CHIOU / 株式会社地央

文化財保護法の概要 ── 六つの類型と、埋蔵文化財

この記事の要点
  • 文化財は六つの類型に分かれる。土地に関わるのは主に三つ
  • 保護の強さは指定・選定・登録で違う。同じ「文化財」ではない
  • 実務で最も広く効くのが埋蔵文化財包蔵地。工事の前に届出が要る
  • 平成30年の改正で、活用と、市町村による計画が制度に加わった

文化財保護法は、文化財を保存し、その活用を図るための法律です。

土地の実務では、建物や史跡そのものより、埋蔵文化財包蔵地に関わる場面が圧倒的に多くなります。

この記事では、制度の全体像を整理したうえで、土地に関わる部分を中心に扱います。

六つの類型

類型 内容
有形文化財 建造物、絵画、彫刻、工芸品、古文書など
無形文化財 演劇、音楽、工芸技術など
民俗文化財 風俗慣習、民俗芸能、民俗技術と、それに用いられる用具など
記念物 史跡、名勝、天然記念物
文化的景観 地域の生活・生業と風土により形成された景観地
伝統的建造物群 周囲の環境と一体をなす、歴史的な建造物群

このうち、土地の利用に直接関わるのは、有形文化財(建造物)、記念物、伝統的建造物群です。

加えて、法律上は文化財の類型そのものではありませんが、埋蔵文化財に関する規定が土地の実務では最も広く関わります。

保護の強さ

指定・選定・登録は、別のもの
性格 規制の強さ
指定 重要なものを選び出す 強い。現状変更に許可が必要
選定 伝統的建造物群保存地区などを選ぶ 地区として保存措置がとられる
登録 緩やかに保護する 弱い。届出制が中心

同じ「文化財」という言葉でも、扱いが大きく違います。

「国宝」「重要文化財」は指定、「登録有形文化財」は登録です。混同すると、必要な手続きを誤ります。

国・都道府県・市町村

指定は、国だけが行うものではありません。

主体
国宝、重要文化財、史跡、名勝、天然記念物
都道府県 都道府県指定文化財
市町村 市町村指定文化財

それぞれ根拠となる条例があり、手続きの窓口も異なります。

調査の際は、国指定だけを確認して終わりにしないでください。都道府県・市町村の指定がある場合があります。

埋蔵文化財包蔵地

土地の実務で、最も広く関わる

埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地を、周知の埋蔵文化財包蔵地といいます。

この区域内で土木工事等を行う場合、着手前に届出が必要です。

内容
誰が 工事を行おうとする者
いつまでに 着手の相当期間前
どこへ 都道府県または市の教育委員会

届出を受けた教育委員会は、必要に応じて発掘調査等の措置を指示します。

この調査に、期間と費用がかかります。

何が起こりうるか

段階 内容
試掘・確認調査 遺構の有無を確かめる
遺構がない そのまま工事に着手できる
遺構がある 本発掘調査、または設計変更による回避
重要な遺跡 保存が求められ、開発が困難になる場合がある
費用と期間が、事業に直接影響する

