都市計画とまちづくり ── 誰が決め、誰が動かすか
- 「行政が決める/住民が動く」の対比では実務にならない。民の側から都市計画を動かす制度が用意されている
- 都市計画提案制度なら、土地所有者等が都市計画の決定・変更を提案できる
- 建築協定には承継効がある。後から所有者になった者にも効力が及ぶ
- 立地適正化計画の誘導区域外では、一定の開発・建築に届出義務が生じる
「都市計画は行政が決めるもの、まちづくりは住民がやるもの」。この整理は、間違ってはいませんが、実務では使えません。
実際には、民の側から都市計画そのものを動かす仕組みが、法律に用意されています。提案し、申し出て、協定を結ぶ。そして結ばれた協定には、法的な効力が生じます。
この記事では、開発やまちづくりに関わる実務者が使える制度を扱います。第1回で扱った都市計画法の枠組みを、今度は動かす側から見ていきます。
対比だけでは実務にならない
よく示される整理は、こうなっています。
| 都市計画 | まちづくり | |
|---|---|---|
| 主体 | 行政 | 住民・企業 |
| 進め方 | トップダウン | ボトムアップ |
| 拘束力 | ある | ない |
建築協定、景観協定、緑地協定。これらは住民や土地所有者が結ぶものですが、認可を受ければ法的な効力を持ちます。
とくに建築協定には承継効があります。協定の認可が公告された後にその区域の土地所有者等となった者にも、効力が及びます。物件を扱う際、協定の有無を確認しないと、買主に思わぬ制限を負わせることになります。
民の側から動かす五つの仕組み
一 都市計画提案制度
土地所有者等が、都道府県や市町村に対して、都市計画の決定または変更を提案できる制度です(都市計画法21条の2)。2002年に創設されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提案できる者 | 土地の所有者・借地権者/まちづくりの推進を目的とするNPO法人等/都市再生機構・地方住宅供給公社/条例で定める団体 など |
| 面積要件 | 0.5ヘクタール以上(条例で0.1ヘクタールまで引下げ可能) |
| 同意要件 | 区域内の土地所有者等の3分の2以上の同意。かつその所有地の地積の合計も3分の2以上 |
提案を受けた行政は、都市計画の決定・変更をする必要があるかどうかを判断します。必ず採用されるわけではありませんが、判断しなければならない義務が生じます。採用しない場合は、都市計画審議会に提案を提出し、意見を聴くことになります。
大規模な開発を計画する場合、用途地域の変更や地区計画の決定を待つのではなく、提案するという選択肢があります。
二 地区計画の申出
市町村の条例で定めるところにより、土地所有者等が地区計画の案の内容となるべき事項を申し出ることができます(都市計画法16条3項)。
提案制度より面積要件が緩やかな場合が多く、小規模な区域で細かいルールを定めたいときに使えます。条例の有無と要件は市町村ごとに違うため、都市計画課で確認してください。
三 建築協定
土地所有者等が、建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠、建築設備に関する基準を、全員の合意により定めるものです(建築基準法69条以下)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 前提 | 市町村の条例で、建築協定を締結できる旨が定められている区域であること |
| 合意 | 土地所有者等の全員の合意 |
| 認可 | 特定行政庁の認可を受ける |
| 効力 | 認可の公告後にその区域内の土地所有者等となった者にも及ぶ(承継効) |
分譲地を開発する事業者が、まだ土地が自分一人の所有である段階で協定を定めておくことができます(建築基準法76条の3)。
認可の日から3年以内に、その区域内の土地に二人以上の所有者等が存在するに至ったときから、通常の建築協定としての効力が生じます。分譲後の街並みを維持したい場合に、開発者が使える仕組みです。
四 景観協定・緑地協定
景観協定は、景観計画区域内で、良好な景観の形成に関する事項を定めるものです(景観法81条)。緑地協定は、緑地の保全や緑化に関する事項を定めます(都市緑地法45条)。
いずれも土地所有者等の全員の合意と、行政の認可を要し、認可の公告後に所有者等となった者にも効力が及びます。
五 まちづくり条例
自治体が独自に定める条例です。内容は多岐にわたります。
