サブリース契約 ── 何が保証され、何が保証されないか
- 賃料は減額されうる。「保証」と書かれていても、借地借家法の規定が働く
- 2020年にサブリース新法ができた。誇大広告・不当な勧誘の禁止、重要事項説明の義務
- オーナー側からの解約は難しい。正当の事由が必要になる
- 契約開始後の免責期間を必ず確認する。その間は賃料が入らない
「空室でも家賃を保証します」。サブリース契約は、この言葉で説明されることが多くあります。
しかし、その賃料は減額されることがあります。契約書に「保証」と書かれていても、法律上の仕組みがそれを許しているためです。
この点をめぐる問題が相次いだ結果、2020年に規制のための法律ができました。この記事では、仕組み、法律の規制、そして契約前に確認すべきことを整理します。
仕組み
オーナーが物件をサブリース業者に一括して貸し、業者が入居者に転貸する形です。契約は二重になります。
| 契約 | 当事者 |
|---|---|
| マスターリース契約 (特定賃貸借契約) |
オーナー ⇄ サブリース業者 |
| 転貸借契約 | サブリース業者 ⇄ 入居者 |
オーナーから見ると、入居者ではなくサブリース業者が借主です。業者は入居者から受け取る賃料と、オーナーに支払う賃料の差額を収益とします。
「保証」の意味
サブリース業者は、法律上借主です。そして借地借家法には、借主が賃料の減額を請求できる規定があります(32条)。
建物の税負担の増減、価格の変動、近隣の賃料相場との比較。これらの事情によって賃料が不相当になったとき、借主は減額を請求できます。
最高裁は、この規定がサブリース契約にも適用されると判断しています。契約書に賃料の額や「保証」の文言があっても、この規定を排除することはできないと解されています。
つまり、「30年間、この賃料を保証します」という説明があっても、その額が続くとは限りません。
実際に起きること
- 数年ごとの見直しで、賃料が引き下げられる
- 周辺の相場が下がったことを理由に減額を求められる
- 応じなければ、業者から契約の解約を申し入れられる
借入の返済計画を、当初の保証賃料で組んでいると、そこで成り立たなくなります。
2020年の法律 ── サブリース新法
こうした問題を受けて、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が制定されました。サブリースに関する部分は2020年12月に施行されています。
| 規制 | 内容 |
|---|---|
| 誇大広告等の禁止 | 賃料の額や支払期間について、著しく事実と異なる表示や、著しく優良・有利と誤認させる表示を禁止 |
| 不当な勧誘等の禁止 | 判断に影響する重要な事項を、故意に告げない・不実を告げることを禁止 |
| 契約締結前の重要事項説明 | 契約の締結前に、書面を交付して説明する義務 |
| 契約締結時の書面交付 | 契約の内容を記載した書面を交付する義務 |
賃料の減額がありうることや、契約期間中に契約が解除される場合があることは、この重要事項説明で説明すべき事項に含まれます。
説明を受けたら、書面の記載を必ず自分で読んでください。口頭の説明と書面の内容が違う場合、書面が優先します。
また、賃貸住宅管理業を営む一定規模以上の事業者には登録制度があります。国土交通省の登録業者一覧で確認できます。
説明を受けた記録を残す
いつ、誰から、どういう説明を受けたか。書面の交付日を含めて記録してください。
後で食い違いが生じたとき、この記録が唯一の材料になります。
免責期間
契約の開始から一定期間、サブリース業者がオーナーに賃料を支払わない取り決めが置かれることがあります。入居者の募集期間として設定されるものです。
この期間は収入がゼロですが、借入の返済は始まります。期間の長さは契約によって異なります。
また、入居者が入れ替わるたびに同様の期間が設けられる契約もあります。契約書の該当条項を必ず確認してください。
解約が難しい
サブリース契約は賃貸借契約です。したがって、借地借家法の規定が働きます。
| オーナー側から | サブリース業者側から | |
|---|---|---|
| 解約・更新拒絶 | 正当の事由が必要 | 契約の定めによる |
| 通知の時期 | 期間満了の一定期間前まで | 契約の定めによる |
| 立退料 | 求められることがある | ― |
オーナーが「自分で管理したい」「別の会社に変えたい」と思っても、それだけでは正当の事由になりません。
正当の事由は、建物を使用する必要性、これまでの経緯、建物の状況、立退料の提供などを総合して判断されます。
一方、業者側からの解約については、契約書の定めによります。業者は解約できるがオーナーはできない、という形になっていないかを確認してください。
売却するときにも影響する
サブリース契約が付いたまま売却する場合、買主はその契約を引き継ぐことになります。
買主が自分で管理したい、条件が合わないという場合、買い手の範囲が狭くなります。売却価格にも影響しえます。
