PPP/PFI事業 ── リスクと機会をどう評価するか
- PPPは広い概念、PFIはその一手法。指定管理者や包括委託もPPPに含まれる
- 方式は誰が所有し、誰が資金を出し、誰が運営するかの組み合わせで決まる
- 導入の判断軸はVFM。従来方式で行った場合の総費用と比較する
- リスクは最も安く管理できる側が負う。分担が曖昧だと、事業者は上乗せして応札する
「PFIでやります」と説明されたとき、実際に何がどう変わるのかが分かりにくい。用語が英語の略語で並び、方式の名前も似ています。
しかし整理してみると、決めているのは三つだけです。誰が施設を所有するか。誰が資金を出すか。誰が運営するか。この組み合わせで方式の名前が決まります。
コースC第4章の第1回として、方式の使い分けとリスク分担の考え方を扱います。
PPPとPFIの関係
| 内容 | |
|---|---|
| PPP(官民連携) | 公共と民間が連携して公共サービスを提供する手法の総称。広い概念 |
| PFI | PPPの一手法。民間の資金・経営能力・技術を活用して公共施設等を整備・運営する。PFI法に基づく |
PPPには他にも、指定管理者制度(地方自治法に基づく公の施設の管理)、包括的民間委託(複数業務をまとめて委託)、公有地の活用(定期借地権による民間開発)などが含まれます。
「官民連携=PFI」ではありません。規模や目的によって、もっと簡易な手法が適していることもあります。
方式の使い分け
所有・資金・運営の組み合わせ
| 方式 | 資金調達 | 所有 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| BTO | 民間 | 完成後すぐ公共へ移転 | 最も多く使われる。公共が所有するため固定資産税等がかからない |
| BOT | 民間 | 事業期間中は民間、終了後に公共へ移転 | 民間が所有するため税負担が生じる。自由度は高い |
| BOO | 民間 | 民間が所有し続ける | 期間終了後に施設が不要になる場合など |
| DBO | 公共 | 公共 | 設計・建設・運営を一体で民間に委ねるが、資金は公共が調達。金利負担が小さい |
| コンセッション | ― | 公共 | 施設の運営権を民間に設定する。利用料金を民間が収受 |
完成後すぐに公共へ所有権を移すため、固定資産税や都市計画税がかかりません。民間が所有し続けるBOTやBOOでは、これらの税負担が事業費に上乗せされます。
また、公共施設として位置づけが明確になるため、住民への説明もしやすくなります。実務ではBTOが選ばれることが多くなっています。
収入の型
| 型 | 民間の収入源 | 需要変動リスク |
|---|---|---|
| サービス購入型 | 公共からの対価 | 公共が負う |
| 独立採算型 | 利用者からの料金 | 民間が負う |
| 混合型 | 公共からの対価+利用料金 | 分担する |
どの型かで、応札してくる事業者の顔ぶれが変わります。独立採算型は需要リスクが重いため、参加できる事業者が限られます。
導入の判断 VFM
PFIを導入するかどうかの判断軸がVFM(Value for Money)です。「支払いに対して、より高い価値が得られるか」を判断します。
PSCと比較する
| 内容 | |
|---|---|
| PSC | 従来の公共事業方式で実施した場合のライフサイクル総費用(現在価値) |
| PFIのLCC | PFI方式で実施した場合の公的負担の総額(現在価値) |
この二つを比べ、PFIのほうが低ければVFMが確保されていると判断されます。
リスクも金額に換算する
比較にあたっては、費用だけでなくリスクも金銭に換算して加えます。「発生確率 × 損害額」で期待値を出し、それぞれの側が負うリスクのコストとして計上します。
割引率の設定、リスクの発生確率の見積り、運営期間の長さ。これらの前提を少し変えるだけで、VFMの数値は大きく動きます。
「VFMが確保されました」という説明を受けたときは、どういう前提で算出したかを確認してください。数字そのものより、前提の妥当性が問われます。
リスクをどう分けるか
PPPの中心的な考え方は、リスクを最も安く管理できる側が負うというものです。
| リスク | 原則として負う側 | 理由 |
|---|---|---|
| 設計・建設の技術リスク | 民間 | 技術と経験を持っている |
| 工期の遅延(民間起因) | 民間 | 工程管理は民間の責任 |
| 運営の効率性 | 民間 | ノウハウを活かせる |
| 許認可の遅延 | 公共 | 民間には制御できない |
| 用地の取得、権利調整 | 公共 | 同上 |
| 法令・制度の変更 | 公共 | 同上 |
| 地中障害(事前情報の不備) | 案件による | 契約で明確にすべき典型 |
リスクの帰属が契約で曖昧なままだと、民間事業者はそのリスクを自分が負うものとして見積り、価格に上乗せして応札します。
