開発許可の変更 ── 35条の2と、軽微な変更の届出
- 許可の内容を変えるときは変更許可(35条の2)が要る。軽微なものは届出で足りる
- 変更許可は新規の申請と同じ審査を受ける。32条の同意も取り直しになり得る
- 設計変更のきっかけで多いのは、地盤・埋設物・近隣の要望の三つ
- 工事を止めずに進めたいなら、変更の要否を先に窓口で確かめる
許可が下りて工事が始まってから、計画を変えたくなることがあります。掘ってみたら想定と違った。売れ行きを見て区画割りを変えたい。近隣から要望が出た。
開発許可は、許可を受けた内容どおりに工事をすることが前提です。変えるなら、変える手続きが要ります。
変更許可と、軽微な変更の届出
都市計画法35条の2は、開発許可を受けた者が許可申請書の記載事項を変更しようとする場合、あらためて許可を受けなければならないと定めています。
ただし、すべての変更に許可が要るわけではありません。政令で定める軽微な変更については、届出で足ります。
| おおよその性格 | |
|---|---|
| 変更許可が要る | 開発区域の変更、予定建築物の用途の変更、設計の変更(技術基準に関わるもの)、資金計画の大きな変更 |
| 届出で足りる | 設計の軽微な変更、工事施行者の変更、工事完了予定年月日の変更など |
どこまでが「軽微」かは、政令の定めに加えて自治体の運用があります。自己判断せず、窓口で確かめるべき部分です。
変更許可は、もう一度の審査
変更許可は「変更の部分だけを見る簡易な手続き」ではありません。変更後の計画全体が、33条の技術基準と34条の立地基準を満たすかを審査します。
そのため、次のことが起こり得ます。
- 32条の同意を取り直す ── 排水の経路や道路の取り付けが変われば、管理者の同意も変わる
- 権利者の同意を取り直す
- 市街化調整区域なら、立地の説明をやり直す。34条14号なら開発審査会に再度かかることもある
- 近隣への再説明
工期への影響は小さくありません。「変更くらいならすぐ」という前提で工程を組まないことです。
変更が要るとき、要らないとき
実務でよく相談を受ける場面を並べます。いずれも最終的な判断は窓口ですが、考え方の目安として。
| 起きたこと | 考え方 |
|---|---|
| 地盤が想定と違い、擁壁の構造を変える | 技術基準に関わるので、変更許可の可能性が高い |
| 区画の割り方を変える(区域は同じ) | 道路・排水に影響すれば変更許可 |
| 予定建築物を戸建てから共同住宅へ | 用途の変更。変更許可が要る |
| 施工会社が替わる | 届出で足りることが多い |
| 工期が延びる | 完了予定年月日の変更。届出で足りることが多い |
| 開発区域を広げる | 変更許可。面積要件や一体開発の判断にも影響する |
変更のきっかけは、三つに集約される
- 地盤 ── 掘ってみたら支持層が深かった、湧水が出た。地盤調査を先に打っておけば、多くは避けられます
- 埋設物 ── 古い基礎、井戸、浄化槽、産業廃棄物。現地調査と、旧公図・航空写真で当たりがつくことがあります
- 近隣の要望 ── 説明が遅れたために、許可後に出てくる。設計が固まる前に説明に入れば、設計で吸収できます
変更許可は、いわば手戻りの費用です。前の工程での手当てで、かなりの部分が減らせます。
変更を待つ間、工事はどうなるか
変更の内容に関わる部分の工事は、許可が下りるまで進められません。関係のない工区は進められることもありますが、これも窓口の判断です。
先に工事を進めておいて、後から変更許可を取る——という順序は取れません。許可を受けた内容と違う工事は、無許可の工事と同じ扱いになり得ます。
現場が動いていると、止めたくない気持ちが働きます。しかしそのまま進めて完了検査で指摘されると、造り直しになります。
擁壁を積んでしまってから「この構造では通らない」と言われる。これがいちばん高くつく失敗です。
工程に、どう織り込むか
私たちは、造成工事の工程には変更許可の可能性を余裕として見込んでおくようにしています。とくに、次の条件が重なる案件では確率が上がります。
- 高低差が大きい
- 地盤調査が簡易なものしか行われていない
- 過去に何かが建っていた土地
- 近隣説明がまだ済んでいない
- 販売計画が固まっていない(区画割りが動く可能性)
該当が多いほど、設計を固める前に確かめる項目を増やす。それが結果として工期を守る道になります。
- 変更許可か届出か、窓口で確かめた
- 自己判断で工事を進めていない
- 32条の同意を取り直す必要があるか確かめた
- 権利者の同意の取り直しが要るか確かめた
- 市街化調整区域なら、立地の説明が変わらないか確かめた
- 34条14号なら、開発審査会に再度かかるか確かめた
- 近隣への再説明の要否を判断した
- 変更に要する期間を工程に反映した
- 変更の部分と、進められる工区を切り分けた
- 変更の経緯を記録に残した
完了検査で発覚した場合
変更の手続きを取らないまま工事を進め、完了検査で許可の内容と違うことが分かる——これがいちばん重い形の発覚です。
許可の内容と現地が違えば、検査済証は交付されません。検査済証が出なければ、工事完了公告も出ません。公告が出なければ、建物は建てられません。
この状態を解くには、どちらかしかありません。
- 現地を許可の内容に戻す ── 造り直し。擁壁や排水施設なら、費用は大きい
- 変更許可を取る ── 変更後の計画が基準を満たすなら。満たさなければ、この道は使えません
「造ってしまえば、後から認めてもらえるだろう」という見込みは、通りません。基準を満たさないものは、造ってあっても満たさないままです。
途中で気づいたときの動き方
施工中に「これは許可の内容と違うかもしれない」と気づいたとき、動き方は決まっています。
- ① その部分の工事を止める
- ② 許可図書と現地の違いを、図と写真で整理する
- ③ 窓口に相談し、変更許可か届出かを確かめる
- ④ 手続きと並行して、進められる工区を確かめる
②が大事です。「どこが、どれだけ違うのか」を数字で示せると、話が早く終わります。口頭で「少しずれています」と言うと、全体を疑われます。
変更の記録を、残しておく
開発許可を受けた土地は、その後も長く扱われます。売却、建替え、用途変更。そのたびに「当時どういう許可だったか」が問われます。
変更許可を取った案件では、当初の許可と、変更後の内容の両方を残しておきます。開発登録簿にも記載されますが、手元にも一式あるほうが確実です。
- 当初の許可書と許可図書
- 変更許可の申請書と許可書
- 変更の理由を書いた覚書
- 32条の同意を取り直した場合、その書面
十年後に、この一式があるかどうかで、次の手続きの手間が変わります。
資金計画の変更
見落とされやすいのが、資金計画です。開発許可の申請書には、工事に要する費用とその調達方法を記載します。
工事費が大きく変わる、あるいは融資の組み立てが変わる場合、これも変更の対象になり得ます。設計や区域の話だけが変更ではありません。
借入先が替わる、自己資金の割合が変わる、といったときは、窓口に一報しておくのが安全です。工事を完成させられるかどうかは、許可の前提そのものだからです。
まとめ
- 許可の内容を変えるには変更許可(35条の2)が要り、軽微なものは届出で足りる
- 変更許可は変更後の計画全体を審査するため、新規申請と同じ重さになる
- 32条の同意や立地の説明が、取り直しになることがある
- 変更のきっかけは地盤・埋設物・近隣の要望に集約され、いずれも前工程で減らせる
- 先に工事を進めて後から変更許可を取る、という順序は取れない
