CHIOU / 株式会社地央

自治体職員のための都市計画法 ── 用途地域と地区計画の読み方

この章の要点
  • 都市計画法が定めるのは、区域区分・地域地区・都市施設・市街地開発事業の四つ。窓口で最もよく使うのは用途地域
  • 用途地域は十三種類。建蔽率・容積率・高さ制限とあわせて見ると、建てられる建物の輪郭が見える
  • 地区計画は用途地域への上乗せ。ここを飛ばすと回答が後から覆る
  • 計画道路や事業区域にかかる場合は第53条の許可が必要。可否は所管課につなぐ

「この土地に店を出せますか」「二階建てを三階にできますか」。窓口で受ける相談の多くは、都市計画法の話に行き着きます。庁内でも、政策の調整や公共施設の配置を検討する場面で、この法律の枠組みが前提になります。

ところが都市計画法は、区域の指定、用途地域、都市施設、市街地開発事業、地区計画と、扱う範囲が広い法律です。どこから確認すればよいのか、どこまでが窓口で答えられる範囲なのかが分かりにくく、所管課へ回すべきかどうかの判断で迷いがちです。

この章では、都市計画法が定めている内容の全体像と、用途地域を起点に窓口で確認していく順序までを扱います。

都市計画法は何を定めているのか

都市計画法は、街を無秩序に広げず、計画的につくるためのルールを定めた法律です。もし誰もが好きな場所に自由に建物を建てられたら、住宅地の真ん中に高層ビルが並び、上下水道が追いつかず、災害時の避難経路も確保できません。こうした混乱を防ぐために、「どこに何を建ててよいか」「どんな高さや規模の建物を建てるべきか」を定めています。

定めている内容は、大きく次の四つに分けられます。

区域区分都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分ける(線引き)。第01章で扱いました。
地域地区用途地域、防火地域・準防火地域、風致地区、高度地区など。どこに何を建ててよいかを定める。
都市施設道路、公園、下水道、学校といった公共施設の位置と規模を都市計画として定める。
市街地開発事業土地区画整理事業、市街地再開発事業など、面的に街を整備する事業を定める。

窓口の相談で最もよく使うのは、二つ目の「地域地区」、なかでも用途地域です。

用途地域という土台

用途地域は、市街化区域に必ず定められている区分で、全部で十三種類あります。住宅を守る地域、商業を集める地域、工業のための地域と、性格ごとに分かれています。

十三種類の大きな分かれ方

住居系(8種類)第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域。住環境の保護を優先し、建てられる建物の種類と規模が制限されます。
商業系(2種類)近隣商業地域、商業地域。店舗や事務所が自由に建てられます。住宅も建てられますが、住環境の保護は優先されません。
工業系(3種類)準工業地域、工業地域、工業専用地域。工場の建設が認められます。工業専用地域では住宅を建てることができません。

たとえば第一種低層住居専用地域では、原則として戸建て住宅と小規模な兼用住宅しか建てられず、建物の高さも十メートルまたは十二メートルに制限されます。ここに大きな工場が建てば、騒音や排気で住環境が損なわれるからです。逆に工業専用地域には住宅を建てられません。工場の操業に支障が出ることを防ぐためです。

窓口での言い換え
相談者に「第一種低層住居専用地域です」とだけ伝えても、多くの場合は伝わりません。
「住宅を守ることを最優先している地域で、お店や事務所は原則として建てられません。建物の高さも制限があります」
と、性格と制限の中身を添えると、その後のやり取りが早くなります。

建蔽率と容積率

用途地域とあわせて必ず確認するのが、建蔽率と容積率です。

  • 建蔽率 敷地面積に対して、建物が地面を覆ってよい割合。空地を確保し、防火と採光・通風を保つための制限です。
  • 容積率 敷地面積に対して、建物の延べ床面積が取れる割合。地域のインフラが受け止められる人口や交通量を超えないための制限です。

相談者が知りたいのは「どのくらいの大きさの建物が建つか」なので、用途地域とこの二つを合わせて伝えると、多くの相談はここで一段落します。

地区計画という細かい上乗せ

用途地域は市街化区域全体を大きく区分するものですが、それだけでは地域ごとの事情に対応しきれません。そこで、特定の区域にさらに細かいルールを定めるのが地区計画です。

たとえば、歴史的な街並みを残したい地区で「伝統的な意匠に合わせる」と定めたり、良好な住環境を守るために「敷地の最低面積」や「壁面の位置」を定めたりします。用途地域よりも厳しい制限が上乗せされていることが多いため、用途地域だけを見て回答すると誤ることがあります

あわせて、建築協定や景観計画の区域に入っていないかも確認が必要です。これらは都市計画法ではなく建築基準法や景観法に基づくものですが、実務上は同じ場面で問題になります。