- 一定規模以上の開発について、事前協議や近隣説明を義務づける
- まちづくり協議会の認定と、その協議会が定めるルールへの配慮を求める
- 建築物の高さ、デザイン、色彩の基準
- ワンルームマンションの規制、附置義務
法律には書かれていないため、条例を見ないと分かりません。都市計画法と建築基準法だけを調べて回答すると、条例上の手続きを見落とします。
エリアマネジメントと都市再生推進法人
区域を面的に維持・管理し、価値を高めていく取り組みをエリアマネジメントと呼びます。制度としては、都市再生推進法人の指定があります(都市再生特別措置法118条)。
まちづくりの推進を図る活動を行うことを目的とする法人が市町村長から指定を受けると、都市計画の決定等の提案ができるほか、市町村との協定に基づく業務を担うことができます。
立地適正化計画は、実務に直接効く
人口減少下で都市機能を集約するための計画です(都市再生特別措置法81条以下)。この計画は、開発や建築の実務に直接の影響を及ぼします。
| 区域 | 内容 |
|---|---|
| 居住誘導区域 | 人口密度を維持し、生活サービスやコミュニティを持続的に確保する区域 |
| 都市機能誘導区域 | 医療・福祉・商業等の都市機能を誘導・集約する区域 |
居住誘導区域外で、一定規模以上の住宅の開発行為や建築等行為を行う場合、市町村長への届出が必要です(88条)。
都市機能誘導区域外で誘導施設を建築等する場合も、届出が必要です(108条)。
届出を受けた市町村長は、必要があると認めるときは勧告をすることができます。勧告に法的な強制力はありませんが、従わない場合に公表される仕組みを設けている自治体もあります。調査の段階で、立地適正化計画の有無と、対象地がどの区域に入るかを必ず確認してください。
実務での関わり方
調査するとき
都市計画法と建築基準法の確認に加えて、次を見ます。
- 建築協定・景観協定・緑地協定 特定行政庁または市町村で確認できます。承継効があるため、買主に説明すべき事項です
- まちづくり条例 事前協議、近隣説明、届出の義務がないか
- 立地適正化計画 誘導区域の内か外か。外なら届出が必要になる可能性
- 地区計画 定められていれば届出が必要
開発を計画するとき
用途地域の制限で計画が成り立たない場合、諦める以外の道があります。
- 都市計画提案制度による用途地域の変更・地区計画の決定の提案
- 地区計画の申出
- 特別用途地区、地区計画による用途制限の緩和
いずれも時間がかかり、確実に通るものでもありません。ただし「制度上、道はある」ことを知っているかどうかで、提案の幅が変わります。
合意形成に関わるとき
提案制度も協定も、同意を集めることが最大の作業です。提案制度なら3分の2以上、建築協定なら全員。
説明会を開き、資料を用意し、個別に回る。この過程で、反対の理由を聞き取り、計画に反映できるかを検討することが、結果的に最も早い道になります。押し切ろうとすると、かえって長引きます。
- 建築協定の有無を確認した承継効があり、買主に説明すべき事項
- 景観協定・緑地協定の有無を確認した
- 協定がある場合、その内容と有効期間を確認した
- まちづくり条例の有無と内容を確認した法律だけ見ても分からない
- (条例)事前協議・近隣説明・届出の義務がないか確認した
- 立地適正化計画の有無を確認した
- (計画あり)対象地が居住誘導区域・都市機能誘導区域の内か外か確認した
- (誘導区域外)届出が必要な規模・用途に当たるか確認した
- 地区計画の有無と、届出の要否を確認した
- まちづくり協議会等の任意のルールがないか確認した
- (計画側)用途地域の制限で成り立たない場合、提案制度・申出の可能性を検討した
- (提案)面積要件と同意要件を満たせるか確認した0.5ha以上、所有者等の3分の2以上
- 合意形成の期間を、事業計画に織り込んだ
まとめ
- 「行政が決める/住民が動く」の対比では実務にならない。民の側から動かす制度がある。
- 都市計画提案制度では、土地所有者等の3分の2以上の同意で、都市計画の決定・変更を提案できる。
- 建築協定・景観協定・緑地協定には承継効がある。後から所有者になった者にも効力が及ぶ。
- まちづくり条例は法律には書かれていない。条例を見ないと手続きを見落とす。
- 立地適正化計画の誘導区域外では、一定の開発・建築に届出義務が生じる。
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