契約前に確認すること
賃料について
- 賃料の見直しの時期と方法 何年ごとに、どういう基準で
- 減額される場合の条件
- 免責期間 開始時、入居者の入替時
- 入居者から受け取る賃料と、オーナーに支払われる賃料の差
費用の負担
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 修繕費 | どこまでがオーナーの負担か |
| 原状回復 | 入居者の退去時、誰が負担するか |
| 設備の交換 | 給湯器、エアコンなど |
| 工事の発注先 | 業者の指定になっていないか。相見積りが取れるか |
| 大規模修繕 | 時期と負担の割合 |
修繕を業者の指定業者でしか行えない契約では、費用を比較できません。この条項の有無を確認してください。
契約の終わり方
- 契約期間と、更新の条件
- オーナー側から解約できる場合の条件
- 業者側から解約できる場合の条件
- 違約金の有無と金額
- 解約後、入居者との関係がどうなるか
業者について
- 賃貸住宅管理業の登録の有無
- 財務の状況 業者が倒産すれば、賃料は入りません
- 入居者から預かった敷金の扱い
収支をどう見るか
サブリースを前提とした収支計画は、次の想定でも作ってください。
| 想定 | 確かめること |
|---|---|
| 賃料が減額された場合 | 1割減、2割減で返済が成り立つか |
| 契約が終了した場合 | 自分で管理する、または別の会社に委託する場合の収支 |
| 免責期間 | その間の返済をどう賄うか |
| 修繕費 | オーナー負担分を織り込む |
保証賃料が続く前提だけで組んだ計画は、計画とは言えません。
共有の物件の場合
複数人で所有している物件では、民法の共有に関する規定が関わります。
| 要件 | |
|---|---|
| 管理に関する事項 | 持分の価格の過半数で決める |
| 共有物の変更 | 共有者全員の同意 |
賃貸借契約の締結や賃料の変更が、どちらに当たるかは契約の期間や内容によって判断されます。
「金額の大小で分かれる」というものではありません。共有物件で契約を検討する場合は、弁護士や司法書士に確認してください。
相談先
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 契約書の内容 | 弁護士 |
| 業者の登録状況 | 国土交通省の登録業者一覧 |
| 説明に問題があると感じたとき | 国土交通省の相談窓口、消費者ホットライン |
| 賃料の相場 | 地元の宅地建物取引業者、管理会社 |
| 税務の扱い | 税理士 |
サブリース契約は長期にわたり、途中でやめにくい契約です。
署名する前に、弁護士に見てもらってください。費用はかかりますが、後で争うことになった場合の負担とは比較になりません。
「今日決めていただければ」と急がされる場合、その理由を確認してください。検討する時間を与えない契約に、急ぐ必要はありません。
向く場合と、向かない場合
| 考えられること | |
|---|---|
| 遠方に物件がある | 管理の手間が減る点は実際の利点 |
| 本業が忙しい | 同上 |
| 返済が賃料に依存している | 減額されたときに耐えられない |
| 近い将来に売却を考えている | 契約が付いたままだと買い手が限られる |
| 自分で判断したい | 入居者の選定や賃料の設定に関与できない |
管理を任せるだけなら、通常の管理委託という選択肢もあります。サブリースと管理委託は別のものです。何を求めているのかを整理してから選んでください。
- 賃料が減額されうることを理解した「保証」でも借地借家法の規定が働く
- 契約締結前の重要事項説明を受け、書面を読んだ
- 説明の記録を残した日時・担当者・書面の交付日
- 賃料の見直しの時期と方法を確認した
- 免責期間を確認した開始時・入居者の入替時
- 入居者からの賃料と、支払われる賃料の差を確認した
- 修繕費の負担区分を確認した
- 工事の発注先が業者の指定になっていないか確認した
- オーナー側から解約できる条件を確認した
- 業者側から解約できる条件を確認した
- 違約金の有無と金額を確認した
- 賃貸住宅管理業の登録を確認した
- 業者の財務状況を確認した
- 賃料が減額された場合で収支を再計算した
- 契約が終了した場合の収支も計算した
- 署名前に弁護士に確認した
- 急がされている場合、その理由を確認した
まとめ
- 賃料は減額されうる。契約書に「保証」とあっても、借地借家法の規定は排除できない。
- 2020年のサブリース新法で、誇大広告と不当な勧誘が禁止され、重要事項説明が義務づけられた。
- 免責期間の間は賃料が入らない。返済は始まっている。
- オーナー側からの解約には正当の事由が必要。やめたいときにやめられるとは限らない。
- 長期にわたり途中でやめにくい契約。署名する前に弁護士に見てもらう。
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