投資運用業と投資助言・代理業 ── 区分と要件

この記事の要点
  • 運用を担うなら投資運用業、助言にとどまるなら投資助言・代理業
  • 投資運用業は株式会社であることが前提。機関設計にも要件がある
  • 運用者は忠実義務と善管注意義務を負う。自己取引などは禁止される
  • 私募ファンドでは目論見書は用いない。契約締結前の情報提供が該当する

ファンドの資金を運用する行為には、投資運用業の登録が必要です。第二種金融商品取引業とは別の登録です。

一方、資金を預からず助言だけを行うなら、投資助言・代理業となります。要件も義務も、投資運用業とは大きく異なります。

この記事では、二つの業務区分、登録の要件、そして運用者が負う義務を整理します。

業務区分の整理

業務 何をするか 資金を預かるか
第二種金融商品取引業 ファンド持分の募集・私募、信託受益権の売買・媒介
投資運用業 他人の財産の運用 預かる
投資助言・代理業 投資判断への助言、契約の代理・媒介 預からない

資金を預かって運用判断を行うかどうかが、最大の分かれ目です。助言にとどまるなら、要件は大きく軽くなります。

投資運用業

三つの類型

類型 内容
投資一任 投資一任契約に基づき、顧客の財産を運用する
投資信託の運用 投資信託財産の運用の指図を行う
自己運用 集団投資スキーム持分の出資者から集めた財産を運用する

不動産ファンドで問題になるのは、多くの場合三番目の自己運用です。匿名組合の営業者として出資を受け、その財産を運用する行為が該当します。

登録の要件

項目 内容
法人格 株式会社であること
機関設計 監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社のいずれか
資本金 5,000万円以上
純財産額 5,000万円以上
人的構成 運用の経験を有する者、法令遵守を担当する者の配置
業務方法書 作成し、提出する
協会加入等 金融商品取引業協会への加入、または同等の社内規則の整備
機関設計の要件が、実務上の関門になる

「取締役会があればよい」ではありません。監査役会の設置など、一定の機関設計が求められます。

取締役会設置会社であっても、機関設計が要件を満たしていなければ、定款の変更と登記が必要になります。役員の追加も要します。

準備には相応の時間がかかります。登録を検討するなら、まず現在の機関設計を確認してください。

人的構成が実質的な審査対象になる

  • 運用に関する実務経験を有する者が在籍しているか
  • 法令遵守を担当する者が、営業部門から独立しているか
  • 内部監査の体制があるか
  • 常勤の役職員が確保されているか

資本金の要件を満たしていても、体制が整っていなければ登録されません。財務局への事前相談を経るのが実務です。

投資助言・代理業

二つの業務

内容
投資助言業務 投資顧問契約に基づき、投資判断について助言する
代理・媒介業務 投資顧問契約または投資一任契約の締結を、代理・媒介する

登録の要件

項目 内容
法人格 法人・個人いずれも可
資本金 要件なし
営業保証金 供託が必要
人的構成 助言に必要な知識・経験を有する者

投資運用業に比べて、参入の要件は大幅に軽くなっています。顧客の財産を預からないためです。

助言のつもりが、運用になっていないか

助言を超えて投資判断そのものを行い、実行まで担っている場合、実質的に投資運用業に当たると判断されることがあります。

顧客が自ら判断しているのか、事実上こちらが決めているのか。この区別が実務上の分かれ目です。

助言業として登録しながら実質的に運用を行えば、無登録営業となります。契約の内容と実際の運営を、一致させてください。

業務方法書

登録申請にあたって作成する書類で、どのように業務を行うかを具体的に記載します。

  • 取り扱う運用財産の種類
  • 投資判断の方法と、意思決定の手続き
  • 取引の執行の方法
  • 顧客資産の分別管理の方法
  • 利益相反を防ぐための措置
  • 顧客からの苦情への対応

記載した内容に従って業務を行う義務が生じます。実態と合わない内容を書くと、後に問題になります。

運用者が負う義務

義務 内容
忠実義務 権利者のため忠実に運用を行う
善管注意義務 善良な管理者の注意をもって運用を行う
分別管理 運用財産を、自己の財産と分別して管理する
運用報告書の交付 定期的に、権利者へ交付する
忠実義務が最も重い

運用者は、自分の利益ではなく、出資者の利益のために判断する義務を負います。

これが実際に問われるのは、次のような場面です。

  • 関係会社から物件を取得する(価格は妥当か
  • 関係会社に管理業務を委託する(報酬は妥当か)
  • 複数のファンドを運用し、どちらに物件を割り当てるか判断する
  • 売却の時期を、自己の報酬体系に有利になるよう選ぶ

