑化など
よく使われるのは六つです。用途の制限、容積率・建ぺい率の最高限度、敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限、高さの最高限度、そして形態・意匠や垣・柵の構造。
このほか、樹林地や草地の保全、緑化率なども定められます。すべてを書く必要はありません。その地区で何が問題になっているかによって、必要なものだけを選びます。
決めたルールは、三段階で効く
ここが、実務でいちばん誤解されるところです。
まず届出。地区整備計画が定められた区域で建築等をするときは、工事に着手する30日前までに市町村長へ届け出ます(法58条の2)。次に勧告。届出の内容が地区計画に適合しないとき、市町村長は設計の変更などを勧告できます。
そして条例。地区整備計画の内容を市町村の条例に定めると(建築基準法68条の2)、建築確認の対象になり、違反には罰則も伴います。
届出制度のままでは、勧告に従わない事業者を止められません。「建築基準法には適合している」と主張されれば、勧告以上のことができないからです。実効性を持たせるかどうかは、条例にするかどうかで決まります。
市街化調整区域では、意味合いが違う
例外として許可されえた
(旧34条10号イ)
地区計画に適合すること
(現34条10号)が残った
市街化調整区域では、地区計画の位置づけがまったく変わります。きっかけは2006年(平成18年)の法改正、施行は2007年11月30日です。
改正前は、一定規模以上の計画的な大規模開発であれば、地区計画がなくても例外として許可されえました(旧34条10号イ)。この特例が廃止され、地区計画に適合すること(現34条10号)が残りました。
つまり、市街化調整区域で計画的にまとまった開発をするには、市町村が地区計画を定めることが前提になったということです。スプロールを抑えつつ、必要な開発は市町村の意思を通して認める。そういう形に切り替わりました。
裏を返せば、地区計画を定めなければ、その地区で大きな開発は起こりにくくなります。どの号で説明するかは事前相談で確かめる必要がありますが、調整区域での開発を考えるときに、地区計画の有無は最初に確認する項目のひとつです。
同じ制度でも、区域によって役割が変わる
優先的に市街化を図る区域
再開発、商業の振興
例外的な立地基準
付加的なルール
(34条10号)
市街化区域では、地区計画はより良い街並みを誘導する付加的なルールです。既存環境の保全と向上、再開発、商業の振興といった目的で使われます。
市街化調整区域では、開発許可を得るための必須の関門になります。スプロール防止を大前提としたうえでの、例外的な立地基準という位置づけです。
何のために使うかで、書き方が変わる
同じ課題でも、地区の性格によって取る手法が違ってきます。
住環境と工場の共存が課題なら、敷地面積の最低限度と壁面後退を定めて、工場跡地の無秩序な細分化を防ぎます。住宅が張りつく前に、操業環境を守る側のルールを置いておく、という考え方です。
郊外集落の景観が課題なら、建物の高さ、形態・意匠、垣や柵の構造を定めます。コンクリート塀ではなく生垣を求めるといった書き方で、集落のたたずまいを保ちます。
拠点周辺の歩行空間が課題なら、壁面の位置の制限と建ぺい率の最高限度を組み合わせて、道路境界から後退した歩行空間を確保します。
ルールを足すと、既存の建物が外れる
建物の高さや北側の斜線に
厳しめの制限を入れる
新しい基準に合わなくなり、
建て替えにくくなる
地区計画を定めるときに、いちばん扱いが難しくなるのがここです。
たとえば、日照や採光を守るために建物の高さや北側の斜線に厳しめの制限を入れる。良かれと思って足したルールです。ところが、長く住んでいる人の家が新しい基準に合わなくなり、建て替えにくくなることがあります。
良い環境を作るためのルールが、いま住んでいる人を締め出すことがあります。既存の建物を区域に含めるなら、制限の一部を適用除外とするか、区域の線を引き直すかの判断が要ります。制度の設計そのものより、既存の暮らしとの折り合いのほうが難しい。
運用の側で、三つ求められる
決めたあとの運用が、制度の評価を決めます。
ひとつめは実情に合わせた弾力的な適用。既存の住宅を区域に含める場合に、制限の一部を適用除外とするなどの判断です。ふたつめは合意形成と記録の透明化。制限を除外・変更する場合、都市計画審議会や地元での協議の経緯と、判断に至った理由を議事録等に明確に記録しておくこと。みっつめは運用マニュアルの整備。担当者の属人的な判断を防ぎ、組織のなかで共通の理解を持てるようにすることです。
記録が残っていないと、数年後に同じ論点をもう一度やり直すことになります。なぜその判断をしたのかが分からなくなるからです。
まとめ
- 1980年創設。用途地域では届かない「地区」の単位を扱うための制度(法12条の4)
- 構造は二階建て。方針でビジョンを、地区整備計画で具体のルールを書く
- 届出(法58条の2)は工事着手の30日前まで。建築基準法68条の2の条例にして初めて、建築確認の対象になる
- 市街化調整区域では、2006年改正で大規模開発の特例が廃止され、34条10号(地区計画への適合)が残った
- 既存の建物が新しい基準から外れる問題がある。適用除外か、区域の線引きかの判断が要る
地区計画がかかっている土地を検討するときの確認
- 地区整備計画が定められているか。方針だけの区域ではないか
- 建築物等に関する制限として、六つのうち何が定められているか
- 建築基準法68条の2の条例になっているか。届出だけの運用か
- 届出の期限(工事着手の30日前)に間に合うスケジュールになっているか
- 市街化調整区域であれば、34条10号で説明するのか、他の号なのか
- 既存の建物について、適用除外の定めがあるか
- 計画書と計画図の両方を、市町村の窓口で確認した
本記事は都市計画法・建築基準法および自治体の公表資料をもとに構成しています。地区計画の内容、条例化の有無、届出の運用は自治体ごとに異なります。実際の検討にあたっては、必ず市町村の都市計画担当と最新の計画書・計画図でご確認ください。
次に読む
- 都市計画法の全体像 ── 地区計画の位置づけ
- 都市計画法34条 ── 号ごとに、何が建てられるか
- 災害レッドゾーンの開発規制 ── 令和4年4月から、何が止まったか
- まちづくりの見取り図 ── 制度全体のなかでの位置づけ
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