これは公共にとって損です。本来は公共が負うべきリスクを、事業者のリスクプレミアムという形で高く買い取ることになります。
リスク分担表を作り、一つずつ帰属を明記する。この作業が事業費に直結します。
手続きの流れ(PFIの場合)
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 導入可能性調査 | VFMが見込めるかを検討 |
| サウンディング | 市場の意見を聴く。参加しうる事業者がいるかを確認 |
| 実施方針の策定・公表 | 事業概要、事業者の要件、スケジュール(PFI法5条) |
| 特定事業の選定 | PFIで実施することを決定(PFI法7条) |
| 募集・要求水準書の公表 | 達成すべき成果を示す |
| 事業者の選定 | 提案を評価。外部有識者による委員会を置くことが多い |
| 事業契約の締結 | リスク分担、対価、モニタリング、ペナルティ |
| 設計・建設 | |
| 運営・維持管理 | 長期にわたるモニタリング |
応札者が現れず、入札が不調に終わる例があります。とくに小規模自治体、地方部の案件で起こりやすい。
事業規模が小さすぎる、条件が厳しすぎる、地元に担える事業者がいない。これらは事前に市場の意見を聴けば分かります。
方針を固めてから公表するのではなく、固める前に聴く。この順序が重要です。
要求水準書は「成果」で書く
民間のノウハウを引き出すには、手段を細かく指定しないことです。
| 手段を指定する書き方 | 成果を求める書き方 | |
|---|---|---|
| 清掃 | 「清掃員を○名配置」 | 「利用者満足度○%以上を維持」 |
| 設計 | 「部材の仕様を指定」 | 「耐用年数○年、維持管理費○円以下」 |
| 運営 | 「開館時間と職員数を指定」 | 「稼働率○%以上」 |
手段を指定すると、民間は指定どおりに実行するだけになります。それなら従来の請負と変わりません。成果で求めることで、達成方法の工夫が生まれます。
ただし、成果をどう測るかを決めておかないと機能しません。測定できない指標を並べても、モニタリングができず、ペナルティも科せません。
実務での関わり方
自治体の側で関わるとき
- 導入可能性調査のVFMは、どういう前提で算出されたか
- サウンディングを実施したか。何社から意見を得たか
- リスク分担表は作られているか。曖昧な項目はないか
- 要求水準は成果で書かれているか。測定方法は決まっているか
- モニタリングを誰がどう行うか。長期にわたる体制はあるか
民間の側で関わるとき
- 収入の型を確認する。サービス購入型か独立採算型か
- 需要変動リスクを誰が負うか
- 公共が負うとされているリスクが、契約上明確か
- ペナルティの条項。どの水準を下回ると減額されるか
- 事業期間終了後の扱い。施設の移転、原状回復
周辺で不動産を扱うとき
PFI事業が予定されている周辺の物件では、完成時期と施設の性質が影響します。ただし、事業者選定が不調に終われば、計画自体が動きません。
「PFIで施設ができます」を確定した情報として伝えないでください。段階を添えて説明し、記録に残します。
この手法が向かない場合
- 事業規模が小さい 手続きコストが相対的に大きくなり、VFMが出ない
- 担える事業者が地域にいない 域外の大手のみが参加し、地域経済に還元されない
- 需要の見通しが立たない 独立採算型は成立しない
- 要求内容が固まっていない 成果で書けなければ、この手法の利点が出ない
PPPは万能ではありません。従来方式のほうが安く早い案件もあります。導入すること自体が目的にならないよう注意が要ります。
- PPPの手法を確認したPFI/指定管理者/包括委託/公有地活用
- 方式を確認したBTO/BOT/BOO/DBO/コンセッション
- 収入の型を確認したサービス購入型/独立採算型/混合型
- 需要変動リスクを誰が負うか確認した
- VFMの算出前提を確認した割引率・リスクの見積り・期間
- リスク分担表を確認した曖昧な項目がないか
- 地中障害など、事前情報の不備によるリスクの帰属を確認した
- サウンディングが実施されたか確認した
- 要求水準が成果で書かれているか確認した
- 成果の測定方法が決まっているか確認した
- モニタリングの体制を確認した長期にわたる
- ペナルティの条項を確認した
- 事業期間終了後の扱いを確認した
- (周辺の物件)計画を確定した情報として伝えていない
まとめ
- PPPは総称、PFIはその一手法。指定管理者や包括委託も含まれる。
- 方式は所有・資金・運営の組み合わせで決まる。BTOが多いのは税負担が生じないため。
- 判断軸はVFM。ただし算出の前提で数値は大きく動く。前提を確認する。
- リスクは最も安く管理できる側が負う。曖昧にすると価格に上乗せされる。
- PPPは万能ではない。規模、事業者の有無、需要の見通しによっては向かない。
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