開発許可のスケジュール ── どこで何か月かかるか
- 開発許可は許可が出たら終わりではない。工事完了公告まで進んで、はじめて建てられる
- 時間を支配するのは審査ではなく、32条の同意と、農地の手続き
- 標準処理期間は審査に要する期間であって、事前協議の期間は含まれない
- 建築確認は原則として工事完了公告の後。ここを見落とすと工程が崩れる
「開発許可はどれくらいかかりますか」と聞かれます。
正直に申し上げれば、案件によって大きく違います。ただしどこで時間が延びるかは、ほぼ決まっています。審査そのものではありません。
ここでは全体の流れを並べ、どの区間が延びやすいのかを見ていきます。
全体の流れ
| 段階 | やること |
|---|---|
| ① 事前相談 | 要否の判断、立地の方針、区域の設定 |
| ② 事前協議 | 32条の同意・協議、関係各課との調整 |
| ③ 申請 | 設計図書と同意書を添えて提出 |
| ④ 審査 | 33条の技術基準、34条の立地基準。調整区域なら開発審査会 |
| ⑤ 許可 | 許可書の交付 |
| ⑥ 工事 | 造成工事。変更があれば変更許可 |
| ⑦ 完了届・検査 | 工事完了の届出、完了検査 |
| ⑧ 検査済証 | 基準に適合していることの証明 |
| ⑨ 工事完了公告 | ここで建築の制限が解ける |
| ⑩ 建築確認・着工 | 建物の工事に入る |
都市計画法37条は、工事完了の公告があるまで、開発区域内に建築物を建ててはならないと定めています。
例外として、工事用の仮設建築物や、知事が支障がないと認めたものはありますが、原則は「公告の後」です。
「許可が下りたので来月着工します」という工程表を見せられることがあります。造成工事の着工ならそのとおりですが、建物の着工はまだ先です。ここを取り違えると、資金計画も引渡しの時期も狂います。
時間を支配する三つの区間
32条の同意(②)
道路管理者、水路の管理者、下水道管理者。相手ごとに窓口が違い、それぞれの都合で動きます。こちらが急いでも、早くはなりません。
特に、排水の放流先が他人の土地や水路である場合、同意を得るまでの期間が読めなくなります。ここは最初に着手すべき区間です。
農地の手続き(②と並行)
農地転用は、農業委員会の総会の日程に乗ります。月に一度が通例です。
より時間がかかるのは農振除外です。受付を年に数回に限っている自治体があり、除外の告示までさらに数か月を要することがあります。農振除外 → 農地転用 → 開発許可という順序を踏むなら、逆算して一年以上を見込む必要があります。
開発許可の申請を先に出してしまい、農振除外が終わっていないために止まる——という相談を受けることがあります。
農用地区域にある限り、転用はできません。まず除外、次に転用、そして開発許可。この順序は動かせません。
詳しくは農振除外 ── 申出先と、五つの要件と農地転用 ── 三つの条文を、どう使い分けるかをご覧ください。
開発審査会(④)
34条14号で申請する場合、開発審査会の議を経る必要があります。審査会は定期的に開かれますが、毎月とは限りません。
資料の提出期限が会議の数週間前に設定されているのが通例で、一度乗り遅れると、次の回まで待つことになります。日程は公表されていますから、工程表に先に書き込んでおきます。
標準処理期間の読み方
各自治体は、開発許可の標準処理期間を定めて公表しています。しかしこれは、申請を受理してから処分するまでの期間です。
事前協議に要した期間も、同意を待った期間も、ここには入っていません。
依頼者に工程を説明するときは、標準処理期間をそのまま伝えないほうがよいと考えています。実際に長いのは、その手前の区間だからです。
具体的な日数は自治体ごとに定められ、改定もされます。管轄する許可権者の公表資料で確かめてください。
完了検査から公告までの間
造成工事が終われば、すぐ建てられると思われがちですが、間にいくつか段階があります。
- 工事完了の届出 ── 工事が終わったことを許可権者に届け出る
- 完了検査 ── 許可の内容どおりに施工されているかを確認する
- 検査済証の交付 ── 基準に適合していることの証明
- 工事完了公告 ── ここで37条の建築制限が解ける
