CHIOU / 株式会社地央

自治体職員のための道路調査 ── 再建築できない土地を見抜く

空き家を除却したあとに建て替えられるのか。この土地を売り払って問題ないか。住民から「なぜ建てられないのか」と問われたとき、何を根拠に説明するのか。いずれも、前面道路の性格が分からなければ答えられません。

道路の調査が難しいのは、呼び名と法的な性格が一致しないためです。市道として認定されていても建築基準法上の道路とは限らず、逆に私道でも建築基準法上の道路として扱われるものがあります。さらに、公図に細く描かれた線が法定外公共物(いわゆる赤道・青道)であることもあり、これは自治体が管理者です。

この章では、道路の種類をどう見分けるのか、幅員と接道をどう確認するのか、そして自治体が管理者として関わる場面までを扱います。第03章の接道義務とあわせてお読みください。

三つの体系が重なっている

ひとくちに「道路」といっても、実務では性格の異なる三つの体系が重なっています。混同すると回答を誤ります。

道路法上の道路 国道、都道府県道、市町村道。認定と管理のための体系。道路台帳と認定路線図で確認します。
建築基準法上の道路 第42条各号に該当するもの。建物を建てられるかどうかを決める体系。道路種別図または建築指導部門で確認します。
法定外公共物 いわゆる赤道(里道)、青道(水路)。道路法の適用を受けない公共物で、市町村が管理者です。
市道認定と建築基準法上の道路は別です。市道として認定されていても幅員が足りず建築基準法上の道路でない場合があり、逆に位置指定を受けた私道は建築基準法上の道路です。相談者に「市道だから大丈夫」と答えないでください。確認すべきは建築基準法上の種別です。

法定外公共物という論点

公図に細長く描かれた無地番の土地、あるいは「道」「水」と記された筆。これが法定外公共物です。かつては国有財産でしたが、2005年(平成17年)までに市町村へ譲与され、現在は自治体が管理しています。

実務では次の場面で問題になります。

  • 敷地と道路の間に赤道が挟まっている 接道の判断に影響します。赤道が建築基準法上の道路に当たるかどうかは別途の確認が必要です。
  • 現地では消えているが公図には残っている いわゆる「機能を喪失した法定外公共物」。用途廃止と払下げの手続きにつながります。
  • 個人の敷地の中を通っている 付替えや払下げの相談になります。

自治体は管理者の立場です。住民からの相談を受ける側であると同時に、手続きの相手方でもあります。所管部署(管財、土木、道路管理など自治体により異なる)を把握しておいてください。

公道と私道

公道 国・都道府県・市町村が管理する道路。維持と修繕は管理者が行います。
私道 個人または法人が所有する道路。維持と修繕は所有者の負担です。共有になっていることが多く、持分をめぐる調整が必要になります。

位置指定道路

私道のうち、特定行政庁から位置の指定を受けたものです。建築基準法第42条第1項第5号に当たり、これに接する敷地には建物を建てられます。宅地分譲の際に築造されることが多く、指定を受けた区域と幅員は図面で記録されています。

私道で確認すべきこと

  • 所有者は誰か 単独か共有か。共有なら持分と共有者の数。
  • 通行の承諾があるか 通行権が明確でないと、後で通行を拒まれる事態が起こり得ます。
  • 掘削の承諾があるか 上下水道の引込みや更新には、私道を掘る必要があります。共有者全員の承諾を求められることがあり、これが取れずに工事ができないという相談は少なくありません。
  • 維持管理の取り決めがあるか 舗装の補修や側溝の清掃を誰が負担するか。

幅員の確認

幅員は、図面の値と実測値が一致しないことがあります。実測してください。とくに次の点に注意します。

  • どこからどこまでを測るか。側溝を含むか含まないかで結論が変わることがあります
  • 一様でないことが多い。狭い箇所の値が効きます
  • 4メートルに満たない場合、二項道路の指定の有無とセットバックの要否を確認します
  • 反対側が水路や崖の場合、後退の負担が片側に寄ります

官民境界

公道と民有地の境が確定していない場合、境界確定の手続きが必要になります。用地取得、公有地の払下げ、道路の拡幅では避けて通れません。

手続きは、申請を受けて職員が現地で立会い、隣接地所有者と確認したうえで境界を確定し、書面に残す流れです。関係者が多い場合、相当の時間を要します。相談を受けた段階で、着手の要否と所要時間の見通しを立ててください。