都市計画法の変遷

この法律の骨格は、1968年(昭和43年)の新都市計画法によってつくられました。それ以前の旧法は1919年(大正8年)の制定で、1923年の関東大震災を経て、都市計画の重要性が広く認識されるようになった経緯があります。

その後も、戦後の急激な都市化への対応、2000年の地方分権一括法による決定権限の市町村への移譲、そして近年の立地適正化計画やコンパクトシティ政策と、時代の課題に合わせて改正が重ねられてきました。人口減少期に入り、いまは「広げる計画」から「たたむ計画」への転換が課題になっています。

まちづくりと都市計画法の関係

「まちづくり」という言葉は1950年代から使われはじめ、当初は都市計画とほぼ同じ意味でした。いまでは、住民の意見を取り入れながら、地域の特性を活かして住みやすい環境をつくっていく活動、という意味合いが加わっています。

両者の関係は、都市計画法が土台のルールを定め、その枠のなかで住民の意見を反映させていくのがまちづくり、と整理できます。「もっと公園がほしい」という住民の声があっても、それが都市計画の枠組みのなかで実現できるかを検討する必要があります。逆に、地区計画のように、住民の合意を前提に地域独自のルールを都市計画として定める仕組みもあります。

窓口での確認手順

一 都市計画図で用途地域を特定する

まず用途地域を確認します。市街化調整区域であれば用途地域は原則としてないため、第01章の手順に戻ります。用途地域の境界が敷地の中を通っている場合は、按分の考え方が必要になるため所管課の判断を仰ぎます。

二 建蔽率・容積率・高さの制限を確認する

用途地域に応じた建蔽率と容積率、そして高さ制限(絶対高さ、道路斜線、隣地斜線、北側斜線、日影規制)を確認します。ここまでで「どのくらいの建物が建つか」の輪郭が見えます。

三 地区計画・建築協定・景観計画の有無を確認する

上乗せの制限がないかを確認します。ここを飛ばすと、回答が後から覆ります地区計画がある場合は、地区整備計画の内容まで確認します。

四 防火地域・準防火地域の指定を確認する

指定があれば、建物の構造や開口部に制限がかかります。木造で計画している相談では、この時点で計画の見直しが必要になることがあります。

五 都市施設・市街地開発事業との重なりを確認する

計画道路や公園などの都市施設の区域にかかっていないか、区画整理や再開発の事業区域に入っていないかを確認します。かかっている場合、都市計画法第53条の建築許可が必要になり、建てられる建物が階数や構造の面で制限されます。

六 回答を組み立てる

「確認できたこと」「確認できていないこと」「次に相談すべき窓口」の三つに分けて伝えます。とくに地区計画や第53条が絡む場合は、可否を断定せず所管課につなぎます。

実務チェックリスト
  • 用途地域を都市計画図で特定した境界が敷地内を通っている場合は所管課の判断が必要
  • 建蔽率・容積率を確認した
  • 高さ制限を確認した絶対高さ/道路斜線/隣地斜線/北側斜線/日影規制
  • 地区計画の有無を確認したある場合は地区整備計画の内容まで
  • 建築協定・景観計画の区域に入っていないか確認した
  • 防火地域・準防火地域の指定を確認した
  • 計画道路・都市施設の区域にかかっていないか確認したかかる場合は都市計画法第53条の許可が必要
  • 土地区画整理・市街地再開発の事業区域に入っていないか確認した
  • 回答を「確認できたこと/できていないこと/次の窓口」に分けて伝えた
  • 相談内容と回答内容を記録に残した

まとめ

  • 都市計画法は、区域区分・地域地区・都市施設・市街地開発事業の四つを定める法律。窓口で最もよく使うのは用途地域。
  • 用途地域は十三種類。住居系八、商業系二、工業系三に分かれ、建てられる建物の種類と規模が変わる。
  • 用途地域とあわせて、建蔽率・容積率・高さ制限を確認すると、建てられる建物の輪郭が見える。
  • 地区計画は用途地域に上乗せされる細かいルール。ここを飛ばすと回答が後から覆る。
  • 計画道路や事業区域にかかる場合は第53条の許可が必要。可否は所管課につなぐ。

関連法令

  • 都市計画法第8条 用途地域その他の地域地区について規定。
  • 都市計画法第11条 都市施設(道路、公園、下水道等)について規定。
  • 都市計画法第12条 市街地開発事業について規定。
  • 都市計画法第12条の4・第12条の5 地区計画等について規定。
  • 都市計画法第53条 都市計画施設等の区域内における建築の許可について規定。
  • 建築基準法第52条・第53条 容積率および建蔽率の制限について規定。
ご確認ください

本章は制度理解のための一般的な解説であり、個別案件の法的判断を保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、都市計画課・農業委員会・法務局・建築指導課など所管窓口や専門家(行政書士・土地家屋調査士等)に必ずご確認ください。

この内容を、貴庁の職員研修として。

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