検査で是正を求められると、手直しをして再度の検査になります。擁壁の仕上がり、排水施設の勾配、道路の幅員——現地で測られるものは、施工の段階から許可図書と突き合わせておきます。
開発行為で新しく造られた道路や公園などの公共施設は、原則として工事完了公告の日の翌日に、市町村の管理に移ります。
その前提として、用地の分筆と所有権の移転登記が済んでいる必要があります。ここが遅れると、公告そのものが延びます。
登記の段取りは、造成工事と並行して進めておくべきものです。工事が終わってから測量に取りかかると、数か月が空きます。
工事が始まってからの落とし穴
変更許可
許可の内容を変えるときは、変更許可が要ります(35条の2)。区域、予定建築物の用途、設計——変更の中身によっては、審査をもう一度受けることになります。
掘ってみたら地盤が想定と違った、という理由での設計変更は珍しくありません。変更許可に要する期間を、あらかじめ工程に余裕として織り込んでおきます。
地位の承継
許可を受けた者が変わる場合の手続きです。相続や合併による一般承継は届出で足りますが、土地を譲り受けた者への承継(特定承継)は、許可権者の承認が要ります。
造成が終わった土地を売却する計画があるなら、この手続きの位置を先に確かめておきます。
工程が崩れる、四つのきっかけ
これまでの案件を振り返ると、遅れの原因はおおむね四つに分かれます。いずれも着工してから分かるのでは遅いものばかりです。
| きっかけ | いつ気づけたか |
|---|---|
| 排水の放流先が決まらない | 事前協議の最初。下流の管理者と土地所有者を先に特定する |
| 相続未登記・共有者の不明 | 登記記録を見た日。着手前に必ず洗う |
| 農振除外の受付を逃した | 年間の受付時期を確かめた時点。数か月の遅れになる |
| 地盤が想定と違った | 地盤調査の段階。設計変更なら変更許可が要る |
四つのうち三つは、調査の段階で分かるものです。工程を守るための投資先は、設計の速さではなく調査の早さだと考えています。
依頼者に、どう伝えるか
期間を一言で答えると、必ず後で食い違います。私たちは、次のように分けてお伝えしています。
- 読める区間 ── 審査、完了検査、建築確認。おおよその見当がつく
- 読みにくい区間 ── 32条の同意、農地の手続き、権利関係の整理
- いま分かっていないこと ── 調査で確かめる項目を、名指しで挙げる
「三か月です」ではなく「読めない区間はここで、それを先に潰します」と伝えるほうが、結果として信頼されます。
資金計画や引渡しの約束は、この読めない区間の上に乗っています。楽観的な工程表を最初に出すと、後で全部を組み直すことになります。
逆算のしかた
引渡しの時期から逆算するとき、私たちは次の順で置いていきます。
- 引渡し ← 建物の工期
- 建物の着工 ← 建築確認 ← 工事完了公告
- 工事完了公告 ← 完了検査 ← 造成工事の工期
- 造成の着工 ← 許可 ← 審査(+開発審査会の日程)
- 申請 ← 32条の同意と農地の手続き
いちばん下の行が、いちばん読めません。だから、そこから先に動かします。
- 工事完了公告まで建物を建てられないことを、依頼者と共有した
- 32条の協議先を洗い出し、最初に着手した
- 排水の放流先の同意者を特定した
- 農振除外の受付時期を確かめた(年に数回の自治体がある)
- 農振除外 → 農地転用 → 開発許可の順序を守っている
- 農業委員会の総会日程を工程表に書き込んだ
- 34条14号なら、開発審査会の日程と資料提出期限を確かめた
- 標準処理期間が審査の期間であることを理解している
- 変更許可が入った場合の余裕を見込んだ
- 造成後に売却する予定があるなら、地位の承継の手続きを確かめた
- 引渡しの時期から逆算した工程表を、関係者で共有した
まとめ
- 開発許可は、工事完了公告まで進んではじめて建築に入れる
- 時間を支配するのは審査ではなく、32条の同意と農地の手続きである
- 農振除外は受付時期が限られ、逆算すると一年以上を要することがある
- 標準処理期間は審査の期間であり、事前協議の期間は含まない
- 変更許可と地位の承継は、工程に余裕として織り込んでおく