再建築不可を見抜く

次のいずれかに当たると、再建築ができない可能性があります。空き家の相談では、除却を勧める前にここを確認してください。

  • 前面道路が建築基準法上の道路でない
  • 接道の長さが2メートルに満たない(旗竿地の竿部分が全長にわたって2メートル未満)
  • 敷地が道路に接していない(囲繞地)
  • 間に赤道や水路が挟まっており、接道と認められない
除却の前に確認してください。建物を取り壊した後で再建築不可と判明すると、所有者は更地の固定資産税を負担しながら活用もできない状態に置かれます。行政が除却を促していた場合、責任の所在が問題になりかねません。

確認手順

一 道路種別を確認する

建築基準法第42条の何号に当たるか。道路種別図または建築指導部門で確認します。ここが出発点です。

二 道路法上の位置づけを確認する

認定路線か、法定外公共物か、私道か。道路台帳と認定路線図で確認します。管理者が誰かが分かります。

三 公図で道路と敷地の関係を見る

敷地と道路の間に別の筆がないか。細長い無地番の筆があれば法定外公共物の可能性があります。

四 現地で幅員と接道を実測する

幅員の最も狭い箇所、接道の長さ、側溝の位置。第08章の手順で記録します。

五 私道なら権利関係を確認する

所有者、共有者の数と持分、通行・掘削の承諾の有無。

六 官民境界の確定の要否を判断する

用地取得や払下げが絡む場合は、早い段階で手続きの要否と所要時間を見込みます。

七 所管につなぐ

建築の可否は建築指導部門、道路の管理は道路管理部門、法定外公共物は管財または土木部門。窓口では事実の確認までを行い、判断は所管に委ねます。

実務チェックリスト

  • □ 建築基準法上の道路種別を確認した第42条の何号か。市道認定とは別
  • □ 道路法上の位置づけを確認した認定路線/法定外公共物/私道。管理者が誰かを把握
  • □ 公図で敷地と道路の間に別の筆がないか確認した細長い無地番の筆は法定外公共物の可能性
  • □ 幅員を現地で実測した最も狭い箇所の値が効く。側溝を含むかも確認
  • □ 接道の長さが2m以上あるか確認した旗竿地は竿部分の幅が全長にわたって2m以上必要
  • □ 4m未満の場合、二項道路の指定とセットバックの要否を確認した反対側が水路・崖なら後退の負担は片側に寄る
  • □ 私道の場合、所有者・共有者・持分を確認した
  • □ 私道の場合、通行と掘削の承諾の有無を確認した掘削承諾が取れず工事ができない例は多い
  • □ 官民境界の確定が必要かを判断した用地取得・払下げ・拡幅では避けられない。時間を要する
  • □ 再建築不可に当たる可能性を確認した空き家の除却を勧める前に必ず確認する
  • □ 所管部署につないだ建築の可否は建築指導部門、道路管理は道路管理部門

まとめ

  • 道路には道路法・建築基準法・法定外公共物の三つの体系が重なる。混同すると回答を誤る。
  • 市道認定と建築基準法上の道路は別。「市道だから大丈夫」と答えてはいけない。
  • 法定外公共物(赤道・青道)は市町村が管理者。接道の判断や払下げの相談で関わる。
  • 幅員は実測する。図面の値と一致しないことがあり、最も狭い箇所の値が効く。
  • 空き家の除却を勧める前に、再建築の可否を確認する。更地にしてから判明すると取り返しがつかない。

関連法令

  • 建築基準法第42条 この法律における道路の定義を規定。
  • 建築基準法第43条 敷地等と道路との関係(接道義務)を規定。
  • 建築基準法第42条第1項第5号 位置指定道路について規定。
  • 道路法第7条・第8条 都道府県道および市町村道の認定について規定。
  • 道路法第28条 道路台帳の調製および保管について規定。
  • 国有財産特別措置法等 法定外公共物の市町村への譲与に関する根拠。管理は各自治体の条例による。
本章は制度理解のための一般的な解説であり、個別案件の法的判断を保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、都市計画課・農業委員会・法務局・建築指導課など所管窓口や専門家(行政書士・土地家屋調査士等)に必ずご確認ください。

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