CHIOU / 株式会社地央

景観法と景観行政 ── 誰が、何を決めるか

この記事の要点
  • 担い手は景観行政団体。市町村がなれるかどうかで、できることが変わる
  • 通常の規制は届出と勧告。着工まで一定期間を置く必要がある
  • 景観地区では認定制。認定を受けなければ建築確認が下りない
  • 規制だけでなく、協定・機構・個別指定という手段が組み合わされる

景観法は、具体的な基準を定めない法律です。何を守るかは、地域が景観計画で決めます。

そのため、誰が決めるのか、どういう手続きで実効性を持たせるのかという部分が制度の中心になります。

この記事では、景観行政の担い手と、規制の手段を整理します。

誰が担うか ── 景観行政団体

市町村がなれるかどうかが分かれ目

景観法に基づく事務を行うのは、景観行政団体です。

区分 景観行政団体になれるか
都道府県 当然になる
指定都市・中核市 当然になる
その他の市町村 都道府県との協議・同意により、なることができる

一般の市町村は、自動的には景観行政団体になりません。

景観行政団体になっていない市町村の区域では、都道府県が景観行政団体として事務を行います。

なることの意味

できるようになること 内容
景観計画の策定 その市町村の実情に合わせて区域と基準を定められる
届出の受理と勧告 窓口が身近になる
景観重要建造物等の指定 地域の資源を個別に指定できる
景観協議会の組織 関係者との協議の場を設けられる

「その地域のことは、その地域が決める」ための前提が、景観行政団体になることです。

調査では、どちらが窓口か確認する

対象地の市町村が景観行政団体かどうかで、相談する先が変わります。

  • 景観行政団体である → 市町村の景観担当課
  • なっていない → 都道府県の景観担当課

市町村に問い合わせて「うちでは扱っていない」と言われる場合、この事情によることがあります。

都道府県のウェブサイトで、県内の景観行政団体の一覧が公表されていることが多くあります。

景観計画で決めること

景観行政団体は、景観計画を定めることができます。ここに具体的な中身が書かれます。

定める事項 内容
区域 どこを対象とするか。市域全体とすることも、限定することもできる
方針 良好な景観の形成に関する方針
行為の制限 届出の対象となる行為と、その基準
景観重要建造物等 指定の方針
景観重要公共施設 道路、河川、公園などの整備に関する事項

基準の書き方

景観の基準は、数値で示しにくい要素を含みます。

  • 数値で示せるもの 高さ、壁面の位置、色彩(マンセル値等)
  • 数値で示しにくいもの 形態、意匠、素材、周囲との調和

後者については、「配慮する」「調和させる」といった定性的な表現になることがあります。

そのため、事前の協議で具体的にどうすればよいかを確認する必要があります。基準を読んだだけでは判断できない場合が多くあります。

届出と勧告

景観計画区域内で一定の行為を行う場合、あらかじめ届け出る必要があります。

主な対象行為 備考
建築物の新築・増改築・移転 規模の要件が定められることが多い
外観の変更 色彩の変更を含む
工作物の新設等 擁壁、鉄塔、看板など
開発行為 都市計画法の開発許可とは別
木竹の伐採、土地の形質変更 計画で定められた場合
届出から一定期間は着工できない

届出をしてから一定の期間は、その行為に着手できません。

審査と、必要な場合の勧告のための期間です。

この期間は、建築確認の手続きとは別に進みます。両方を並行させる必要があるため、工程を組む際は注意してください。

基準に適合しない場合、設計の変更を求められます。設計が固まってから届け出ると、手戻りが大きくなります。

実務では、基本設計の段階で事前相談を行うのが通例です。

勧告と変更命令

手段 効力
勧告 従う法的義務はないが、公表されることがある
変更命令 特定届出対象行為について、従う義務がある

変更命令の対象とするには、景観計画であらかじめ特定届出対象行為として定めておく必要があります。

形態意匠に関する基準について、命令まで可能とするかどうかは、計画の作り方で決まります。

景観地区 ── 強い規制

認定を受けなければ、建築確認が下りない

景観地区は、都市計画で定める地域地区です。景観計画区域より強い規制がかかります。

景観計画区域 景観地区
根拠 景観計画 都市計画
手続き 届出 → 勧告・命令 認定
建築確認との関係 別に進む 認定が前提になる
対象範囲 広く設定しやすい 限定的