発掘調査の費用は、原則として事業者の負担とされています(住宅など、一部に公費負担の仕組みがある場合があります)。

期間も、規模によっては数か月から年単位になります。

  • 着工の時期が動く
  • 資金計画に影響する
  • 賃貸物件であれば、収入の開始が遅れる
  • 売買契約の期限に間に合わないことがある

包蔵地内の土地を取得する場合、この可能性を計画に織り込んでください。

事前に教育委員会へ相談すると、その場所での過去の調査結果や、想定される対応を教えてもらえることがあります。

包蔵地の外でも

周知されていない土地であっても、工事中に遺跡を発見した場合には届け出る義務があります。

「包蔵地でなければ関係ない」ではありません。過去に周辺で遺跡が見つかっている地域では、その可能性を念頭に置いてください。

指定文化財と、その土地

現状変更の制限

指定を受けた文化財は、現状を変更したり、保存に影響を及ぼす行為をしたりする場合、許可が必要です。

対象 制限される行為の例
重要文化財(建造物) 修理、改造、移築、除却
史跡・名勝・天然記念物 土地の形質変更、建築、工作物の設置、樹木の伐採

史跡等に指定された土地は、開発が大きく制限されます。

建築基準法との関係

文化財は、建築基準法の適用を除外されうる

国宝や重要文化財に指定された建築物などについては、建築基準法の規定が適用されないという扱いがあります。

現行の基準に適合させようとすると、かえって文化財としての価値が損なわれるためです。

また、指定されていない歴史的建造物についても、条例により建築基準法の一部の規定の適用を除外できる仕組みが設けられています。

これにより、現行基準に適合しない古い建物を、そのまま保存・活用しやすくなります。

活用を検討する場合、この仕組みが使えるかどうかを、市町村の建築担当課と文化財担当課の双方に確認してください。

登録制度

指定ほど強い規制をかけず、緩やかに保護しながら活用を促すための制度です。

指定文化財 登録有形文化財
選び方 重要なものを厳選 幅広く登録する
現状変更 許可 届出(外観の一定割合を超える変更等)
活用 制約が大きい 使いながら残すことを想定
支援 修理への補助等 設計監理費への補助、税制上の措置など

「使いながら残す」という考え方に立った制度です。この点は別の記事で詳しく扱います。

平成30年の改正

保存から、保存と活用へ

平成30年(2018年)の改正で、次の仕組みが加わりました。

仕組み 内容
文化財保存活用大綱 都道府県が策定する
文化財保存活用地域計画 市町村が策定し、国の認定を受ける
保存活用計画 個々の文化財について、所有者等が作成できる
事務の移管 条例により、文化財の事務を首長部局で扱えるようになった

最後の点は、実務に影響します。

従来、文化財の事務は教育委員会が担うものとされていました。これをまちづくりや観光の部局で扱えるようにすることで、活用の方向で動かしやすくなります。

ただし、市町村によって体制が異なります。どの部局が窓口かを確認してください。

背景にあるもの

  • 過疎化により、担い手と所有者がいなくなる文化財が増えている
  • 保存だけでは維持できない 活用による収入と関心が必要
  • 観光やまちづくりの資源としての期待
  • 指定されていない文化財も含めて、地域で守る必要

「守るために、使う」という方向への転換です。

他の制度との関係

制度 関係
景観法 景観重要建造物との使い分け・併用
歴史まちづくり法 文化財を核とした面的な整備
都市計画法 伝統的建造物群保存地区は地区計画等と同じ地域地区
建築基準法 適用除外の仕組み
税制 相続税・固定資産税の措置

文化財だけで完結せず、まちづくりの制度と組み合わせて使われます。

実務での確認

確認するもの 窓口
埋蔵文化財包蔵地か 教育委員会(文化財担当)
過去の調査結果 同上
指定文化財の有無 同上。国・都道府県・市町村のすべて
登録有形文化財か 同上
伝統的建造物群保存地区 同上、または都市計画課
建築基準法の適用除外 建築担当課と文化財担当課
重要事項説明の対象になる

埋蔵文化財包蔵地であること、指定文化財であることは、法令に基づく制限として説明すべき事項です。

説明を怠り、買主が取得後に発掘調査を求められた場合、期間と費用の負担をめぐって紛争になります。

包蔵地の範囲は、市町村が地図で公表していることが多くあります。ウェブで確認できる場合もあります。

文化財に関する確認
  • 周知の埋蔵文化財包蔵地か確認した
  • 過去の調査結果を教育委員会に照会した
  • 発掘調査の可能性と、期間・費用を計画に織り込んだ
  • 指定文化財の有無を確認した国・都道府県・市町村のすべて
  • 登録有形文化財か確認した指定とは扱いが違う
  • 史跡・名勝・天然記念物の指定を確認した
  • 伝統的建造物群保存地区の内か確認した
  • (歴史的建造物の活用)建築基準法の適用除外が使えるか確認した
  • 窓口がどの部局か確認した教育委員会か、首長部局か
  • 重要事項説明の対象として整理した

まとめ

  • 文化財は六つの類型。土地に関わるのは有形文化財(建造物)、記念物、伝統的建造物群。
  • 指定・選定・登録は別のもの。保護の強さと手続きが違う。
  • 実務で最も広く効くのが埋蔵文化財包蔵地。工事前の届出が要る。
  • 発掘調査の費用は原則として事業者負担。期間も事業に直接影響する。
  • 平成30年の改正で、活用と市町村による計画が制度に加わった。
この内容を、研修・講座として。

自治体職員、専門職団体、事業者の皆様向けにお引き受けしています。上位計画から個別の許認可まで、つながりを追ってお話しします。
構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。

都市計画実践講座を見る
土地法制の見取図

BLOG

ブログ

PAGE TOP