重要土地等調査法 ── 届出が要るのは、どんなときか

この記事の要点
  • 区域は二種類。届出義務があるのは特別注視区域だけ
  • 特別注視区域では、一定面積以上の売買等に事前届出が要る
  • 届出は売主・買主の双方が行う
  • 区域指定は内閣府が公表。登記には現れない

自衛隊の基地や原子力発電所の近くで土地を売買するとき、事前の届出が必要になることがあります。

令和3年に成立し、令和4年から全面施行された法律です。対象になると、契約の前に手続きが要ります。

この記事では、いつ届出が必要になり、実務でどう備えるかを整理します。

何を規制する法律か

正式名称は長い

重要施設周辺及び国境離島等における土地等の調査及び利用の規制等に関する法律。

通称は「重要土地等調査法」です。

内容
守るもの 重要施設の機能と、国境離島等の機能
する
こと
周辺の土地の利用状況を調査する
制限 機能を阻害する行為に、勧告・命令
届出 一定の区域で、一定規模以上の取引に事前届出

土地の所有そのものを禁じる法律ではありません。

利用のしかたを見て、支障があれば止めるという仕組みです。

対象となる施設

  • 防衛関係施設 自衛隊・在日米軍の施設
  • 海上保安庁の施設
  • 生活関連施設 原子力発電所、自衛隊等が使用する空港
  • 国境離島等

これらのおおむね1,000メートルの範囲が、区域指定の対象になります。

二つの区域

届出義務があるのは、片方だけ
注視区域 特別注視区域
調査 行われる 行われる
勧告・命令 ありうる ありうる
取引の事前届出 不要 必要

この違いが、実務でいちばん効きます。

特別注視区域は、とくに重要度の高い施設の周辺に指定されます。

「注視区域だから届出が要る」と誤解しないでください。届出が要るのは特別注視区域だけです。

指定はどこで確認するか

  • 内閣府が区域を公表している
  • 官報にも告示される
  • 登記記録には現れない
  • 市町村の窓口で確認できる場合がある
  • 指定は追加されていく

指定の範囲は広がっています。

以前調べたときに対象でなくても、いまは指定されているかもしれません。取引のたびに確認してください。

届出が必要になる場合

三つの条件が揃ったとき
条件
場所 特別注視区域内
規模 土地または建物の面積が一定以上
行為 売買など、所有権等の移転をする契約

面積の基準は200平方メートルです。

土地ならその土地の面積、建物ならその建物の床面積で判断します。

住宅地では、ごく普通の敷地でも基準を超えます。「大規模な取引だけ」と考えないでください。

誰が届け出るか

売主と買主の双方

契約の当事者の双方が届け出ます。

  • あらかじめ契約の締結前に行う
  • 内閣総理大臣(実務は内閣府)へ
  • 氏名・住所、土地等の所在と面積、利用の目的などを記載
  • 届出をせずに契約すると、罰則の対象になりうる

「後から出せばよい」ではありません。事前届出です。

契約の日程を組む段階で、この期間を織り込んでください。

具体的な様式・提出先・期間は、内閣府の案内で最新のものを確認してください。

機能を阻害する行為

調査の結果、施設の機能を阻害する行為が行われている、または行われるおそれがあると認められれば、勧告・命令の対象になります。

想定される例
施設の機能を妨げる工作物 電波を遮る構造物など
施設を見通せる位置での行為 運用を妨げるもの
流入する水路の遮断 施設の運用に必要な条件を損なう

通常の住宅や店舗の建築が、これに当たることは想定されていません。

「区域内では家が建てられない」という誤解が生じやすいので、正確に伝えてください。

実務でどう備えるか

すること
その土地が区域内か確認する
注視区域か特別注視区域かを見分ける
面積が基準を超えるか確認する
届出が要るなら、当事者双方に説明する
契約日程に届出の期間を織り込む
届出の写しを記録に残す
重要事項説明での扱い

法令に基づく制限として、説明の対象になります。

伝えるべきこと。

  • どちらの区域に指定されているか
  • 届出の要否
  • 届出をしないと罰則がありうること
  • 調査の対象となり、利用状況が把握されうること
  • 通常の建築が制限されるわけではないこと

不安を過剰に与えないでください。

買主が「軍事施設の近くだから何もできない」と受け取らないよう、制限の範囲を正確に伝えます。

誤解しやすい点

よくある誤解 実際
外国人だけが対象 国籍を問わない
注視区域でも届出が要る 特別注視区域のみ
区域内では建てられない 通常の建築は制限されない
大規模な取引だけ 200平方メートルから
買主だけが届け出る 売主も届け出る
契約後でよい 事前届出

一つ目は、報道の印象から生じやすい誤解です。

この法律は、取引の当事者の国籍で区別していません。日本人同士の取引でも、条件を満たせば届出が要ります。

説明の仕方

避けるべき言い方 適切な言い方
「基地の近くなので規制があります」 「特別注視区域なので、契約前に届出が必要です」
「外国の方は買えません」 「国籍を問わず、届出が必要です」
「建築が制限されます」 「通常の建築は制限されません。届出の対象になります」
「区域は変わりません」 「指定は追加されています。最新の公表で確認します」
重要土地等調査法に関する確認
  • その土地が区域内か、最新の公表で確認した
  • 注視区域か特別注視区域かを確認した
  • 面積が200平方メートルを超えるか確認した
  • (建物)床面積で判断した
  • 届出が要るなら、売主・買主の双方に説明した
  • 契約日程に届出の期間を織り込んだ
  • (重要事項説明)区域の種類と届出の要否を伝えた
  • 通常の建築は制限されないことを伝えた
  • 国籍で区別する制度ではないことを伝えた
  • 届出の写しを記録に残した
  • 様式と提出先を、内閣府の案内で確認した

まとめ

  • 届出が必要なのは特別注視区域だけ。注視区域では不要。
  • 面積は200平方メートルから。住宅地の普通の敷地でも超える。
  • 売主・買主の双方が、契約の前に届け出る。
  • 国籍で区別する制度ではない。日本人同士でも対象になる。
  • 通常の建築が制限されるわけではない。過剰な不安を与えない。
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