景観地区では、建築物の形態意匠が基準に適合していることの認定を受ける必要があります。

そして、この認定を受けなければ、建築確認を受けられません。

届出制と違い、適合しなければ建てられないという構造です。

景観地区で定められること

  • 建築物の形態意匠の制限(必ず定める
  • 建築物の高さの最高限度・最低限度
  • 壁面の位置の制限
  • 建築物の敷地面積の最低限度

また、都市計画区域外については準景観地区を定めることができます。

個別の指定

制度 対象 効果
景観重要建造物 景観上重要な建造物 増改築・移転・除却に許可が必要
景観重要樹木 景観上重要な樹木 伐採・移植に許可が必要
所有者の同意を得て指定される

これらの指定は、あらかじめ所有者の意見を聴いて行われます。

指定されると現状変更に制約がかかる一方、次のような支援がある場合があります。

  • 管理に関する費用の助成
  • 税制上の措置
  • 建築基準法の一部の規定の適用除外(条例による)

最後の点は重要です。現行基準に適合しない歴史的建造物を、そのまま維持・活用しやすくするための仕組みです。

取引の際は、指定の有無を必ず確認してください。除却に許可が要る建物であれば、計画が根本から変わります。

地域の主体による取り組み

景観協定

土地所有者等の全員の合意により、景観に関する協定を締結できます。

内容
締結 全員の合意。景観行政団体の認可を受ける
効力 認可の公告後に土地を取得した者にも及ぶ
内容 建築物の形態意匠、垣・柵、緑化、屋外広告物など

承継効があるため、取引の際に確認が必要です。知らずに取得すると、後から制約に気づくことになります。

景観整備機構

景観行政団体は、まちづくりに関する法人等を景観整備機構として指定できます。

指定された機構は、景観重要建造物の管理、土地の取得・管理、助言や情報提供などを行います。

行政だけでは担いきれない部分を、地域の団体が受け持つ仕組みです。

景観協議会

景観行政団体、公共施設の管理者、関係団体などで構成される協議の場です。

道路や河川といった公共施設の整備も、景観に大きく影響します。それらの管理者を含めて協議する枠組みが用意されています。

実務での確認

調べる順序

すること
その市町村が景観行政団体か確認する
景観計画の区域内か確認する
景観地区・準景観地区の指定を確認する
届出の対象となる規模・行為を確認する
基準の内容を確認し、定性的な部分は事前相談で詰める
景観協定の有無を確認する
景観重要建造物・樹木の指定を確認する

重なる規制に注意

景観に関わる規制は、複数が同じ土地に重なることがあります。

  • 景観計画区域 + 風致地区
  • 景観地区 + 伝統的建造物群保存地区
  • 景観計画区域 + 屋外広告物条例の規制区域

それぞれ根拠法も窓口も違うため、一つ確認したら終わりではありません。

景観行政に関する確認
  • その市町村が景観行政団体か確認した窓口が変わる
  • 景観計画区域の内か確認した
  • 景観地区・準景観地区の指定を確認した認定制。建築確認の前提
  • 届出の対象となる行為と規模を確認した
  • 基準の定性的な部分を、事前相談で確認した
  • 届出から着工までの期間を工程に見込んだ
  • 特定届出対象行為に該当するか確認した変更命令の対象
  • 景観協定の有無を確認した承継効がある
  • 景観重要建造物・樹木の指定を確認した
  • 風致地区など、他の規制と重なっていないか確認した
  • 基本設計の段階で相談した設計確定後では手戻りが大きい

まとめ

  • 担い手は景観行政団体。一般の市町村は、都道府県との協議・同意を経てなる。
  • 景観計画区域では届出制。届出から一定期間は着工できない。
  • 景観地区では認定制。認定を受けなければ建築確認が下りない。
  • 景観重要建造物に指定されると、除却にも許可が要る。取引前に確認する。
  • 景観協定には承継効がある。土地を取得した者にも及ぶ。
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