利益相反が生じうる場面を洗い出し、あらかじめ手続きを定めておくことが実務です。外部の評価を取る、投資家の承諾を得る、といった手当てになります。

禁止される行為

行為 内容
自己取引 運用財産と自己の財産との間で取引を行うこと
運用財産相互間取引 自ら運用する複数の財産の間で取引を行うこと
通常の取引条件と異なる条件での取引 権利者の利益を害することとなる条件
損失補塡 損失の全部または一部を補塡する約束・実行
断定的判断の提供 「必ず利益が出る」といった説明
虚偽告知 重要な事項について虚偽を告げること

一部の行為は、権利者の同意など一定の要件を満たせば認められる場合があります。個別の判断は、弁護士に確認してください。

私募ファンドでは、目論見書は用いない

開示制度の適用範囲を混同しない

目論見書は、有価証券届出書を提出して募集または売出しを行う場合に交付されるものです。

私募のファンドでは、この開示制度は適用されず、目論見書も作成されません。

代わりに用いられるのが、契約締結前の情報提供です。取引の概要、手数料、リスク、契約の解除に関する事項などを、あらかじめ説明します。

「不動産ファンドには目論見書が必要」という説明は、私募については当てはまりません。どの制度が適用される取引なのかを、先に確認してください。

不動産ファンドでの実務

誰が何を担うか

役割 必要な登録等
出資を募る 第二種金融商品取引業(または特例業務の届出)
運用判断を行う 投資運用業(または特例業務の届出)
物件の日常管理 登録の対象外(宅建業の免許等が関わる場合はある)
投資について助言する 投資助言・代理業

一つの会社がすべてを担うとは限りません。役割ごとに、必要な資格を確認してください。

アセットマネージャーの位置づけ

物件の取得、運営方針、売却の判断を担う場合、その行為が投資運用業に当たらないかを検討する必要があります。

助言にとどまる形にするのか、投資運用業の登録を取得するのか、特例業務の届出で足りるのか。スキームの設計段階で決めておくべき事項です。

運用の対象が不動産であること

金融商品取引法の規制は、運用の手続きと勧誘の適正さを対象としています。運用対象そのものの品質は、別に確かめる必要があります。

確認するもの 運用への影響
境界の確定状況 売却時に確定測量が必要。出口の時期が動く
越境の有無 是正または覚書。相手方の対応に左右される
接道と再建築の可否 買い手の範囲、担保評価
検査済証の有無 適法性の確認、融資への影響
賃貸借契約の内容 解約条項、敷金の承継、原状回復の負担
修繕の必要性 運用期間中の支出、分配への影響
善管注意義務は、調査の程度にも及ぶ

運用者は、善良な管理者の注意をもって運用する義務を負います。

取得にあたって必要な調査を尽くさなかった場合、この義務に照らして責任を問われる余地があります。

境界が未確定であること、越境があること、修繕が必要であること。調査で判明した事項は記録に残し、出資者に説明してください。

「知らなかった」より「知っていて対応した」ほうが、説明が成り立ちます。

登録後の対応

  • 事業報告書の提出 毎事業年度
  • 説明書類の縦覧 営業所に備え置く
  • 変更の届出 商号、役員、業務の内容など
  • 運用報告書の交付 権利者へ定期的に
  • 報告徴求・立入検査への対応

登録は取得して終わりではありません。継続して要件を満たし、報告を行う体制が必要です。

実務チェックリスト
  • 行う業務を特定した募集・運用・助言
  • 資金を預かるかどうかを確認した
  • (投資運用業)株式会社であることを確認した
  • (投資運用業)機関設計の要件を確認した監査役会設置会社等
  • (投資運用業)資本金・純財産額の要件を確認した
  • (投資助言)営業保証金の供託を確認した
  • 助言と運用の区別が、契約と実態で一致しているか確認した
  • 人的構成を整えた経験者・法令遵守担当・内部監査
  • 業務方法書を、実態に合わせて作成した
  • 財務局に事前相談を行った
  • 利益相反が生じうる場面を洗い出した
  • 関係会社との取引について、手続きを定めた
  • 分別管理の体制を整えた
  • 禁止行為に該当しないか確認した自己取引・相互間取引・損失補塡
  • 私募か公募かを確認した目論見書の要否
  • 契約締結前の情報提供の内容を整えた
  • 運用対象の調査結果を記録に残した
  • 事業報告書・運用報告書の体制を整えた

まとめ

  • 資金を預かって運用するなら投資運用業、助言にとどまるなら投資助言・代理業。
  • 投資運用業は株式会社であることが前提で、機関設計にも要件がある。
  • 運用者は忠実義務と善管注意義務を負う。関係会社との取引は特に問われる。
  • 私募ファンドに目論見書は用いない。契約締結前の情報提供が該当する。
  • 善管注意義務は調査の程度にも及ぶ。判明した事項は記録し、説明する。
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